Attosecond and Ultra-fast spectroscopy
レーザー量子物理研究室(新倉研究室) 先進理工学部 応用物理学科
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[解説スライド]複素数の電子波動関数の可視化
Phys.Rev.A106, 063513 (2022)
プレスリリース[アト秒レーザーによる高分解能での複素数の波動関数の可視化に成功]
Visualizing Complex Electron Wavefunction Using High-Resolution Attosecond Technology
日本経済新聞[波動関数を可視化]
※研究成果のpublicityのため、open accessにしています。open access料の約36万4千円(2675USD)のうち、
大学から論文掲載補助として、一人年間24万円まで補助されます。
研究装置にお金がかかるため、残りの12万円ほどは「私費(by新倉)」です。
※「私費」のロゴは、岡山大学の須藤雄気教授にインスパイアされたものです。
サイエンス誌掲載の実験などもここで測定。(早稲田大学西早稲田キャンパス51号館B1-19新倉研究室)
"Coherent imaging of an attosecond electron wave packet",
D.M.Villeneuve, P. Hockett, M.J.J.Vrakking and H. Niikura , Science 356, 1150 (2017)
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Congratulations !!
for Dr. Anne L'Huillier, Dr. Ferenc Krausz and Dr. Paul Corkum
Wolf Prize in Physics 2022 ウルフ賞 物理学部門
"for pioneering contributions to ultrafast laser science and attosecond physics"
☆ウルフ賞などについての紹介が掲載されました。
日経産業新聞2022年6月8日「アト秒レーザー」広がる応用 日本の人材・技術力光る
カナダのCorkum先生のところで、アト秒科学の構築に貢献したものとして、最初に紹介されています。
また、最近の研究成果についても紹介があります。
オンライン版は日本経済新聞(有料会員限定の記事)の6/9の記事にあります。
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☆アト秒科学 について(かんたん解説)
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研究の目的と概要
本研究室では、アト秒レーザー光や高強度超短レーザー光を用いて、原子や分子の電子波動関数のイメージング法
の開発や、新規な量子制御法の開発などを行っています。
アト秒とは時間のスケールで、1アト秒は10のマイナス18乗秒になります。1980年代半ばに数フェムト秒(1フェムト秒=1000アト秒)のパルス幅を
持つレーザーパルスが開発されて以来、2000年になるまでアト秒の時間領域での測定は困難でした。2001年〜2002年に新たな方法論が確立され、
21世紀はアト秒の時代となっています。(アト秒科学についてはこちら)。フェムト秒時間領域では、分子の構造変化が測定の対象でしたが、
アト秒の時代には分子の構造変化よりも速い時間スケールで、電子波動関数が
どのように変化するのかをイメージングすることが可能になります。
アト秒科学の方法論には主に二つの方法があります。一つは「高次高調波」と呼ばれる極端紫外〜軟X線の
ザー光を用いる方法と、
もうひとつは高強度レーザー電場中における電子の
「再衝突過程」を利用する方法です。これらの方法をベースに、
新規なアト秒時間領域の測定の方法論を構築することで、
今までは「見えなかった」量子物理の世界をイメージングし、
波動関数の観点から様々な反応や物質現象を解き明かすことが目的です。
特に、アト秒科学は「単に測定の時間分解能が向上した」というだけではなく、
電子の「位相」情報を測定する道を拓きました。
最近では
・アト秒レーザーを用いた「位相分解」電子波動関数イメージング
・高強度キャリアエンベロープ位相安定化レーザー、高効率オプティカルパラメトリック増幅の開発
・再衝突電子を用いたアト秒分子軌道変化の測定
等を行っています。
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キーワード
アト秒物理・再衝突電子・高次高調波・極端紫外レーザー・キャリアエンベロープ位相安定化
分子軌道イメージング・コヒーレント量子制御・化学反応動力学・電子波動関数・電子の位相測定
Attosecond physics, Re-collision electron, High-harmonic generation, Extreme ultra-violet
Carrier-envelope phase stabilization, Molecular orbital imaging, Attosecond coherent control,
Chemical reaction dynamics
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・経歴は こちら
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・研究紹介
[解説スライド]複素数の電子波動関数の可視化
研究紹介ポスター
アト秒位相分解波動関数マイクロスコープ
(Attosecond phase-resolved wavefunction microscope)
総説 電子波動関数の直接イメージング法の開発
総説「再衝突電子によるアト秒電子運動の計測 分光研究60, 219 (2011).
"アト秒科学の最先端で分子の中の電子の挙動を描き出す" 知の共創 研究者プロファイル
・プレスリリースなど
アト秒レーザーによる高分解能での複素数の波動関数の可視化に成功 2022.12.27
アト秒レーザーで光と原子の位相を分離した測定に成功 2021.12.02
アト秒レーザーによる新たな量子制御測定と計算による波動関数イメージがあります。2020.6
電子波動関数の可視化 日刊工業新聞2017年6月16日
日本未来館のブログで紹介されました。
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・主な発表論文リスト
・研究室の装置系 詳細
キャリアエンベロープ位相が安定化した高強度レーザーシステム(max 10.1 mJ/pulse , 1KHz, 790 nm, 35fs (2018.12.16))
を中心に
アト秒高次高調波(HHG)発生装置・高強度数サイクルレーザーパルス(5fs)発生装置・
アト秒時間分解・運動量分光装置
(Velocity Map Imaging)等を開発し、測定に用いています。
これらはクリーン度300(実測)、0.1度単位で温度制御された
クリーンルーム内に設置されています。
測定装置の安定度が重要ですので、高精度の安定化電源や厚さが60cm以上ある
光学台等を用いています。
・TOPICS-----------------------------------------------------------
1. アト秒科学の発展史(再編中)
☆かんたんに?まとめました。
アト秒科学かんたん解説
アト秒科学は、単にフェムト秒(高強度)科学の延長ではなく、
どのようにアト秒パルスを発生・測定し、アト秒での現象を測定するのかという新たな概念とアイデアにより
発展してきました。すなわち、フェムト秒レーザーのパルス幅を従来どおりの手法の延長で短くしたり、また高強度化したりした
ということではなく、新たな概念の創出によって成し遂げられたものです。
筆者がカナダCorkum研究室に滞在しているときに、アト秒へのブレークスルーが行われました。
そこに10年ほど滞在した筆者の体験も含めて、
その自家版・発展史を記したいと思います。
☆随時、加筆修正,ref.の追加等を行います。
Nature milstonesのアト秒科学についての記事
Nature Milestones: Photons
Into the attoworld
Niikura et al., Nature421, 826 (2003)がOriginal research papersとしてあげられています。
これは「分子の構造変化(振動波束運動)」をはじめてアト秒の時間分解能で測定したものです。
2. 高校生向け電子のひみつ改訂版
大学では「電子が核のまわりを回る」というモデルではなく、「電子がそこに存在する」という「分布」
で表します。その分布を表す関数を「波動関数」と言います。さらに、「電子は粒でもあり波でもある」
という性質があります。アト秒レーザーを用いることで、
・電子は粒として観測され、それが集まると波動関数の
イメージになる
・電子の粒ひとつひとつの位相を測定することが可能である
位相を区別する測定
ということが、わかります。
☆なお、上の方の動画ではカメラが斜め横を向いています。左斜め上〜右下が、レーザーの偏光方向です。
pdfファイルの図は90度回転させたものです。下の方の動画では、レーザーの偏光方向は上下です。
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・学部生向け 参考書など:
・過去のプレスリリース
2013年1月8 日経産業新聞 日本学術振興会賞、早大・新倉氏ら24人に授賞決定。
2011年10月10日 朝日新聞 「電子の一瞬、切り取る光 1秒の100京分の1「アト秒」」
2011年10月7日 日経産業新聞 分子の電子雲、動き捕捉、早大など技術開発――化学反応の機構、解明期待。
・研究室メンバー:(2022年度)
教授 新倉弘倫 CV
学部 4名
・共同研究者等
カナダ国立研究機構・オタワ大学 David Villeneuve 博士、Andrei Naumov博士、Paul Corkum教授
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連絡先:
169-8555
東京都新宿区大久保3-4-1
早稲田大学 理工学術院 先進理工学部 応用物理学科
51号館6階07B室 新倉弘倫
niikura (at) waseda.jp
TEL: 03-5286-2982
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教授室 51号館6階07B室
学生室 51号館6階07A室
実験室 51号館B1階19室

※ここに研究室があるわけではありません。(左:レイクルイーズ、右:カムイ)
電子の分布はこんな風に、ぽつぽつとして目で見えます。