・東京高判平成14年6月26日  パチスロ風説告知事件:控訴審  原審判決取消。  本件は、控訴人会社の代表者である控訴人Aが、遊技機業界関連のマスコミ関係者に 対する記者会見(本件記者会見)を行った際、被控訴人の業務に関して、「異常な会社」、 「詐欺的行為」である等の発言(A発言)をした行為及びその内容を業界誌の記事(本 件記事)に掲載させた行為が、控訴人らによる不正競争防止法2条1項13号所定の不 正競争行為又は名誉毀損の不法行為に当たるとして、被控訴人が、控訴人らに対し、陳 述等の差止め、謝罪広告の掲載及び損害賠償の支払を求めた事案である。なお、本件記 者会見が持たれたのは、パチスロ機の製造業界において行われてきた「パテントプール 方式」、すなわち、各製造業者等が保有する特許権等につき、被控訴人に対して集中的 に再実施許諾権付き実施許諾をし、被控訴人において、一定の範囲の製造業者に対しそ の再実施許諾をして、その再実施料を特許権者等に還元するという特許権等の実施方法 に関し、特許権等の保有者として、またパチスロ機製造業者としてこのパテントプール 方式に参画してきた控訴人会社が、従来のパテントプール方式の解消及び再実施許諾権 付き実施許諾契約の終了を主張するようになり、これを前提に、再実施許諾先とされる 業者に対して特許権侵害訴訟(別件対サミー訴訟)を提起したことから、当該訴訟を提 起するに至った控訴人会社側の言い分等を説明するものとして行われたものである。  当審においては、控訴人らが、不正競争行為の成立を認めて控訴人らに対する損害賠 償請求の一部を認容した第一審判決の取り消しを求めて控訴をし、被控訴人が、第一審 判決において訴えの却下がされた差止請求に係る請求の趣旨を変更するとともに、名誉 毀損による不法行為を理由とする請求を追加した上、第一審判決の棄却した謝罪広告掲 載請求及び損害賠償請求(第1審判決認容額である200万円を超える部分)と併せて、 附帯控訴をしたものである。  判決は、「A発言@〜C及び本件記事が「虚偽の事実」を陳述ないし掲載するものと はいえない以上、A発言及び本件掲載行為が不正競争防止法2条1項13号所定の不正 競争行為に当たることを理由とする被控訴人の請求は、その余の点について判断するま でもなく、理由がない」としたうえで、名誉毀損の成立も否定し、被控訴人の損害賠償 請求を認容した原審判決を取り消して、被控訴人の請求をすべて棄却した。 (第一審:東京地判平成13年8月28日)