・東京地判平成16年5月21日  ケーブルテレビ(JASRAC)事件:第一審  原告(社団法人日本音楽著作権協会)は、甲事件被告成田ケーブルテレビ株式会社(被 告成田)及び甲事件被告銚子テレビ放送株式会社(被告銚子)が、原告との間で著作物利 用許諾契約を締結しないまま有線放送に管理著作物を使用していると主張して、両被告に 対して、本件音楽著作物を有線放送に使用することの差止めを請求するとともに、不法行 為に基づく使用料相当の損害金又は不当利得返還を請求(選択的)している。  また、原告は、乙事件被告行田ケーブルテレビ株式会社(被告行田)が、原告との間に 締結された著作物使用許諾契約に定められた使用料の支払いを怠っていると主張して、同 被告に対して著作物使用許諾契約に定められた使用料の支払いを請求している。  原告の請求に対し、被告成田、被告銚子及び被告成田(被告ら)は、@CS放送の同時 再送信は原告と被告らとの間で別途締結された著作物使用許諾契約の対象となっているか ら、原告の請求は二重起訴であり、本件訴えは却下されるべきであるが、仮に二重起訴に 当たらないとしても、差止・損害賠償請求及び使用料請求はいずれも理由がない、A被告 らが有線放送するテレビ番組は映画の著作物であって、原告は独自に請求の根拠となる権 利を有しておらず、原告の請求は理由がない、BCS放送(通信衛星[Communication Sa tellite]を使用する衛星放送)の同時再送信については、原告が独自に使用料等を請求 できる立場にない、C原告による請求を認めると実質的な二重取りを許すことになる、D 原告の請求は著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律及び著作権等管理事業法、あるいは私 的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律に違反する、E原告の請求権は時効消滅し ているなどと主張して、これを争っている。  原告は、平成4年3月31日、被告行田との間で、管理著作物の有線テレビジョン放送 の自主放送及び音声放送(音声自主放送及びラジオ放送の同時再送信をいう)に使用する ことに関し、「原告は、被告行田が、別紙音楽著作物使用許諾申請書……記載の使用条件 の範囲内において、管理著作物を有線放送使用することを許諾する」(第1条第1項)こ とを主たる内容とする使用許諾契約を締結した。被告成田及び被告銚子との間には使用許 諾契約を締結していない。  被告らはそれぞれ、原告、協同組合日本脚本家連盟、協同組合日本シナリオ作家協会、 社団法人日本文芸著作権保護同盟及び社団法人日本芸能実演家団体協議会の5団体との間 で、次の約定を含む許諾契約(5団体契約)を締結した。その中に、5団体のうち社団法 人日本芸能実演家団体協議会を除く4団体は被告らに対し、「使用料……を支払うことを 条件として、甲らがコントロールを及ぼし得る範囲に属する著作物を使用して製作された 放送番組を、ケーブルによって変更を加えないで同時再送信することを許諾する」という 条項がある(第1条第1項)。  判決は、「契約当事者の合理的意思に基づいて5団体契約の趣旨を解釈すれば、CS放 送の同時再送信については、5団体契約の対象とされていると認めるのが相当である」と して、原告の請求を棄却した。 (控訴審:知財高裁平成17年8月30日、上告審:最決平成18年10月10日) ■争 点 (1) CS放送の同時再送信は5団体契約の対象となっているか−原告は、CS放送の同 時再送信について、5団体契約の存在にかかわらず差止め・損害賠償等を請求し、5団体 契約とは別途に使用料の支払を請求をすることができるか  (2) 被告らの有線放送する番組が映画の著作物であることから、原告は著作権の主張 をすることができないか。  (3) 原告は、CS放送の同時再送信について委託放送事業者とは別に被告らからも使 用料の徴収ができるか  (4) 原告の請求は仲介業務法及び独占禁止法に違反するか  (5) 原告の請求権は時効消滅しているか  (6) 原告の損害等 ■判決文 第4 当裁判所の判断 1 被告らの本案前の主張について  被告らは、原告が日脚連等と共に被告らに対して提起している別件訴訟(当庁平成14 年(ワ)第4002号、第4003号、第4006号)との関係で、本件訴訟は二重起訴に 当たると主張する。しかしながら、別件訴訟は、原告を含む5団体が5団体契約に基づく 著作物使用料の支払いを請求している事案であることは当裁判所に顕著であるところ、原 告が被告成田及び被告銚子に対して著作権侵害を理由とする損害賠償・不当利得返還請求 をし、被告行田に対して本件使用許諾契約に基づく著作物使用料請求をしている本件とは、 訴訟物を異にしているものである。したがって、本件訴訟が二重起訴に当たらないことは 明らかである。  上記のとおり、被告らの本案前の主張は理由がない。 2 争点(1)(CS放送の同時再送信は5団体契約の対象となっているか−原告は、CS 放送の同時再送信について、5団体契約の存在にかかわらず差止め・損害賠償等を請求し、 5団体契約とは別途に使用料の支払を請求をすることができるか)について  (1) 前記前提となる事実関係(第3、1)に、証拠(甲1ないし6、12、13、1 5ないし17、19、20、22ないし29、31ないし35、37ないし62、乙23 ないし30、34、35、40、58ないし63。枝番号は省略、以下同じ)及び弁論の 全趣旨を総合すると、以下の事実が認められる。  ア 5団体契約及び本件使用料規程の有線テレビジョン放送に関する規定の制定  (ア) 我が国の有線テレビジョン設備は、昭和30年代に設置され始め、最初は温泉町 などの辺地の難視聴対策用の共同受信施設として設置されていたが、昭和40年ころから は、高層ビルの建設ラッシュにより発生した難視聴に対応して、都市部にも有線テレビジ ョン放送の設備が設置されるようになった。  このような状況を受け、昭和47年2月、5団体にレコ協を加えた6団体は、有線放送 事業者が行う有線放送についても著作権等の権利処理が必要であるとの認識から、有線放 送事業者の事業者団体である連合会との間で協議を開始した。  (イ) 昭和47年6月、有テレ法が成立し(翌年7月1日施行)、同法13条に、有線 放送事業者が行う再送信に関する規定が設けられた。  そして、上記有テレ法の規定を受けて定められた、有線テレビジョン法施行規則(昭和 47年郵政省令第40号。以下「有テレ法施行規則」という。)2条(昭和57年郵政省 令第73号による改正前のもの。以下同じ。)においては、「同時再送信」とは、「放送 事業者のテレビジョン放送を受信し、そのすべての放送番組に変更を加えないで同時にこ れを再送信する有線テレビジョン放送をいう。」(有テレ法施行規則2条1号)、「自主 放送」とは、「同時再送信以外の有線テレビジョン放送をいう。」(同2条3号)との定 義規定が置かれている。  (ウ) 連合会は、昭和47年中に準備委を発足させたため、6団体と準備委の間で有線 テレビジョン放送における著作権等の権利処理の問題に関する協議が続けられていたが、 上記権利者団体6団体のうち、レコ協を除く5団体は、昭和49年3月ころ、準備委との 間で、テレビジョン放送の同時再送信についての権利処理方法及び使用料の定め方につい て合意に達し、5団体と各有線放送事業者との間で締結する統一的な契約書式を定めた。 この契約書式は現在もなおほぼ同じものが使用されており、その第2条に定める使用料の 料率も変更されていない。  (エ) 現在の契約書式には以下の規定が置かれている。  「第1条(使用許諾)  甲ら(5団体のうち社団法人日本芸能実演家団体協議会を除く4団体をいう。)は丙 (被告ら各自をいう。)に対し、第2条に掲げる使用料(消費税を含まない。以下同じ。) を支払うことを条件として、甲らがコントロールを及ぼし得る範囲に属する著作物を使用 して製作された放送番組を、ケーブルによって変更を加えないで同時再送信することを許 諾する。  2 乙(社団法人日本芸能実演家団体協議会をいう。)は、丙が第2条に掲げる補償金 (消費税を含まない。以下同じ。)を支払うことを条件として、乙の会員の実演によって 製作された放送番組を、丙がケーブルによって変更を加えないで同時再送信することに対 し、放送事業者に異議を申し立てないことを約定する。  第2条(使用料、補償金の支払い)  前条の使用料と補償金の合計金額は、丙が当該年度に受領すべき利用料総額に、各々次 の料率を乗じて算出した額とする。  A 区域内再送信は、1波について 0.015%  B 区域外再送信は、1波について 0.09%  2 使用料及び補償金に課される消費税は、別途添付の上、丙から甲ら及び乙に支払う。  第3条(利用料収入の報告)  丙は、当該年度の利用料収入を甲ら及び乙に報告するものとし、当該年度終了後2か月 以内に有線テレビジョン放送法施行規則第36条の規定による業務運営状況報告書の写し により、甲ら及び乙の代表者である日脚連(以下「甲ら及び乙の代表者」という。)に報 告する。  第4条(使用料、補償金の支払い)  丙は、甲ら及び乙に対し、第2条の使用料、補償金を当該年度終了後2か月以内に、甲 ら及び乙の代表者の事務所に持参または送金して支払う。  第5条(契約の解除)  丙が、本契約の規定に違反したときは、甲ら及び乙の代表者は1か月間の通知催告の上、 本契約を解除することができる。  第6条(差し止め請求と損害賠償請求)  丙が、本契約の規定に違反したときは、甲ら及び乙の代表者は、丙に対し当該違反行為 の停止と損害賠償を請求することができる。  (オ) 原告は、仲介業務法に基づき本件使用料規程を定め、一部変更をした場合には、 その度ごとに文化庁長官の認可を受けていたが、昭和50年4月1日、本件使用料規程中 の「第10節有線放送」、「2 有線テレビジョン放送(CATV)」の規定(以下この 部分の規定を「本件使用料規定」という。)について、文化庁長官の認可を受けた。その 後、本件使用料規定の内容は変更されていない(ただし、平成13年10月1日施行の著 作権等管理事業法13条においては、使用料規程は文化庁長官への届出で足りることとさ れたが(同法附則2条により仲介業務法は廃止された。)、この制度変更後の原告の使用 料規程は仲介業務法に基づき定められたものとは異なる。)。  (カ) 本件使用料規定には、以下の規定が置かれている。  「2 有線テレビジョン放送(CATV)  有線テレビジョン放送に著作物を使用する場合の使用料は、当該有線テレビジョン放送 事業者(以下「有線テレビ事業者」という。)の営業収入(受信料収入及び広告料収入 (消費税額を含まないもの)をいう。)の1/100とする。  (有線テレビジョン放送の備考)  @ 有線テレビ事業者が、無線テレビジョン放送を受けて行うテレビジョン放送の再送 信において著作物を使用する場合の使用料は、原告を含む著作権・著作隣接権団体が当該 事業者と協議して定める料率によることができる。  A 有線テレビ事業者が、再送信のほかに有線テレビジョン放送により著作物を使用し て自主放送を行う場合の使用料は、次の算式により算出する。  (営業収入×自主放送時間/全放送時間)×1/100=使用料  B 有線テレビ事業者の営業収入が算出できない場合、当該有線テレビ事業者の受信世 帯数、放送時間その他の使用状況を参酌して使用料額を定めることができる。  C 有線テレビジョン放送法第9条に基づき、他の有線テレビ事業者から施設の提供を 受けて、有線テレビジョン放送により著作物を使用して自主放送を行う場合の使用料は、 施設の提供を行なう有線テレビ事業者が自主放送を行なう場合の使用料に準じて定めるこ とができる。」  イ 覚書及び統一書式の合意  (ア) 上記の5団体と準備委との間で合意された契約書式に基づく5団体契約は、放送 番組の同時再送信を対象とするものであったが、昭和40年代以降、有線テレビジョン放 送事業者は、空いているチャンネルを利用して地元以外のテレビ局の放送を流したり、番 組製作会社の製作した番組を流したり、地域ニュースや地域密着情報を提供するコミュニ ティ番組などを自主製作して流すことが多くなり、有線放送の内容が多様化してきたこと から、上記5団体契約で定められていない有線放送について、著作権等の権利処理のシス テムを作ることが必要となった。  (イ) そこで、原告は、昭和58年に連盟との間で、5団体契約の範囲外の有線放送に おける管理著作物の権利処理の在り方に関する協議を開始した(連盟は、事業者団体とし ての立場で事業者の意見を集約し、各種権利者団体との交渉を行っている。)。そして、 昭和59年7月19日、原告及び連盟は、連盟に所属する各有線放送事業者が原告との間 で締結する本件使用許諾契約の契約書の統一書式について合意するとともに、その内容に 関する覚書を締結した。この統一書式及び覚書は、昭和63年3月31日に改訂されたが、 改訂後の統一書式には以下の規定が置かれている。  「(使用許諾)  第1条 甲(原告)は、乙(連盟加盟の有線テレビジョン放送事業者)が、別紙音楽著 作物使用許諾申請書(省略)記載の使用条件の範囲内において、管理著作物を有線放送使 用することを許諾する。  2 乙は、前項の許諾に基づく管理著作物を使用する権利を他に譲渡することはできな い。  (使用料の算出)  第2条 甲は、本契約期間に該当する年度(年度区分は4月から翌年3月までとする。 以下同じ。)の前年度における乙の営業収入(受信料収入及び広告料収入(消費税額を含 まないもの)をいう。以下同じ。)に基づいて、次の算式により算出して得た金額を本契 約期間に該当する年度の使用料とする。  @ 有線テレビジョン放送の自主放送に管理著作物を使用する場合  本契約期間に該当する年度の前年度における営業収入×自主放送時間/全放送時間×1 /100+消費税相当額=使用料  A 音声放送に管理著作物を使用する場合  本契約期間に該当する年度の前年度における音声放送に係る営業収入×1/100+消 費税相当額=使用料  2 乙において本契約期間に該当する年度の前年度における営業収入がない場合は、甲 は乙と協議のうえ使用料を定めることができる。  (営業収入及び放送時間の報告義務)  第3条 乙は、本契約期間に該当する年度の前年度における1年間の次に掲げる営業収 入及び放送時間を甲所定の報告書に記入し、証憑書類を添付して当該年度終了後3か月以 内に甲に提出するものとする。  @ 有線テレビジョン放送の自主放送及び音声放送に係る営業収入  A 有線テレビジョン放送の自主放送時間及び全放送時間並びに音声放送の放送時間  (営業収入及び使用状況等の調査)  第4条 甲は、乙の本契約期間に該当する年度の前年度における営業収入及び管理著作 物の使用状況等を確認するために、乙の営業時間中に乙の事務所において関係書類を閲覧 し、調査することができる。ただし、日時については、甲は乙に対して1週間前までに通 知する。  (使用曲目の報告義務)  第5条 乙は、各四半期(4月から6月まで、7月から9月まで、10月から12月ま で、翌年1月から3月まで)ごとに乙が有線テレビジョン放送及び音声自主放送において 甲があらかじめ指定する1週間に使用した管理著作物について、甲所定の報告書に記入し て甲の指定する期日までに甲に提出する。  (使用条件の変更)  第6条 乙は、別紙音楽著作物使用許諾申請書記載の使用条件を変更する場合は、その 都度遅滞なく書面をもって甲に通知し、甲の承認を受けるものとする。  (著作者人格権の遵守)  第7条 乙は、管理著作物を使用する場合、著作者に無断で著作物の題名を変更し、又 は著作物に改ざんその他の変更を加えるなどして著作者人格権を侵害してはならない。  (契約の解除)  第8条 甲は、乙がこの契約の全部又は一部を履行しないときは、10日以内の期限を 定めてその履行を請求し、その期限内になお履行されないときは、甲はこの契約を解除す ることができる。  (信義則)  第9条 甲乙双方は、この契約に定める各条項を誠実に履行しなければならない。  2 甲乙双方は、本契約に定めのない事項又は契約条項の解釈に疑義が生じたときは、 誠意をもって協議し、その解決にあたるものとする。  (契約期間)  第10条 本契約の有効期間は、平成4年4月1日から平成5年3月31日までの1年 間とする。  (契約の更新)  第11条 本契約の契約期間満了時に当事者のいずれからも本契約について特に異議を 述べないときは、契約期間満了時の契約内容と同一の条件をもって契約を更新したものと する。  (管轄裁判所)  第12条 (省略)  (契約の変更)  第13条 本契約に関する修正又は変更は、文書によらなければその効力がないものと する。」   (ウ) また、上記の覚書は全10条の規定からなり、以下の規定が置かれている。  「(定義等)  第1条 本覚書及び契約書において使用される用語の意義又は内容は、次に定めるとこ ろによる。   1 自主放送 放送の同時再送信以外のものをいい、例示するとおおむね次のと おりである。  (1) 丙(連盟に所属する有線テレビジョン放送事業者)が製作する報道番組、教育 ・教養番組、娯楽番組、音楽番組、スポーツ番組、広告番組、テストパターン、情報番組 等による放送。  (2) 丙以外の者が製作した録音物又は録音物による番組の放送。   2 音声放送 ラジオ放送の同時再送信及び音声による自主放送をいう。  3、4(略)  5 全放送時間 当該年度のすべてのチャンネルから放送した総延べ時間をいう。ただ し、音楽を全く使用しない放送(文字ニュースなど音のない情報伝達のみの放送など)が ある場合は、そのチャンネル又はその放送の時間は、全放送時間及び自主放送時間から除 くことができる。  有線テレビジョン放送の全放送時間は、次によって算出したものをその時間とすること ができる。  17(テレビ再送信の1日当たりの平均放送時間)×30(1か月の平均日数)×12 (1か年の月数)×テレビ再送信のチャンネル数+自主放送時間  6 (略)  (音声放送の使用料)  第2条 丙が音声放送において管理著作物を使用する場合の使用料は、次の算式により 算出するものとする。  音声放送に係る営業収入(広告代理店手数料が計上されているときは、15/100の 額を控除して得た額)×1/100  ただし、前項によって算出された額が別表(省略)の「音声放送」の区分にそれぞれ定 める額を下回る場合は、その額をもって定額の使用料とする。  音声放送の営業収入がない場合若しくは音声放送の営業収入がテレビジョン放送の営業 収入から区分できない場合も、同様とする。  (音声放送の過去分の使用料)  第3条 (略)  (有線テレビジョン放送の使用料)  第4条 有線テレビジョン放送において管理著作物を使用する場合の使用料は、次の算 式により算出するものとする。  有線テレビジョン放送の営業収入(広告代理店手数料が計上されているときは15/1 00の額を控除して得た額)×自主放送時間/全放送時間×1/100  ただし、前項によって算出された額が別表(略)の「有線テレビジョン放送」の区分に それぞれ定める額を下回る場合は、その額をもって定額の使用料とする。(以下省略)」  (エ) 一方、有線放送とは別に、抜本的な難視聴対策及び多様なメディアの実現等を目 指して、衛星を中継器とする放送の実現が、国や放送事業者等によるプロジェクトとして 進められ、昭和53年に日本初の実験用放送衛星が打ち上げられ、その後昭和59年に実 用化放送衛星であるBS−2aが打ち上げられ、同年NHKが試験放送を開始し、昭和6 2年には24時間の試験放送を行うようになった(本放送の開始は平成元年)。  さらに、BSとは別に平成元年にCSが打ち上げられたことから、CSを用いてテレビ ジョン番組の配信を行う事業者が出現し、平成元年の放送法改正(受託・委託放送制度創 設)及び平成4年の放送法改正を受けて、平成4年にこのような事業者の一部が委託放送 事業者の免許を取得して放送事業者となり、CSを中継器として放送を行うようになった。  (オ) 上記(エ)のとおり、遅くとも契約書式及び覚書の改訂が行われた昭和63年ころ には、既に24時間のBS放送の試験放送が開始されるなど、衛星を中継器とする放送の 実現に向けた取り組みが本格的に行われていたが、統一書式及び覚書では、BS放送その 他の衛星を用いた放送の同時再送信を統一書式の対象とするかどうかは明記されなかった し、その後において統一書式及び覚書が改訂されることもなかった。  (カ) 平成元年にNHK衛星放送の本放送が開始され、平成3年にはWOWWOWの放 送が開始され、さらに平成10年にはBSデジタル放送を行う委託放送事行うようになっ た業者が放送事業者としての免許を取得し、平成12年にBSデジタル放送の本放送が開 始され、有線テレビジョン放送事業者においてこれらの放送の同時再送信を行うようにな った。  原告は、被告らが行うNHK衛星放送、WOWWOW及びBSデジタル放送の同時再送 信については、5団体契約に基づき使用料の請求を行っており、本件使用許諾契約に基づ く使用料等の請求は行っていない。  ウ 確認書の作成及び確認書の作成に至る経緯  (ア) 平成6年3月ころ、原告は、「通信衛星受信番組(CSテレビ)の著作権処理に 関する件」と題する平成6年3月15日付けの書簡を連盟に対して送付した。同書簡中に おいては、@原告としては、CS放送の同時再送信は覚書第1条1項に定める自主放送の (2)に該当する番組に相当するので本件使用料規定の備考Aを適用したい旨説明したこ と、Aしかしながら、連盟は、同番組は放送の同時再送信であるとして本件使用料規定の 備考@を適用するように要望したこと、Bその後、連盟からは、さしあたり平成5年度分 についてだけは原告の説明どおりの取り扱いを了解するとの答えがあったが、これに対し て、原告は、本件使用料規程の一時的な解釈による適用はできかねる旨回答したこと、C このため、原告が使用料を請求した連盟に加盟している有線テレビジョン放送事業者のう ち、60余社が支払いを履行しない状況にあること等の事情が述べられている。  (イ) 上記原告の書簡に対し、連盟は、原告に対する平成6年3月22日付「委託放送 の音楽著作権処理の扱いについて」と題する書簡(以下「連盟書簡」という。)をもって 反論した。同書簡中においては、@上記(ア)の原告の書簡については、若干の誤認がある と思われること、A委託放送事業者が送信する放送番組の取扱いについては、連盟は覚書 どおりに放送(再送信)番組として処理すべきと解釈し、原告においては上記(ア)の書簡 のように解釈し、双方の主張の間には隔たりがあること、Bこの事態を打開すべく、連盟 は、平成5年8月31日の折衝において、(a)両者の解釈に相違がでてしまうような覚書 は新しい時代に対応できないので、この際、新しいルールを協議したいこと、(b)協議に は若干の時間を要しそうなので、平成5年度は暫定措置として委託放送は自主放送時間に 組み入れて計算し、また、再送信放送時間は1日当たり23時間として計算すること 、(c)協議は平成6年度の支払に間に合うように行う、という3点を提案したこと、Cこ の提案について、原告からは、内部で協議の上、後日正式に返答する旨の回答がなされた が、現在まで協議が調っていないこと等の事情が述べられている。  (ウ) 上記(イ)の連盟からの返答の書簡に対し、原告はさらに平成6年3月25日付け 「通信衛星受信番組(CSテレビ)の著作権処理に関する件」と題する書簡を連盟に対し て送付した。同書簡においては、連盟書簡の内容には事実と異なる点があるとして、原告 の認識する事実として概要次の4点を主張した。  @ 連盟書簡では、覚書どおりに再送信番組として処理すべきと解釈しているが、覚書 には、CS放送の再送信を表現した条項はないこと  A 連盟書簡では、平成5年8月31日の折衝で、既存波再送信時間を1日当たり23 時間と改めることを連盟から提案したとあるが、提案したのは原告であって、同年8月1 0日の原告と連盟との折衝において提案したものであること  B 上記Aの平成5年8月10日の折衝において、原告は、原告の提案が連盟加盟事業 者の自主放送に係る著作物使用料の軽減になることを説明したものであり、同年8月31 日の折衝は、事務局双方が数値の確認をするための場として設定されたものであり、原告 からの提案に対し、連盟は持ち帰って回答する旨の返事をしたこと  C 上記Bの連盟の返事を受けて、原告としては、連盟からの正式の回答を待っていた が、同年10月6日、連盟の考えが、平成5年度のみの暫定的な取扱いを求めていること が明確にされたこと  (エ) 上記(ア)ないし(ウ)等の経緯を踏まえ、連盟は、平成6年9月27日付け「自主 放送の音楽部分にかかる著作権処理に関するJASRACとの協議について」と題する文 書を加盟事業者あてに発出し、CS放送の同時再送信については5団体契約の対象である とする連盟の主張の正当性を再確認し、原告の主張の不合理性を批判するとともに、会員 に対し、現在自主放送に係る音楽著作権の処理の問題については原告と連盟との間で折衝 中であるので、原告に対する支払いを見合わせることが妥当である旨の意見を述べた。  (オ) その後も、連盟と原告との間の協議は続けられたが、結局CS放送の同時再送信 の扱いに関する本件使用料規定の解釈及び覚書の改訂について両者間で協議が調うことは なかった。  その一方において、原告と連盟は、平成7年9月13日、平成5年度分及び平成6年度 分の使用料として加盟事業者が原告に支払うべき金額の算定方法について確認書を締結し て暫定的に合意し、平成5年度分及び平成6年度分については、覚書で定める全放送時間 の算出方法(第1条5項)のうち、テレビ再送信の1日当たりの平均放送時間の17を2 4として計算すること、CS放送の同時再送信についても原告の主張する算定方法に従っ て算定することが確認された。  (カ) さらに、原告と連盟は、平成8年5月23日、平成7年度分の使用料として加盟 事業者が原告に支払うべき金額の算定方法について暫定的に合意し、地上波放送及びBS 放送の放送時間は、当分の間、一週間当たり168時間とすること、文字放送等音楽を全 く使用しないチャンネルについては算出の対象から除くこと、CS放送の同時再送信に関 して各チャンネルごとにみなし放送時間を定めて自主放送として使用料を算定すること等 が確認された。  その後、原告と連盟は、平成9年3月31日には平成8年度分の使用料として加盟事業 者が原告に支払うべき金額の算定方法について、平成10年3月31日には平成9年度分 の使用料として加盟事業者が原告に支払うべき金額の算定方法について、平成12年5月 26日には平成10年度から同12年度分の使用料として加盟事業者が原告に支払うべき 金額の算定方法について、それぞれ確認書を締結し、暫定的に合意したが、これらの各確 認書において、使用料算定の基礎となる放送時間の算出については、上記の平成8年5月 23日に締結された確認書と同様の確認がされた。  (キ) また、連盟とケーブルテレビ番組供給者協議会が共同発行人となって平成11年 11月に発行された「ケーブルテレビと著作権2000」と題するガイドブックの「テレ ビ自主放送における音楽著作権処理」の項においては、ケーブルの多チャンネルサービス を構成するコンテンツの分類として、「再送信」に地上波、BS放送が、「自主放送」に、 自主製作、購入番組、CS放送が、それぞれ分類されるとの記載があるほか、自主放送時 間の求め方について、CS放送の番組については連盟と原告とで適宜協議し、確認するこ ととされている旨の解説がされている。また、同ガイドブック83頁には、「注JASR ACとの計算式改定交渉の現状について」として、CS利用の番組配信が通信から委託放 送事業に変わった等々の環境変化を受けて、平成9年に連盟と原告は抜本的な計算式改定 交渉を開始することに合意したが、平成11年10月現在まだ合意に至っていないことが 紹介されている。  エ 被告らによる5団体契約の締結  被告成田は平成3年6月12日(対象期間については平成2年10月1日に遡って適用) に、被告銚子は平成3年7月16日(対象期間については平成2年4月24日に遡って適 用)に、被告行田は平成4年7月6日(対象期間については平成4年4月1日に遡って適 用)に、それぞれ5団体との間で5団体契約を締結し、いずれもその後更新を繰り返して 現在に至っている。  オ 被告行田による本件行田使用許諾契約の締結   平成4年3月31日、被告行田は、原告との間で本件行田使用許諾契約を締結した。  (2) 以上認定の各事実を総合すると、次の各事実を認定することができる。  @ 5団体と準備委との間で5団体契約の契約書式が合意された際には、有テレ法に再 送信の規定が設けられたこと、有テレ法施行規則に「同時再送信」に関する規定が置かれ たことは5団体及び準備委ともに認識しており、同契約の対象となる「同時再送信」につ いては、有テレ法施行規則2条に定める「同時再送信」に含まれる有線テレビジョン放送 と異なった範囲の有線テレビジョン放送が同契約の対象となる旨が合意されたものではな く、同条に定める「同時再送信」に含まれる有線テレビジョン放送はすべて5団体契約の 対象とすることが前提とされていたこと、  A 本件使用料規定の備考@の規定は、先に5団体と準備委との間で合意されていた5 団体契約の契約書式を踏まえ、5団体契約による権利処理の対象となる有線テレビジョン 放送については同契約によって権利処理を行うことが確認的に規定されたものであること、  B 昭和63年の統一書式及び覚書の改訂時において、当時すでに本放送を目前にして いたBS放送の同時再送信を自主放送に含めることとはされなかったこと、  C その後WOWWOWを含むBSアナログ放送、平成12年12月に開始されたBS デジタルの委託放送の同時再送信についても、原告を含む5団体は、5団体契約に従った 権利処理を行っているものであること、  D CS放送事業者は、沿革的には番組供給事業者の一部が委託放送事業者の免許を取 得して放送事業者となったものであるが、地上波放送及びBSを中継器として行う委託放 送の同時再送信だけでなく、CSを中継器として行う委託放送の同時再送信も、上記有テ レ法施行規則に定める「同時再送信」に含まれるものであること、  E 原告と連盟及び有線放送事業者の間においては、平成5年ころからCS放送の同時 再送信について、本件使用料規定の備考@が適用されるものか、備考Aが適用されるもの かについて議論となり、原告と連盟との間で協議が続けられたが、この点についての協議 は現在に至るまで調っていないこと、  F 5団体のうちで、原告以外の他の団体が、被告らの行うCS放送の同時再送信につ いて5団体契約とは別に被告らに対して権利行使をした事実はないこと  上記認定の@ないしFの各事実を総合して、契約当事者の合理的意思に基づいて5団体 契約の趣旨を解釈すれば、CS放送の同時再送信については、5団体契約の対象とされて いると認めるのが相当である。すなわち、CS放送の同時再送信については、本件使用料 規定の備考@の「テレビジョン放送の再送信」に該当し、5団体契約の契約の対象として 権利処理されるものに該当するというべきである。  (3) この点に関し、原告は、本件使用料規定の備考Aの「自主放送時間」とは、有線 放送の全放送時間のうち、備考@に基づく協議の結果合意が成立し、その対象となった放 送の再送信を除く有線放送の放送時間を指すものであって、CS放送の同時再送信につい ては、本則と異なる特別の料率を適用することについて、合意が成立したことはない以上、 備考Aの計算式が適用になるものであると主張する。しかしながら、まず、備考Aの規定 は「再送信のほかに」と規定されているのであって、本則と異なる特別の料率が合意され た場合以外がすべて含まれるとは規定されていないものであるから、再送信については、 すべて備考@の規定の対象となることが予定されているものと解されること、上記(1)認 定の事実経緯から明らかなとおり、備考@の規定は、先に5団体と準備委との間で合意に 至っていた5団体契約の統一書式の内容を踏まえて規定されたものであるところ、5団体 契約における「同時再送信」の内容については、有テレ法施行規則に定義される同時再送 信のことであり、備考@及び備考Aにいう「再送信」も同内容のものであると解されるこ と、CS放送の同時再送信が有テレ法施行規則の定める「同時再送信」に含まれるものと 解されることといった事情に照らすならば、本件使用料規定を原告の主張するように解釈 することはできず、CS放送の同時再送信も本件使用料規定の備考@に定める「再送信」 に含まれるものと解するのが相当である。  原告は、5団体と準備委の間の5団体契約の契約書式の合意時、さらにその後の原告と 連盟との間の本件使用許諾契約の統一書式及び覚書の合意時及び同統一書式及び覚書の改 訂時においても、CS放送の同時再送信が出現することは想定していなかった以上、5団 体契約の対象にCS放送の同時再送信が含まれることはあり得ない旨主張する。しかしな がら、上記認定のとおり、5団体契約の統一書式を合意した時点において、原告及び準備 委は当時の有テレ法施行規則に定める「同時再送信」に含まれる再送信については、すべ て5団体契約の対象とする意思を有していたものであるところ、昭和63年の統一書式及 び覚書の改訂時に既に本放送を目前に控えていたBSアナログ放送について、本件使用許 諾契約による権利処理の対象とする扱いとはされず、現にBSアナログ放送の同時再送信 に関する使用料も5団体契約によって権利処理されていたものであり、その後に5団体契 約の対象を一定の範囲に制限することの合意が原告と連盟との間で成立したこともなかっ たのであるから、このような状況を前提として、その後の平成3、4年に5団体契約を締 結した被告らとの関係においても、CS放送の同時再送信は除くという特段の合意がなさ れていない限り、有テレ法施行規則に定める「同時再送信」はすべて5団体契約の対象と する旨の合意がなされていたと認めるのが相当であって、原告の主張を採用することはで きない。  原告はさらに、地上波放送の同時再送信については、難視聴対策という公益目的があっ たから特別に5団体契約に定める低い使用料率で使用料を算定することを合意したもので ある旨主張する。たしかに、有線テレビジョン放送事業者による地上波放送の同時再送信 が難視聴対策の意味合いをもって行われる場合もあることはそのとおりであるが、5団体 契約においては、有テレ法13条1項に定める義務再送信かどうかを問わずに、一律に契 約に定める権利処理の対象としているものであって、5団体契約に定める使用料率が原告 の主張するように、ことさら難視聴対策という公益目的に着目して定められたものと認め ることはできない。むしろ、同契約の使用料率を決めるに当たっては、5団体の中には、 放送事業者との間における契約において、放送事業者による放送への使用の許諾及び有線 放送による同時再送信に関する再許諾権限の付与の双方を行い、その使用料を定める方式 (いわゆる「元栓処理」)を原則としている団体もあるなどの5団体側の事情が強く影響 したものと推認されるところであって、上記の原告の主張を採用することもできない。  (4) 原告は、5団体契約に従ってCS放送の同時再送信についての使用料を定めるこ ととした場合、使用料の上限が定められている以上、チャンネル数がいくら増えても使用 料は上限を超えることはないことになってしまい、不合理であり、このような扱いは当事 者の合理的意思に反する旨主張する。しかしながら、被告ら各自と5団体との間でそれぞ れ5団体契約が締結された当時の当事者の合理的意思として、放送の同時再送信に該当す るものはおよそ5団体契約によって処理するとの合意がされたものと認められることは上 記認定のとおりであり、原告の主張を採用することはできない。原告の主張は、被告らそ れぞれとの間の5団体契約締結時に存在しなかったCS放送の出現は重大な事情変更であ るから、その同時再送信は5団体契約の対象から外すべきであるとの主張にも解される。 しかし、契約締結後の事情の変化によって、当事者間の明示的な合意がないにもかかわら ず、原告主張のとおり契約内容が変更されたといえるためには、CSを利用した委託放送 事業者の出現という事態を当事者が予見し得ず、かつ5団体契約に従ってCS放送の同時 再送信に関する権利処理を行うことが信義則に反するという事情が認められなければなら ないところ、本件においてはこのような事情を認めることはできないのであって、かかる 原告の主張を採用することもできない。  (5) また、原告は、原告と連盟との確認書において、CS放送の同時再送信について は、自主放送として放送時間を計算することの合意がなされた以上、被告らもその合意に 拘束されるものであると主張する。しかしながら、連盟はケーブルテレビ事業者の事業者 団体であって、個別の有線テレビジョン放送事業者の契約に関する交渉権限を与えられて いるものではないから、連盟が原告と合意した内容について、加盟各事業者にそれに従っ た権利処理を行うように推奨し、加盟事業者がその合意内容を受け入れる限りにおいてそ れに従った契約処理が可能となるとしても、被告らがその合意内容に当然に拘束されると いうことはないというべきである。しかも、上記(1)認定のとおり、連盟と原告との確認 書の内容は、使用料規定の解釈や本件使用許諾契約の対象となる契約について合意したも のではなく、あくまで、暫定的に、確認書が対象とする年度について、加盟ケーブルテレ ビ事業者が原告に支払う使用料の額の算定方法について合意したにすぎないものであるか ら、これらの確認書によって、本件使用料規定の備考Aの「自主放送」にCS放送の同時 再送信を含めることが合意されたということができないことはもちろんのこと、これらの 確認書の存在によって、そのような合意の存在が推認されるということもできない。  したがって、この点に関する原告の主張も採用することができない。  (6) 以上のとおりであって、CS放送の同時再送信における被告らの管理著作物の利 用は、5団体契約の対象となっているものであり、同契約によって処理されるものという べきである。  被告成田及び被告銚子は、5団体契約を締結しているものであり、同被告両名の管理著 作物の利用については同契約により原告の許諾がされているものというべきであるから、 同被告両名の管理著作物の利用が著作権侵害を構成するということはできない。したがっ て、被告成田及び被告銚子に対して差止め及び損害賠償ないし不当利得返還を求める原告 の請求は、理由がない。また、CS放送の同時再送信における管理著作物の利用が本件使 用許諾契約の対象となることを前提として使用料の支払いを求める被告行田に対する請求 も、理由がない(原告は、本件訴訟において5団体契約に基づく使用料の請求を行ってい るものではない。第15回弁論準備手続における原告の陳述)。  また、本件訴訟において原告が管理著作物の使用差止め並びに損害賠償ないし不当利得 返還及び使用料支払を求めている有線放送については、当事者双方から提出された全証拠 によっても、被告らがCS放送の同時再送信以外の有線放送を行って原告の管理著作物を 使用した具体的事実を認めるに足りないし、今後使用されるおそれがあると認めるにも足 りない。 3 結論  以上のとおりであるから、その余の点につき検討するまでもなく、原告の請求はいずれ も理由がない。  よって、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官 三村 量一   裁判官 松岡 千帆