第㈼部 卒業論文の書き方



㈵.卒業論文とレポート



㈵−1 卒業論文とレポートの違い

卒業論文とレポートでは,テーマが与えられているか否かという点で大きな違いがあるが,自己の主張を論理的に説明し,相手を説得するという点では同じである.したがって,これまで述べてきたことのほとんどはそのまま当てはまると考えてよい.→㈼−5

㈰テーマは自分で見つける

レポートでは一般にテーマが与えられているが,卒業論文ではテーマは自分で見つけなければならない.したがって,すべてが自分の考えによって進められる.このことは,卒論のレベルにおいて大きな差が生まれうる可能性を示唆する.平たくいえば,優秀な卒論からレポート以下の,あるいは中学生の作文程度の卒論まででてくる余地がある.差の源はひとえに卒論を書く本人の意志にある.大学で学んだことを使い,自分なりに研究し,その成果を発表するのが卒論である.したがって,問題意識を鮮明にしてテーマを設定することが,卒業論文の最も重要な部分である.

㈪十分な枚数がある

卒業論文には下限が設定されているだけで上限はないから,自分が書きたいだけ書くことができる.多くの学生は下限を満たすのに四苦八苦するが,テーマ設定から主張(結論)まではっきりしてしまえば,下限を満たすことなど問題外であろう.もちろん,作文技術の問題は残るが….

㈫十分な時間がある

卒業論文の作成には十分な時間をかけることができる.3.4年次のゼミすべてが卒業論文作成の準備に当てられているといってよいから,2年近く時間があることになる.これだけの期間を有効に使えば,相当に価値ある論文が書き上げられるだろう.ただし,「2年もある」と思ってはいけない.レポートの書き方や本の要約の訓練をした経験の少ないものほど,論文を書く作業の困難さを甘くみるものである.

㈵−2 卒業論文特有の問題

㈰テーマの設定

a.問題意識を確認する
自分の現在の問題関心・問題意識を確認し,大ざっぱなテーマを列挙する.この段階のテーマは暫定的なものである.
b.テーマを具体化する
列挙されたテーマを手近な資料(テキスト・辞典やこれまでに読んだ本など)によって掘り下げながら,具体的なテーマに変換していく.この際,似通ったテーマごとにグルーピングして,自分の問題関心の特徴を理解しておくと,後の作業が進めやすい.(自分のことは知っているようで以外と知らない.こんなことに興味があったのかと驚くこともあるはず.)
c.現時点での考え方を記述する
具体化されたテーマに対する現在の自分の考え方を記述してみると,何を考え問わなければならないかが見えてくる.それには,現在の考え方で問題が解決できるのかと,自問してみるだけでよい.
d.最も面白いテーマを選択する
具体化されたテーマ(あるいはグルーピングされたテーマ群)の中で,今自分が答えなければならないと思うもの,答えてみたいもの,あるいは最も面白いと思うものを選択する.1つのテーマ群を選んだ場合,それで卒論が書けるのかどうかを考えてみなければならない.余りに大きすぎるテーマでは,1年くらいでは卒論を書き終えることはできないので,十分注意すべきである.

㈪テーマ設定に関する諸注意

a.身近なテーマを選ぶ
大風呂敷を広げたテーマではなく,身近なテーマを選ばなければならない.しかし,身近な問題ほど興味が持ちやすいとはいえ,経済学部の卒業論文である(経済学士の資格が与えられる)ことを考えれば,要求される水準もわかるであろう.経済学の論文,社会科学の論文にふさわしい形式と内容を備えておくことが最低限の条件となる.冗談半分のテーマ選びには付き合っている暇はない!
b.社会の出来事を身近に感じる
日頃から新聞・雑誌に目を通す,NHKのニュース解説を見るなどして,最近の経済問題・社会問題などに関心を持つことが必要である.アンテナを広げさまざまな方面から情報を仕入れていなければ,面白いテーマを見つけることはできない.知らなければ興味はわかないし,面白みもわからない.この点で,今までの勉強(与えられた問題にいかに早く的確に答えるかを学ぶ)から一歩前進して,研究(自分で問題を作り,自分でそれに解答を与える)へ移るのだという自覚が大切になる.
c.大いに乱読しよう
平素から読書の習慣を身につけていなければ,卒論作成の段階で大量の文献を読みこなすことはできない.手当たり次第に本を読む時期が,大学生にはあるべきだと思う.そのような経験のないものに,社会人となって大量の情報を処理することなど不可能である.
d.乱読のお勧め本
岩波新書,中公新書,講談社現代新書,岩波同時代ライブラリー,ブルー・バックス,日経新書,朝日文庫,現代教養文庫,講談社学術文庫などはお勧め.古典を読んでみたい人は岩波文庫で探すべし.
e.テーマを確定する補助的方法
テーマが漠然とし過ぎていて定まりそうにないときは,岩波新書などを大量に買い込んで乱読してみよう.自分が考えていたのとは違ったイメージが浮かび上がってくるので,強引にテーマを選定するより望ましい.
他のゼミ生と議論してみるのも,テーマ選びのヒントになる.友人達がどんな問題意識を持っているのか(あるいは持っていないのか)わかるだけでも,自分を見つめ直すチャンスになる.
f.やさしいテーマは選ぶな
単位を気にし過ぎて,卒論のテーマにやさしいものを選ぼうとする傾向が一般に見られる.このような発想から興味のないテーマを選んでは,大学生生活のすべてが無に帰す.卒論作成という創造的な行為が面白くないとすれば,創造的活動に従事できないことになる.創造的作業の面白さを味あわずに卒業するのは,諸君の将来にとってマイナス以外の何物でもない.創造は喜びである.興味優先のテーマ選びが基本である.
g.週刊誌・月刊誌・季刊誌に目を通す
週刊誌・月刊誌・季刊誌には,さまざまな立場から今日の経済問題・社会問題を論じた記事や論文が掲載されているので,可能な限り参考にしよう.新書の多くはこうした雑誌論文を集めて編集し直したものが多い.ホットな話題に現代の知識人(?)たちがどう答えようとしているのかを知ることは,日本の将来を占う上でも,自分の興味を高める上でも大いに役に立つ.
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