㈸.卒業論文の作成



繰り返し述べたように,研究と論文作成は異なる作業であるが,研究は論文作成に先行する.しばしば自分の結論が見えないまま論文執筆を始める学生に出合うが,そのような学生はすぐに困難に直面する.自分が何を書きたいのか,主張すべき結論は何なのかがわからなくなってしまうからである.一応の研究が終わり,個別問題のそれぞれに自分なりの解答が与えられないうちは,けっして論文作成の作業に入ってはならない.ここでは,すでに研究が終わったとして,論文作成段階で直面するかもしれない困難について考えてみたい.

㈸−1 全体構成の練り方

研究が終わったからといって,いきなり原稿用紙に向かってもよい卒業論文を書くことはできない.不特定多数の読者を相手として説得的な論文を書かなければならないのだから,十分な準備作業が必要である.最初の準備作業が,相手に自分の結論・主張・意見を受け入れさせるように,論文全体の構成を考えることである.これに関する注意点を列挙しておこう.

㈰テーマ全体の問題意識を明確にする.

a.なぜ自分の設定したテーマが重要なのか.
b.なぜいまそのテーマを扱うのか.
c.どれだけ広がりのあるテーマか.

㈪全体の結論を明確にする.

a.自分の導いた結論は何か.
b.その結論からいえる主張・意見は何か.
c.結論の一般性はどの程度か.

㈰最適な論理展開の方法を考える.

 

 

           サブテーマ → 結果(解答) 

   テーマ     サブテーマ → 結果(解答)     結論

  (問題意識)   サブテーマ → 結果(解答)

           (問題群)

             論理展開の方法

 

㈸−2 章の立て方

全体の構成が練り上がったら,次の準備作業は章立てを考えることがある.サブテーマや個別問題はテーマ全体から見て比重の違いがあるだろう.したがって,全体構成と同時に章立てができ上がるわけではない.章立てを考える際には,次の諸点に注意する必要がある.

㈰個別問題群(サブテーマ群)をグルーピングする.

問題解決方法の類似性,問題の親近性,結果の補完性などを考慮して,個別問題群をグルーピングする.その際,同程度のボリュームになるよう配慮する.

㈪各グループの問題を定式化し結果を適切に表現する.

各グループのサブテーマ群を同一の問題として定式化し,対応する結果を適切に表現し直す.

㈫定式化された問題から結果までの論理展開を明示する.

問題から結果までの論理の流れを箇条書きにする.箇条書きにしてみると,論理の違う問題を同一のグループにいれていないかどうかが確認できる.

㈬各グループを1つの章として章題をつける.

問題の定式化から結果までの展開にふさわしいタイトル(章題)をつける.

㈭各章をいくつかの節に分割する.

論理展開の流れの中で自然に分割できるところでいくつかの節に分割する.

㈮必要 があれば各節をさらにいくつかの項に分割する.

㈸−3 文献の利用法

研究段階での文献の利用法については『レポート・卒業論文の書き方』㈽章で述べた.一流の文献を探し出して読む必要があることを強調しておいた.ここでは,不可欠な文献の整理(探索・読解・要約)は一応終わっているとして,論文作成に当たってどのように利用したらよいかを考えよう.

㈰文献の種類

卒業論文の全体構成,章立て,各章の大まかな内容が決まった段階で,これまでに読んできた文献を3つに類別する.
a.論文の中で直接に利用あるいは言及する文献
→引用文献,参照文献
b.論文の中で間接的に利用・言及する文献→参考文献
本論の展開とは余り関連を持たないが,テーマに関する重要文献なので,注などで言及する文献
c.直接的にも間接的にも利用しない文献
せっかく読んだ文献を利用しないのはいかにも残念だが,無理して利用しようとすれば,論理展開が混乱してしまい,説得力に欠ける論文になってしまう.

㈪文献の配置

直接に利用・言及する利用文献・参照文献は,別の観点からさらに3つに分類できる.
a.自分の結論・主張を補完する文献
b.自分の結論・主張を対立する文献
c.必要なデータを提供する文献
a,cに属する文献は論理展開の中で直接利用することになるが,bの文献は結果の評価や問題の位置づけを行う際に利用する.本論の同一箇所でaあるいはcに属する文献が複数関係することもあるが,その場合は後の展開に照らして最も適切なものを引用文献・参照文献として本文中で言及し,他は注で言及する.
bに属する文献の検討は,自分の結論・主張の正当性を強調する上で欠かせない作業である.本論のどの部分にこの記述を割り当てるかで論文のインパクトは異なってくる.論文全体の流れの中で最も適切な場所に配置しなければならない.


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