・東京高判平成17年3月16日  アザレ不正競争事件:控訴審  控訴認容。原判決取消。  判決は、「一審原告と一審被告アザレプロダクツ(その設立前は一審被告共和化粧品) は、いずれもアザレグループにおいて、組織的にはアザレ化粧品の発売部門と製造部門を それぞれが分担し合う形でその役割を果たし、対内的・対外的にともにグループの中核的 な企業として認識され、それぞれの立場でグループ全体の発展に貢献してきたものであっ て、このような一つのグループ内において、ともに組織的かつ対外的に中核的な地位を占 めてきた一審原告と一審被告アザレプロダクツが袂を分かち、傘下の各本舗等を含めてグ ループ組織が分裂することとなった場合には、そのアザレグループの商品等表示として周 知となっていた本件各表示については、それらグループの中核的企業であった一審原告及 び一審被告アザレプロダクツのいずれもが、グループ分裂後も、その商品等表示の帰属主 体となり得るものと解するのが相当であるから(もっとも、そのような場合の取扱いにつ いて予め企業間に特段の合意が存在する場合は、その合意の内容に従うことは当然である が、本件においては、そのような特段の合意の存在は認められない。)、一審原告と一審 被告アザレプロダクツとの間においては、その商品等表示、すなわち本件各表示は、互い に不正競争防止法2条1項1号所定の『他人の』商品等表示には当たらないというべきで あり、グループ分裂後にその商品等表示を使用することについて、互いにこれを不正競争 行為ということはできないと解すべきである」と述べた。  そして、「不正競争防止法2条1項1号の規定は、他人の周知な商品等表示と同一又は 類似する表示を使用して需要者を混同させることにより、当該表示に化体した他人の信用 にただのりして顧客を獲得する行為を、不正競争行為として禁止し、もって公正な競業秩 序の維持、形成を図ろうとするものであるところ、本件のように、販売部門と製造部門を 分担し合い、ともにグループの中核的企業として本件各表示の周知性の獲得に貢献してき た一審原告と一審被告アザレプロダクツは、いずれもが当該表示により形成された信用の 主体として認識される者であり、グループの分裂によっても、それぞれに帰属していた本 件各表示による信用が失われることになるわけではなく、互いに他人の信用にただのりす るものとはいえないからである。」としている。 (第一審:東京地判平成16年3月11日) ■判決文 2 争点(1)(本件各表示は一審原告の商品等表示としてのみ需要者の間に広く認識され ているか)について (1) 以上認定したアザレ化粧品の創業の経緯、その後の事業体制や事業展開の実際など からすると、アザレ化粧品は、Aが、ジュポン社時代の化粧品製造業者や販売業者の強い 要請を受けて、それまでの経験と見識に基づいて培った自然派化粧品という基本的な理念 に則り、製造技術者の協力の下に、商品化したものであって、その「アザレ」という名も、 Aの考案によって商標登録を受けるに至ったもので、形式的にも実質的にも、Aのブラン ドということができるものである。  このアザレの商標について、一審原告代表者X1の陳述書(甲35の1、90、92、 101)及び本人尋問の結果中には、@昭和52年になって化粧品の製造販売業を再開す るに当たり、ヴァローとジュポンと2度の失敗があるため、商標の問題に注意した、Aそ こで、自分が、イスラエルの地名「ナザレ」から、「アザレ」という商標を考案した、B 「アザレ」の商標は自分とAが相談しながら決めたが、一審原告の代表取締役を自分がす ることにしたので、商標の登録はAにすることにした旨の記載及び供述部分がある。  しかしながら、「アザレ」についての最初の商標登録出願は昭和49年8月であり、こ の時期は、ジュポン社が製造委託先を一審被告共和化粧品に代えて1年余り経過し、エレ ガンスカラーの販売が好調になっていたころであって、事業の再開に当たり、X1がこれ を考案したというのは不自然であること、アザレ新鹿児島ディストリビューター(甲11 によれば、唯一の一審原告直営の本舗である。)発行の広報誌には、「アザレネームの由来」 として、「(アザレア)アザレア属・つつじ属の亜属、西洋つつじ、オランダつつじとも 称す」との記載があり(乙ロ5)、X1の認識とは異なる説明がなされていること、当時、 Aと親密な関係にあったX1がその考案に関与した商標を、Aが妻のB名義で出願すると いうのも考えにくいことなどに照らすと、上記記載及び供述部分は、採用することができ ず、他にAのブランドであるとの上記認定を覆すに足りる証拠はない。 (2) そして、前記認定したところからすれば、Aは、CやGなどの要請を受けてアザレ 化粧品の事業を始めるに当たり、その販売部門についてはA側が、製造部門についてはC が、それぞれ分担し協力していくことを前提として、全国各地にGなど販売担当の本舗を 置いてその事業展開をしていくこととしたものであり、このような基本的な考えに基づき、 販売部門として、X1を代表者に据えた一審原告(その前身の有限会社)を立ち上げ、他 方、製造部門としては、当初、Cが経営する一審被告共和化粧品にこれを委ねていたが、 その後、Cが中心となって設立された一審被告アザレプロダクツがこれを担当するように なったものであって、そのような体制の下で、アザレ化粧品の販売事業は、一審原告を総 発売元、一審被告共和化粧品、同アザレプロダクツを製造元として、全国各地に展開され る本舗、販売店に商品を供給し、それら本舗等による販売活動等を通じて、次第に消費者 の信頼を得て発展していったものということができる。このアザレ化粧品については、本 舗等に属する販売員による訪問販売方式が採用されており、本件各表示が付されたアザレ 化粧品の外箱あるいは瓶底のシール等には、発売元として「株式会社アザレインターナシ ョナル」、製造元として「アザレプロダクツ株式会社(その設立前は共和化粧品工業株式 会社)」と表示され、また、各本舗のほとんどは、その商号に「アザレ」の語を用い、パ ンフレットなど様々な形でアザレの名称等を用いて、消費者に対する販売活動を行ってい たものであって、一審原告、一審被告アザレプロダクツ(その設立前は一審被告共和化粧 品)及び各本舗等は、アザレ化粧品の販売普及という共通の目的の下に、発売元、製造元 及び販売店として、それぞれの役割を分担し合いながら結合した一つのグループを形成し、 対外的にもそのような結合関係にあることを表示していたものとみるのが相当である。こ のことは、前記認定のとおり、一審原告自身も、アザレリポートやパンフレットにおいて、 一審被告アザレプロダクツ及び各本舗等を含めて「アザレグループ」と表示していたこと からも明らかである。  そして、消費者にとってみれば、アザレ化粧品は、そのようなアザレグループが提供す る化粧品であり、「アザレ」の表示は、上記グループ全体の営業あるいは商品を示すもの として認識されていたものとみるのが自然であって、本件各表示は、そのようなグループ 共通の商品等表示として、消費者の信頼を獲得し、周知になっていったものと認めるのが 相当である。 (3) このようなアザレグループの中で、@一審原告は、販売を担当する本舗を募集し、 各本舗との間で販売指定店契約を締結して、アザレ化粧品の販売権を付与する一方で、一 審被告アザレプロダクツとの間で委託製造取引契約を締結し、これらの契約に基づいて、 各本舗から製品の注文を受け付け、一審被告アザレプロダクツに発注して、各本舗に製品 を供給していたこと、Aアザレ化粧品には一審原告の名称が発売元として表示され、アザ レ化粧品の宣伝広告にも一審原告の名称が表示されていたこと、B一審原告は、各本舗全 体に対する情報提供などを行い、パンフレットなどを作成配布し、販促品の提供などをし ていたこと、C一審原告は、ワンダフルとの間で、唯一本件各商標の使用許諾契約を締結 して、毎年相当額の商標使用料の支払をしていたことなどからすると、一審原告は、アザ レグループの組織内における中心的な役割を果たしており、対内的にも対外的にも、アザ レグループの中核的な企業として認識され、グループ全体の発展に貢献してきたものであ ることは明らかである。  他方、一審被告アザレプロダクツの設立により、グループの体制が名実ともに確立され ることとなったアザレグループにおいて、同アザレプロダクツは、アザレ化粧品創業当時 からの一審被告共和化粧品のアザレ化粧品製造部門を分社化して設立された会社であり、 @一審被告共和化粧品が製造していた当時と同様に、アザレ化粧品について、独占的な製 造権を有し、Aの追求する自然派化粧品の理念に沿うべく、主体的に製品の技術的な研究、 開発、品質の保持等に努めてきたこと、Aその製造する製品は、全国各地の本舗等を通じ て消費者の信頼を獲得し、一審原告の売上高ベースでみても、昭和59年当時12億円余 であったものが、平成8年にはその6倍弱の71億円余に達する程の成長を遂げるなど、 昭和60年の設立以降、長年にわたりアザレグループ全体の発展に貢献してきたものであ ること、Bアザレ化粧品には、一審原告と並んで、製造元として一審被告アザレプロダク ツ(その設立前は一審被告共和化粧品)の名称も表示されており、一審原告も、パンフレ ットなどで、一審被告アザレプロダクツをアザレ化粧品の専用工場として、工場の建設や 拡張等について紹介するなど、一審原告と並ぶアザレ製造グループの一員として宣伝して いたこと、C一審被告アザレプロダクツについては、X1が株主となるとともにその取締 役に、一審原告については、Cが株主となるとともにその取締役に、それぞれ就任してい たものであり、このような株式の所有や役員就任は、アザレグループ内では同一審被告と 一審原告との間だけであることなどからすると、一審被告アザレプロダクツも、同共和化 粧品のアザレ化粧品製造部門を引き継いで、アザレ化粧品の製造を一手に引き受け、主体 的に製品の開発、製造に関わる重要な役割を果たしてきたものであり、対内的にも対外的 にも、一審原告と並んでアザレグループの中核的な企業として認識され、グループ全体の 発展に貢献してきたものということができる。 (4) 一審原告は、一審被告アザレプロダクツは、同共和化粧品と同様に、単にアザレ化 粧品をOEM製造していたものに過ぎないと主張するが、上記のような一審被告アザレプ ロダクツがグループ内において果たしてきた役割などの事情に加え、前記認定のとおり、 @アザレ化粧品の創業はCらのAに対する積極的な働きかけが発端であり、Aとしては、 事業展開に当たって、その製造部門はCに委せることとしていたこと、Aアザレ化粧品の 創業後、Cは、A及びX1と同行するなどして、アザレ化粧品の本舗網の拡充に協力し、 一審被告共和化粧品、その後同アザレプロダクツが、各本舗・一審原告間の販売指定店契 約書に立会人として関与するなど、アザレ化粧品の事業展開に深く関わっていたこと、B 一審原告と一審被告共和化粧品、同アザレプロダクツとの間のアザレ化粧品の製造に関す る契約において、一審原告は、同一審被告らに対してのみアザレ化粧品の製造を委託する ものとされ、同一審被告らだけがアザレ化粧品の製造元になるとされていたこと、C一審 被告共和化粧品との契約書では、製品の内容処方や成分については、同一審被告が決定し て製造するものとされており、また、一審被告アザレプロダクツとの契約書では、製品 (契約書では「製造」)の内容処方や成分については、同一審被告と一審原告が協議の上 決定して製造するものとされていたことなど、本件に現れた諸事情を総合考慮すると、一 審被告共和化粧品は、アザレ化粧品のほかにも、他社から化粧品製造の委託を受けていた ものではあるが、そのことから直ちに一審原告との関係をOEMに過ぎないとすることは できず、アザレ化粧品の創業の経緯、その後の事業展開への関わり、契約内容などからみ ても、同一審被告は、アザレ化粧品の販売事業において、単なるOEM業者とは異なる役 割を担っていたものというべきであるし、また、一審被告アザレプロダクツは、まさにア ザレグループの中核としてその役割を果たしていたことが明らかであって、ともに単なる 相手先ブランドで販売される製品を製造するOEM業者に過ぎないということはできない のであり、一審原告の上記主張は採用できない。  また、一審原告は、一審被告アザレプロダクツは、アザレ化粧品が専用工場で製造され ているとの外観・外形を示すことだけを目的に設立されたペーパーカンパニーに過ぎない などとして、商品表示の主体としての「アザレグループ」は存在していないと主張する。  確かに、前記認定のとおり、一審被告アザレプロダクツは、最近まで、同共和化粧品の 工場設備等を使用してアザレ化粧品を製造していたものであるが、一審被告アザレプロダ クツは、その設立後、薬事法に基づく製造許可を得て、専用の工場でアザレ化粧品を製造 し、アザレ化粧品に製造元として表示されているのであり、また、一審原告自身も、パン フレットで、アザレ化粧品の専用工場として一審被告アザレプロダクツを紹介しているの であって、一審被告共和化粧品の施設、人員を使用するなどしているとしても、一審被告 アザレプロダクツの代表者であるCがこれを管理監督していたとみることもできるのであ り、そのことは系列会社の関係にある同一審被告ら内部の問題に過ぎず、そのような施設 の所有関係等や経理上の処理などをとらえて、一審被告アザレプロダクツが実体のないペ ーパーカンパニーに過ぎないということはできない。そして、本件のアザレ化粧品の販売 事業において、一審原告、一審被告アザレプロダクツ、各本舗等はアザレ化粧品の販売普 及という目的の下に結合した一つのグループを形成しているものであり、本件各表示がそ のグループ全体を表示するものとして認識され、周知になっていったものであることは、 前記のとおりである。  さらに、一審原告は、一審被告アザレプロダクツの設立以前にアザレ化粧品が一審原告 の商品であり、本件各表示が一審原告の商品表示であることの周知性が確立されていたと 主張する。  しかし、前記認定のとおり、アザレ化粧品の販売事業は、販売部門についてはA側が、 製造部門についてはCが、それぞれ分担し協力していくことを前提として、全国各地に本 舗等を置いて事業展開していくこととして始められたものであり、一審被告アザレプロダ クツが設立される前までは、一審原告、一審被告共和化粧品、各本舗等が一つのグループ をなして、アザレ化粧品の普及に努め、発展してきたものであって、消費者にとって、 「アザレ」の表示は、それら営業主体の全体、すなわちアザレグループの商品等表示とし て認識され、周知になっていったものである。したがって、一審原告が主張するように、 一審被告アザレプロダクツの設立以前に本件各表示が一定の周知性を獲得していたとして も、それは、あくまでアザレグループの商品あるいは事業という、アザレグループ全体と 結びついたものとして周知になり、信用を形成していったものであって、アザレグループ を離れて一審原告のみの商品等表示として周知になったものではないというべきであるか ら、一審原告の上記主張は採用することができない。  また、一般に、商品等表示の周知性、著名性は、その周知等の程度において初期の状態 から、よりその程度の高い状態まで、企業活動や取引の動向等に応じて拡充されていくの が通常であるところ、アザレ化粧品の売上高の推移に照らして考えれば、たとえ一審被告 アザレプロダクツ設立前に、一定程度の周知性を獲得していたとしても、その時期におけ る周知性の程度は、未だそれほど高いものとはいえないというべきであり、専用工場とし ての一審被告アザレプロダクツが設立された後の売上高の顕著な増加からしても、同アザ レプロダクツが、一審被告共和化粧品の果たした役割を引き継いで、さらにその周知性の 維持、拡大に貢献していることは明らかであって、一審被告アザレプロダクツが、本件各 表示が一定程度の周知性を獲得した後に設立され、アザレグループの一員となったもので あるとしても、そのことから、同アザレプロダクツが本件各表示の周知性の獲得に貢献し ていないとか、グループの中核的企業としての役割を持たないなどということができない ことは当然である。  なお、本件各商標については、一審原告のみが使用許諾を得て毎年相当額の商標使用料 を支払っていることは前記認定のとおりである。しかし、前記認定した事実を総合すると、 Aは、自然派化粧品という基本的な理念に基づき、アザレのブランドを用いて、アザレ化 粧品の販売事業に乗り出したものであるが、自らは、単にその商標権者の地位にとどまり、 実質的にはともかく、形式的には、一審原告の代表取締役に就任することもせずに、専ら アザレ化粧品の普及のために全国の各本舗等でアザレ化粧品の理念を啓蒙するなどして、 いわばアザレグループの象徴的存在としての役割を果たしていたものであり、一審原告が、 ワンダフル(実質的にはAの個人会社である。)との間で本件各商標使用許諾契約を締結 し、毎年相当額の商標使用料を支払うこととされたのは、Aがアザレグループによるアザ レ化粧品販売事業による収益の分配を商標権の使用対価という形で受けるための手段とし て採られた方法とみるのが合理的であって(一審原告と一審被告アザレプロダクツあるい は各本舗との契約関係において、一審原告のみが商標使用料を支払っていることはその契 約条件の設定に当たり当然考慮されていたであろうことは、推測するに難くない。)、本 件において、一審原告のみが商標使用料を支払っていることは、前記認定説示したような アザレグループの存在や一審被告アザレプロダクツの中核的役割などを否定する理由とな るものでないことも明らかである。 (5) 以上のとおり、一審原告と一審被告アザレプロダクツ(その設立前は一審被告共和 化粧品)は、いずれもアザレグループにおいて、組織的にはアザレ化粧品の発売部門と製 造部門をそれぞれが分担し合う形でその役割を果たし、対内的・対外的にともにグループ の中核的な企業として認識され、それぞれの立場でグループ全体の発展に貢献してきたも のであって、このような一つのグループ内において、ともに組織的かつ対外的に中核的な 地位を占めてきた一審原告と一審被告アザレプロダクツが袂を分かち、傘下の各本舗等を 含めてグループ組織が分裂することとなった場合には、そのアザレグループの商品等表示 として周知となっていた本件各表示については、それらグループの中核的企業であった一 審原告及び一審被告アザレプロダクツのいずれもが、グループ分裂後も、その商品等表示 の帰属主体となり得るものと解するのが相当であるから(もっとも、そのような場合の取 扱いについて予め企業間に特段の合意が存在する場合は、その合意の内容に従うことは当 然であるが、本件においては、そのような特段の合意の存在は認められない。)、一審原 告と一審被告アザレプロダクツとの間においては、その商品等表示、すなわち本件各表示 は、互いに不正競争防止法2条1項1号所定の「他人の」商品等表示には当たらないとい うべきであり、グループ分裂後にその商品等表示を使用することについて、互いにこれを 不正競争行為ということはできないと解すべきである。  なぜなら、不正競争防止法2条1項1号の規定は、他人の周知な商品等表示と同一又は 類似する表示を使用して需要者を混同させることにより、当該表示に化体した他人の信用 にただのりして顧客を獲得する行為を、不正競争行為として禁止し、もって公正な競業秩 序の維持、形成を図ろうとするものであるところ、本件のように、販売部門と製造部門を 分担し合い、ともにグループの中核的企業として本件各表示の周知性の獲得に貢献してき た一審原告と一審被告アザレプロダクツは、いずれもが当該表示により形成された信用の 主体として認識される者であり、グループの分裂によっても、それぞれに帰属していた本 件各表示による信用が失われることになるわけではなく、互いに他人の信用にただのりす るものとはいえないからである。  そうすると、一審被告アザレプロダクツが本件各表示の付された被告製品を製造販売す る行為は、不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争行為に該当するものではなく、ま た、一審被告アザレプロダクツの傘下に属して、アザレの商号を使用し、同一審被告の製 造する本件各表示の付された被告製品を販売する一審被告アザレ東京、同アザレアルファ、 同アザレウイング、同アザレ武蔵野の行為も、同号所定の不正競争行為に該当しないとい うべきである。また、前記認定した事実からすれば、一審被告共和化粧品及び同Yは、い ずれも自らの業務として本件各表示の付された被告製品の製造販売を行っているものでは ないから、同一審被告らについて不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争行為が成立 するとは認められないし、一審被告アザレプロダクツの被告製品の製造販売行為は不正競 争行為に該当するものではないから、これが不正競争行為に当たることを前提に、一審被 告共和化粧品及び同Yについて共同不法行為の成立をいう一審原告の主張も理由がない。 3 以上によれば、その余の点について検討するまでもなく、一審原告の本訴請求は当審 において拡張した部分を含めて理由がない。よって、一審原告の請求を一部認容した原判 決は相当でなく、一審被告ら(一審被告Yを除く。)の本件控訴は理由があるが、一審原 告の本件控訴(及び当審において拡張した請求)は理由がないから、訴訟費用の負担につ き民事訴訟法67条、66条、61条を適用して、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所知的財産第3部 裁判長裁判官 佐藤 久夫    裁判官 設樂 驤    裁判官 若林 辰繁