・東京地決平成18年7月11日  パラマウント映画保護期間事件  債権者(パラマウントピクチャーズコーポレーション)は、昭和28年、映画「ローマ の休日」(本件映画1)および映画「第十七捕虜収容所」(本件映画2)を制作し、アメ リカ合衆国で公表した。  映画の著作物の保護期間については、平成15年法律第85号により、「映画の著作物 の著作権は、その著作物の公表後70年…を経過するまでの間、存続する。」(54条1 項)と改正された。本件改正法は、平成16年1月1日から施行され(附則1条)、映画 の著作物の保護期間についての経過措置として、附則2条に、「改正後の著作権法…第5 4条第1項の規定は、この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が存する映 画の著作物について適用し、この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が消 滅している映画の著作物については、なお従前の例による。」と規定されている。  本件は、本件映画を含む債権者が、保護期間が満了した映画のDVD商品の製造販売す る債務者(株式会社ファーストトレーディング)に対し、本件映画の著作権に基づき、債 務者の本件DVDの製造頒布行為につき著作権侵害を理由として差止め等を求めた仮処分 事件である。 ■争 点  本件映画の保護期間。すなわち、本件改正法の施行の際、本件映画について、現に改正 前の著作権法による著作権が存していて本件改正法が適用されるか、それとも著作権が消 滅していたか(本件改正法附則2条)。 ■決定文 第4 当裁判所の判断 1 適用される法 (1) 本件の債権者はアメリカ合衆国法人であり、本件映画は同国において最 初に公表されたものである。我が国とアメリカ合衆国は、「文学的及び美術 的著作物の保護に関するベルヌ条約」(以下「ベルヌ条約」という。)に加 盟している(顕著な事実)。  著作権に基づく差止請求は、著作権の排他的効力に基づくものであり、そ の法律関係の性質は、著作権を保全するための救済方法と決定すべきである。 著作権を保全するための救済方法の準拠法に関しては、ベルヌ条約5条(2) により、保護が要求される国の法令の定めるところによる。よって、我が国 における本件DVDの製造頒布行為の差止請求の準拠法は、ベルヌ条約5条 (2)にいう「保護が要求される同盟国」である我が国の法律である。そして、 本件映画は、著作権法6条3号により、我が国の著作権法による保護を受け る。  また、本件映画の保護期間については、ベルヌ条約7条(8)本文により、 「保護が要求される同盟国」である我が国の法律が適用される。 (2) 映画の著作物の保護期間について、平成15年法律第85号(本件改正 法)による改正前の著作権法(以下「改正前の著作権法」という。)54条 1項は、「映画の著作物の著作権は、その著作物の公表後五十年〔中略〕を 経過するまでの間、存続する。」と定めていたところ、本件改正法により、 「映画の著作物の著作権は、その著作物の公表後七十年〔中略〕を経過する までの間、存続する。」と改正された。本件改正法附則1条は、「この法律 は、平成十六年一月一日から施行する。」と定め、映画の著作物の保護期間 についての経過措置として、附則2条は、「改正後の著作権法〔中略〕第五 十四条第一項の規定は、この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著 作権が存する映画の著作物について適用し、この法律の施行の際現に改正前 の著作権法による著作権が消滅している映画の著作物については、なお従前 の例による。」旨定めている。  保護期間の計算方法については、「〔前略〕第五十四条第一項の場合にお いて、〔中略〕著作物の公表後五十年〔中略〕の期間の終期を計算するとき は、〔中略〕著作物が公表され〔中略〕た日のそれぞれ属する年の翌年から 起算する。」とされている(改正前の著作権法57条)ほか、民法の通則的 な規定によることになる。 なお、著作権法58条には、ベルヌ条約により創設された国際同盟の加盟 国である外国を本国とする著作物で、その本国において定められる著作権の 存続期間が51条から54条までに定める著作権の存続期間より短いものに ついては、その本国において定められる著作権の存続期間による旨規定され ているが、本件映画については、アメリカ合衆国において定められる著作権 の存続期間が未だ経過していない(甲1ないし4、9)。 2 本件映画の保護期間について (1) 本件改正法附則2条の適用関係  本件映画の保護期間の終期の計算については、本件映画が公表された日の 属する年の翌年である昭和29年から起算する(著作権法57条)。そして、 改正前の著作権法54条1項によれば、映画の著作物の著作権は、公表後5 0年を経過するまでの間存続するから、年による暦法的計算をして(民法1 43条1項)、50年目に当たる平成15年が経過するまでの間存続するこ とになる。期間は、その末日の終了をもって満了する(同法141条)から、 改正前の著作権法の下では、本件映画の著作権は、平成15年の末日である 同年12月31日の終了をもって、存続期間の満了により消滅する。  本件改正法は、平成16年1月1日から施行され(附則1条)、本件改正 法附則2条は、「この法律の施行の際」と規定しているところ、「施行の 際」とは、附則1条の施行期日を受けた平成16年1月1日を指すものであ る。そして、附則2条の規定は、この法律の施行期日である平成16年1月 1日において、現に改正前の著作権法による著作権が存する映画の著作物か、 又は、現に改正前の著作権法による著作権が消滅している映画の著作物かに よって適用を分ける趣旨のものと解される。  本件映画の著作権は、改正前の著作権法によれば、上記のとおり、平成1 5年12月31日の終了をもって存続期間が満了するから、本件改正法が施 行された平成16年1月1日においては、改正前の著作権法による著作権は 既に消滅している。よって、本件改正法附則2条により、本件改正法の適用 はなく、なお従前の例によることになり、本件映画の著作権は、既に存続期 間の満了により消滅したものといわざるを得ない。 (2) 債権者の主張1について  債権者は、本件映画の本来の保護期間が平成15年12月31日午後12 時までであって、平成16年1月1日午前零時と同時であるから、本件改正 法の施行の際、現に改正前の著作権法による著作権が存していた旨主張し、 文化庁長官官房著作権課も、同様の見解を表明している(甲5、6)。  確かに、本件映画の保護期間の満了を「時間」をもって表現すれば、平成 15年12月31日午後12時となる。しかしながら、著作権法54条1項 及び57条の規定は、「年によって期間を定めた」(民法140条)もので あって、「時間によって期間を定めた」(同法139条)ものではない。年 によって期間を定めた場合は、「期間は、その末日の終了をもって満了す る。」(同法141条)とされるから、あくまでも、保護期間の満了を把握 する基本的な単位は「日」となるというべきである。  そして、本件改正法附則2条の規定は、この法律の施行期日である平成1 6年1月1日において、映画の著作物の著作権の存否を問題とするものであ る。本件改正法が同日午前零時から施行されて効力を有するとしても、著作 権の存否を「年によって期間を定め」、「末日」の終了をもって満了するこ とを前提とする限り、本件映画について、平成16年1月1日まで著作権が 存続していたということはできない。  そもそも、本件改正法の附則中に、映画の著作物の著作権の存否を問題と するに当たって、一瞬を指す意味の「時間」の単位でとらえるべきであると する文理上の手がかりはない。また、本件改正法が平成16年1月1日午前 零時の瞬間から施行されるとしても、「施行の際」との文言によって、その 施行の一瞬を切り取るべきものでもない。  なお、時間の概念として、前日の午後12時と翌日の午前零時の指す時刻 は同時であって、同一時刻をそれぞれ両日のうちの一方の日からみた表現で あるとしても、その時刻を平成15年12月31日午後12時ととらえれば 本件映画の著作権は存しているということができても、この時刻を平成16 年1月1日午前零時ととらえる以上、本件映画の著作権は消滅したものとい わざるを得ない。  このことは、法制一般について、「この法律は、平成11年3月31日限 り、その効力を失う。」と規定されている場合に、平成11年3月31日午 後12時まで効力を有し、同年4月1日午前零時に効力を失うと解釈されて いることからも明らかである(乙2、3)。  以上のとおり、本件改正法附則2条の適用関係に関する債権者の解釈及び 文化庁の見解は、文理解釈上、採用することができない。 (3) 債権者の主張2(1)について ア 債権者は、現行の著作権法の立法過程において、政府委員が債権者の解 釈を前提とした答弁をしているなど、このような解釈に立脚して、遅くと も昭和46年から今日まで、このような解釈を前提とする著作権実務が運 用されてきている旨主張する。 イ 前記第2の1の事実に疎明資料(甲25ないし39、乙1)を総合すれ ば、次の事実が認められる。 (ア) 旧著作権法(明治32年法律第39号)は、昭和37年法律第74 号(同年4月5日公布、同日施行)、昭和40年法律第67号(同年5 月18日公布、同日施行)、昭和42年法律第87号(同年7月27日 公布、同日施行)及び昭和44年法律第82号(同年12月8日公布、 同日施行)により、暫定的に4回にわたり保護期間の延長が実施された。 これらの暫定的な延長は、昭和37年に著作権法の改正に着手し、その 全面改正の実施までの間に著作物の保護期間が満了する著作権者の救済 のためなされたものであり、衆議院文教委員会及び参議院文教委員会に おいて、国務大臣等から、その旨の説明が繰り返し行われている(甲2 5ないし33、乙1)。 (イ) 第63回国会衆議院文教委員会(昭和45年3月11日開催)及び 同国会参議院文教委員会(同年4月14日開催)において、A国務大臣 は、昭和37年以降の改正作業中に保護期間の経過によって権利の消滅 する著作権者を救済するため、4回にわたり暫定延長の措置が講ぜられ たことを説明した。また、B政府委員(文化庁次長)は、従来の保護期 間の暫定延長の措置をも考慮して、現行の著作権法が昭和46年1月1 日から施行され、旧著作権法による著作権の消滅しているもの以外のす べての著作物に適用されるものであることを説明した。なお、現行の著 作権法の立法に際し、上記説明のほかは、旧著作権法による著作権が消 滅している著作物あるいは存続している著作物の公表時期等に関する言 及はなく、昭和45年12月31日に保護期間が満了する著作物につき 昭和46年1月1日に施行された現行の著作権法が適用されるか否かに 関する説明や質疑はされていない(甲34、35)。 (ウ) 上記(イ)のような審議を経て、昭和45年、旧著作権法は全面改正 されて、著作物の保護期間が原則50年とされ、昭和46年1月1日、 現行の著作権法(昭和45年法律第48号)が施行された。そして、附 則2条1項に、「改正後の著作権法〔中略〕中著作権に関する規定は、 この法律の施行の際現に改正前の著作権法〔中略〕による著作権の全部 が消滅している著作物については、適用しない。」との規定が設けられ た(顕著な事実)。 (エ) 第112回国会衆議院文教委員会(昭和63年5月18日開催)に おいて、C政府委員(文化庁次長)は、昭和46年から現行の著作権法 が施行され、かつて写真の著作物の保護期間が13年であった関係で、 昭和32年以降に公表されたものの著作権が存することを説明した(甲 36)。  第120回国会衆議院文教委員会(平成3年3月15日開催)におい て、D政府委員(文化庁次長)は、昭和32年以降に公表された写真の 著作物が現行の著作権法下でも公表後50年間保護されて、保護期間が 平成19年までであることを説明した(甲37)。  第139回国会衆議院文教委員会(平成8年12月12日開催)及び 同国会参議院文教委員会(同月17日開催)において、E政府委員(文 化庁次長)は、昭和31年までに公表された写真の保護期間が満了して いることを説明した(甲38、39)。 (オ) 本件改正法の国会における審議の会議録には、本件改正法附則2条 の適用関係に関する記載及び保護期間を延長した場合に対象となる映画 又はその公表時期に関する記載はない(審尋調書(第2))。 ウ上記イ(ア)認定のとおり、旧著作権法下における4回にわたる暫定的延 長に関する改正法の施行期日は、いずれも1月1日ではなかったため、昭 和37年12月31日をもって満了する予定であった著作物の保護期間が、 4回にわたり延長されたことになる。それによれば、現行の著作権法は、 昭和37年以来4回にわたる暫定的延長を受けて引き続き著作権を保護す ることを前提としていたことが推認されなくはない。しかし、上記イ (イ)認定のとおり、現行の著作権法それ自体についてみれば、立法に際し、 国会の審議において、昭和45年12月31日に保護期間が満了する著作 物につき現行の著作権法が適用されるか否かに関し、具体的な説明も質疑 もされておらず、上記イ(ウ)認定の経過措置の規定の文言をもって、昭和 45年12月31日に保護期間が満了する著作物につき昭和46年1月1 日に施行された現行の著作権法が適用されるということは、少なくとも文 理解釈上は、困難である。なお、上記イ(エ)認定の政府委員の各説明は、 現行の著作権法が成立した後の時点において、現行の著作権法の適用につ き文化庁の見解を述べたものにすぎない。  仮に、現行の著作権法施行の際の適用関係について、当初昭和37年1 2月31日に保護期間が満了する予定であった著作物を現行の著作権法に よって引き続き保護したいという立法者意思を認め、合目的的に、昭和4 5年12月31日に保護期間が満了する著作物につき昭和46年1月1日 に施行された現行の著作権法が適用されると解するとしても、本件改正法 附則2条につきこれと同様に解すべき立法者の意思を汲み取ることは困難 である。すなわち、上記イ(オ)のとおり、本件改正法の国会における審議 の会議録には、本件改正法附則2条の適用関係に関する記載や、保護期間 を延長した場合に対象となる映画やその公表時期に関する記載はなく、本 件改正法の適用関係について、国会における立法段階での具体的な審議は されていないものと推認される。よって、本件改正法附則2条については、 平成15年12月31日に保護期間が満了する著作物を保護するためのも のであったという立法者意思を認めることはできない。 (4) 債権者の主張2(2)について  債権者が提出した文献のうち、文化庁長官官房著作権課「著作権テキスト 〜初めて学ぶ人のために〜平成17年度」(甲15)及び文化庁「著作権法 入門(平成16年版)」(甲16)には、文化庁長官官房著作権課「解説著 作権法の一部を改正する法律について」コピライト2003.8号(甲5) と同様、昭和28年に公表された映画の著作物にも、保護期間を公表後70 年とする本件改正法が適用されることが明記されている。しかしながら、上 記各文献の見解は、文化庁の見解を示したものにすぎず、法案を提出した文 化庁が主観的にそのような意図を有していたとしても、本件改正法附則1条 及び2条の文言上同見解が採用できないことは、前記(2)に判示したとおり である。  また、加戸守行(元文化庁次長)「著作権法逐条講義三訂新版」(甲1 7)、作花文雄(元文化庁著作権課課長補佐)「詳解著作権法第3版」(甲 19)、佐野文一郎(元文化庁著作権課長)・鈴木敏夫「新著作権法問答」 (甲20)、佐野文一郎「著作権制度改正の概要」ジュリスト452号(甲 21)、吉田大輔(元文化庁著作権課長)「明解になる著作権201答」 (甲22)、文化庁「最新版著作権法ハンドブック1987」(甲23)及 び著作権法令研究会「著作権法ハンドブック」(甲24)の各文献では、い ずれも、昭和7年1月1日以降死亡した者の著作権が現行の著作権法により 保護されること、すなわち保護期間が昭和45年12月31日までのものに ついては、昭和46年1月1日施行の現行の著作権法により、さらに保護を 受けられることが明記されている。しかしながら、上記各文献は、いずれも、 現行の著作権法の適用関係についての文化庁又はその関係者の見解を示した ものにすぎず、本件改正法附則2条の解釈を示すものではない。また、田村 善之「著作権法概説第2版」(甲18)も、上記文献(甲17)の記述を引 用したものにすぎない。 (5) 債権者の主張2(3)について  債権者の引用する最高裁昭和53年(オ)第647号同54年4月19日 第一小法廷判決・判例タイムズ384号81頁は、静岡県教育委員会の定め た「教職員の優遇退職実施要綱」において、満60歳に達したか否かが問題 となり、年齢計算ニ関スル法律に基づき、当該年齢に達する日について、出 生応当日の前日であると判断した原審である東京高裁昭和52年(ネ)第2 291号同53年1月30日判決・判例タイムズ369号193頁の判断を 是認し、いわゆる例文で上告を棄却したものである。また、大阪高裁昭和5 4年(行ケ)第2号同年11月22日判決・判例タイムズ407号118頁 は、公職選挙法9条の「年齢満二十年以上の者」について、年齢計算ニ関ス ル法律に基づき、当該年齢に達する日が出生応当日の前日であると判断した ものであり、上告審の判断は示されていない。  これらの裁判例で、出生応当日の前日に当該年齢に達するとした判断は、 一般に年齢計算につき理解されたところに従った結論にすぎず、債権者が主 張するように、1日の時間的な始点と終了点を持ち出して、形式的には翌日 に生じるように読める効果を前日に認めたり、形式的には前日に効力が消滅 しているように読める効果を翌日まで認める解釈をしたものとはいえない。 (6) 債権者の主張3について  債権者は、債権者の解釈を前提とする著作権実務が運用されて定着してい るとして、法解釈の安定性の観点を指摘する。  なるほど、前記認定のとおり、著作権法を所管する文化庁が債権者の解釈 と同一の見解を表明してきたものであり、これに対する債権者の期待は、十 分に理解することができる。そして、著作権法に限らず、あらゆる法分野に おいて、一国の法制度として、事前に権利の範囲や法的に擁護される利益が 明確であって、これらの侵害に対して確実に事後の救済がされるような法的 安定性と具体的妥当性の確保されていることが望ましいことはいうまでもな い。しかしながら、本件改正法附則2条の適用関係に関する文化庁の上記見 解は、従前司法判断を受けたものではなく、これが法的に誤ったものである 以上、誤った解釈を前提とする運用を将来においても維持することが、法的 安定性に資することにはならない。  また、債権者は、知的財産権の保護を重視する時代の要請を指摘する。 しかしながら、著作権法は、著作者の権利を定め、その文化的所産の公正 な利用に留意しつつ、著作権者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に 寄与することを目的とした法律である(著作権法1条)。上記著作権法の目 的を実現し、知的な創造活動を促進して、より高度な創造に向けた意欲を与 え、他方で、その成果を活用して社会を発展させるために、権利の保護と公 正な利用のバランスを失してはならないことはいうまでもない。本件改正法 は、映画の著作物の保護期間を公表後50年から70年に延長するものであ り、その適用があるか否かによって、著作物を自由に利用できる期間が20 年も相違することになる。しかも、著作権侵害が差止め及び損害賠償の対象 となるのみならず、刑事罰の対象となること(著作権法119条以下)をも 併せ考えれば、改正法の適用の有無は、文理上明確でなければならず、利用 者にも理解できる立法をすべきであり、著作権者の保護のみを強調すること は妥当でない。 (7) 小括  以上のとおり、本件映画については、本件改正法が適用されずに、平成1 5年の経過、すなわち、同年12月31日の終了をもって保護期間が満了し たものである。  したがって、本件映画については、我が国においては、既に著作物の保護 期間が満了したパブリックドメインに帰属する著作物というべきであるから、 債権者の被保全権利が認められないことになる。 3 結論  以上の次第であるから、保全の必要性について判断するまでもなく、債権者 の申立ては、理由がないことに帰する。  よって、主文のとおり決定する。 平成18年7月11日 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官 高部眞規子    裁判官 平田 直人    裁判官 田邉 実 物件目録 1 「ローマの休日」と題する映画のDVD商品 2 「第十七捕虜収容所」と題する映画のDVD商品