㈿.研究の進め方



㈿−1 テーマ設定の方法

卒業論文を作成するに当たって,学生諸君が最初に直面する困難は,どのようなテーマを研究の題材に選ぶかということである.卒業論文では,一般に自分の好きなテーマを選んでよい(ゼミによっては多少の制限があるかもしれない)ことになっているから,テーマは簡単に見つけられると思われがちだが,実はこのテーマ設定という作業はそれほど単純ではない.十分に考えられたテーマでない限り,早晩いっそう越えがたい難問を生み出すことになってしまう.そのような後々の困難に陥らないテーマ設定の方法があれば,それに越したことはないであろう.そこでテーマ設定の方法−−といっても確実な方法などないのだが−−を考えてみよう.具体的な点は第㈵部㈵−2を参照してもらうことにして,ここではいくつかの注意事項を述べておく.

㈰テーマ設定の順序

a.問題意識・問題関心を確認する.
  →漠然としたテーマを設定する
b.漠然としたテーマをいくつかの具体的なテーマに分割・変換する.
c.具体的なテーマに対する現在の自分の考えを列挙する.
d.具体的なテーマをグルーピングする.
e.問題の重要性,興味の程度を基準にして選択する.

㈪テーマ設定上の注意

a.興味が持てるテーマであること
b.身近に感じられるテーマであること
c.(少なくとも自分にとっては)重要な問題であること
ここで大切なことは,好奇心をかき立てられるほどに興味深いテーマを選ぶことである.具体的な例を挙げて,テーマ設定の順序に従って考えてみよう.
漠然と「土地問題」に興味を持っているとしよう.土地問題というだけでは卒業論文は書けないし,研究を進めることもできない.研究の材料が多すぎるからである.そこで土地問題に関連する具体的なテーマ(サブテーマ)を列挙する.例えば,
a.地価の推移
b.地上げの実態
c.土地政策の変遷
d.地価決定の理論
e.地価税の効果
f.固定資産税の効果
g.譲渡益課税の効果
h.都市開発と地価
i.宅地開発と地価
j.長期営農制と生産緑地
k.借地借家法
l.相続税の効果
m.リゾート開発
といったものが考えられる.それぞれについて,自分の現在の知識からどのように考えられるかを箇条書きにまとめてみる.そして,興味の持ち方やテーマの関連性を考慮していくつかのグループに分け,暫定的にタイトルをつけておく.この場合,多少の重複があってもかまわない.例えば,
グループ1:a,h,i,m
国土開発計画と地価問題
グループ2:b,h,m
土地問題の現場
グループ3:c,e,f,g,j,k,l
土地政策の効果
グループ4:d,e,f,g
地価決定の理論
といった具合になろう.この中から最も面白そうなテーマを選べばよい.

㈿−2 文献の収集・読解

文献の探し方,読み方については第㈵部㈽章で説明した.ここでは,いくつかの注意点を列挙しておきたい.

㈰文献収集上の注意

a.文献の探索・収集のルートを確立する.
研究書
辞典→テキスト 引用・参照・参考文献
論文
b.関連のある文献はすべて拾う.
c.関連のない文献は捨てる.
d.重要文献を見落とさないように,常に欠落文献の補充に心がける.

㈪文献読解上の注意

a.自分なりの読み方を確立する.
下線の引き方,余白の使い方,メモのとり方などを工夫する.
メモ・要約の作り方は『書き方』㈽−5,㈽−6参照.
b.部分と全体を同時に見る.
常に部分と全体の関係を念頭に置いて読む.
c.正確に内容・論理を把握する.
d.研究の流れと論文の流れの両方に目配りする.
e.どこまで明らかにされたか,残された問題は何かに注目する.
A氏がB氏の結論・主張に異議を唱えているとき,なぜそのようになるのかを,両者の用いた仮定・論理展開・事実認識・データなどを対比させて,明らかにしておかなければならない.自分はどちらの立場に立つのか,あるいはどちらの立場にも立たないのか,その根拠は何かを考えておくべきである.

㈿−3 個別問題の解決

自分の設定したテーマは,細かく見るといくつもの問題から構成されていることがわかる.それらのうち,未解決の個別問題に解答を与えていく作業が個別研究である.そのような個別研究に関する注意を示しておく.
a.テーマを未解決の個別問題群として捉える.
b.各個別問題が既存の方法で解決できないかを考える.
c.適用可能な他の方法はないか探してみる.
d.新しい概念を作って解決の方向を探る.
e.必要な追加的データ・文献を収集する.

㈿−4 研究成果の位置づけ

個別問題に対する自分なりの解答・結果,さらにその全体としての自分なりの結論が既存の研究とどの点で異なるか,独自性はどこにあるか,なぜそのような結果が得られたか,などを明確に認識しておく必要がある.その際の注意点は次のようになろう.

㈰自分の結果の正当性を考える.

a.仮定・前提条件は受け入られやすいか.
b.仮定が他の研究より強いか弱いか.
c.使用したデータは適切か.
d.結果を導く方法は適切か.
e.論理の飛躍はないか.

㈪テーマ全体の中での位置づけを考える.

a.他のサブテーマでの結果と矛盾しないか.
b.他の箇所での仮定・前提条件と対立しないか.
c.全体としての結論に占める役割は何か.

㈫既存の他の研究との比較を行なう.

a.既存研究の結果に包接されないか.
b.既存研究の結果を特殊ケースとして含むか.
c.既存研究とは独立か.


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