・東京高判平成15年12月10日  円谷プロ事件:差戻後控訴審  本訴請求事件は、1審原告(控訴人・被控訴人・反訴被告:株式会社円谷プロダクショ ン)が1審被告(被控訴人・控訴人・反訴原告)に対し、1審原告は本件著作物の著作権 者であり、1審被告に対して著作権の譲渡又は利用許諾をしていない旨主張して、@1審 被告が代表者を務める会社が、本件著作物の著作権を有し又は利用許諾を受けているとし て後記警告書を日本国内の会社に送付したことにより1審原告の業務が妨害されたことを 理由として、不法行為又は不正競争防止法2条1項14号、4条に基づく損害金1000 万円及びこれに対する不法行為の後である平成10年4月25日から支払済みまで民法所 定の年5分の割合による遅延損害金の支払、A1審被告が日本において本件著作物につい ての著作権を有しないことの確認、B1審被告が日本以外の国において本件著作物につい ての著作権及び利用権を有しないことの確認、並びにC不正競争防止法2条1項14号、 3条に基づき、1審被告が、日本国内において、第三者に対し、「本件著作物につき1審 被告が日本国外における著作権者又は独占的利用権者である旨を告げること」及び「本件 著作物の著作権に関して日本国外において1審原告と取引をすることは1審被告の著作権 又は独占的利用権を侵害することになる旨を告げること」の各差止めを求めた事案である。  原判決は、@1審被告が日本において本件著作物についての著作権を有しないことの確 認、A1審被告が日本以外の国において本件著作物についての著作権を有しないことの確認、 並びにB1審被告が、日本国内において、第三者に対し、「本件著作物につき1審被告が 日本国外における著作権者である旨を告げること」及び「本件著作物に関して日本国外に おいて1審原告と取引をすることは1審被告の著作権を侵害することになる旨を告げるこ と」の各差止めの限度で、1審原告の本訴請求を認容し、その余の請求をいずれも棄却し たのに対し、1審原告及び1審被告が、それぞれその変更を求めて本件控訴を提起した (なお、1審原告は、当審において、1審被告が日本において本件著作物についての著作 権を有しないことの確認を求める部分につき訴えを取り下げた。)。  当審において提訴された反訴請求事件は、1審被告が1審原告に対し、本件著作物の著 作権の譲渡又は独占的利用許諾を受けた旨主張して、同著作権又は独占的利用権を有する ことの確認を求めたものである。  判決は、1審原告及び1審被告の各控訴をいずれも棄却し、また1審被告の主位的反訴 請求を棄却する一方、1審被告の予備的反訴請求を認容して、「1審被告が日本以外の国 において別紙第二目録記載の各著作物についての独占的利用権を有することを確認する」 との判決を下した。 (差戻後第一審:東京地判平成15年2月28日、差戻後上告審:最判平成16年4月2 7日) ■判決文  (9) その他、1審原告はるる主張するが、前記認定のとおり、本件契約書に円谷エンタ ープライズの真正な印章が押印されていること、及び1審原告が本件契約書の内容を全面 的に肯定する内容の本件書簡を作成していることは、本件契約の成立を強く推認させる事 実であり、1審原告の主張する細かな点をすべて考慮しても、本件契約の成立についての 結論を左右する事実とはいえない。  (10) 本件契約の内容について、1審被告は、「本件契約の内容は、通常の著作物利用 権許諾契約とは全く異なる特異なものであるから、本件契約は、著作権の譲渡契約である と解釈すべきである。」旨主張する。しかしながら、1審被告が主張する点を十分考慮し ても、なお、本件契約書の標題及び条項中に「ライセンス」の語が一貫して用いられてい ること等の原判決指摘の事実によれば、本件契約は、本件著作物の独占的利用権の許諾を 内容とするものであり、本件著作物の著作権の譲渡を内容とするものではないと解するの が合理的であると判断せざるを得ない。 3 結論  以上によれば、1審原告の1審被告に対する本訴請求は、原判決が認容した限度で理由 があり、その余は理由がないから、原判決は相当であって、1審原告及び1審被告の各本 件控訴は理由がないから、これを棄却することとする。また、当審における新たな請求で ある反訴請求については、主位的請求は理由がないからこれを棄却することとし、予備的 請求は理由があるからこれを認容することとする。よって、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第3民事部 裁判長裁判官 北山 元章    裁判官 清水 節    裁判官 沖中 康人