平成12年の余暇市場の概況
 
 平成12年の余暇市場は84兆9,570億円であり、平成11年の85兆5,670億円から0.7%縮小した。同時期の国民総支出と民間最終消費支出の伸び率は、それぞれ0.0%、マイナス0.6%であるのに対して、余暇市場は若干マイナス幅が大きい。
 市場全体をみると、多くの業種・業界で売上げを減らしているが、特定の商品・サービスには明るさもみられる。また、市場が低迷していても全ての企業が落ち込んでいるわけではない。むしろ、昨今の激しい競合のなか、勝ち組と負け組の2極分化がさらに進行し、強いものだけが他を淘汰して生き残る“一強百弱”ともいえる傾向がでてきている。
 各分野で生き残りのために低価格化が極限まで進み、一部には数量景気もみられるが、もはや需要を充分に喚起できない悪循環、すなわち“デフレスパイラル”の様相が強まっている。
 いくつかの業界では、いぜんとして供給過剰で“需給ギャップ”がさらに広がっている。消費者が心から求めている商品・サービスが供給されない、旧態依然としたレジャーは飽きられはじめており“需給のミスマッチ”も広がっている。                       
 
 部門別の市場動向の概要は、以下のとおりである。
 
(1)スポーツ部門
 マイナス2.9%と落ち込みが大きい。若干の回復基調はみられるが、多くの市場がマイナス成長である。用品市場は、大型小売店の出店ラッシュがあったが、シドニー五輪効果はなく低調であった。ゴルフ用品、スキー・スノーボード用品は近年の低迷から脱し、若干プラスとなった。トレッキング・ハイキング用品の人気は続いている。一時ブームになったキャンプ用品や釣具の落ち込みがやや大きい。
 サービス市場では、需給ギャップの目立つゴルフ場、スキー場の落ち込みが大きい。ゴルフ練習場、ボウリング場も、利用者の需要変化に対応しきれず、マイナス成長となっている。フィットネスクラブは、中高年層の顧客ニーズに巧みに対応し成長を続けている。
 
(2)趣味・創作部門
 全体としては0.1%増となり、用品市場で明るい材料が目立った。パソコンの周辺機器としてデジタルスチルカメラ、ビデオカメラが急成長しており、鑑賞レジャー用品のDVD(デジタルビデオディスク)、MD(ミニディスク)関連商品、テレビも売れ行きがよかった。逆に、ヒット作不在が続いた映画、ビデオソフトが大きく売上げを落とした。シネマコンプレックス(複合映画館)は供給過剰で収支は非常に厳しい。CDも売上げは落ちている。長らく議論されてきた著作物の再販売価格維持制度(再販制度)が当面存置という決着をみたことが最近の大きな話題である。
 
(3)娯楽部門
 ほとんどの分野で売れ行きが落ち込み、市場は1.0%縮小した。宝くじは、ミニロト、ロト6(ロトシックス)、スポーツ振興くじtoto(トト)の人気で売上げをのばした。パチンコは、パチンコ離れとパチスロ人気が続いているが、不正遊技機対策などの地道な努力もあり、最悪期は脱した模様。ゲームセンター離れの進行、テレビゲームのヒットソフト減少など、ゲーム業界の低迷は目立つ。公営ギャンブルは売上げ不振が続き、施行者の撤退問題にまで発展している。外食市場は、業界大手が小商圏戦略と積極出店により売上げを伸ばし、ひとり勝ち“一強百弱”の様相が強まっている。カラオケルームも同様の傾向にあるが、市場全体としては売上げが大きく落ち込んでいる。
 
(4)観光・行楽部門
 全体としては1.1%市場を拡大した。旅行業が市況を回復しており、海外旅行は数少ない好調な市場となっている。遊園地・レジャーランドは業績が伸びず、施設の閉鎖や買収など話題には事欠かない。もっとも、同業界ではユニバーサル・スタジオ・ジャパンのオープンや東京ディズニーシーの開業など明るい材料も多く、今後の動向が注目される。旅館、ホテルの売上げは引き続き減少しているが、既存サービスの見直しによる構造改革が随所にみられる。比較的廉価で利用できるペンションや会員制リゾートクラブは、利用者数が戻ってきており、市場規模は増加に転じている。
 
 
1.スポーツ部門
 平成12年のスポーツ部門の市場規模は、4兆9,590億円で、前年比2.9%のマイナス成長となった。
 
 スポーツ用品の消費は低迷しており、市場全体を活性化させるほど目立った商品は出てきていない。しかし、個別の企業でみると健闘しているところが増えている。
 スポーツ用品小売店の倒産・転廃業が続出しているなか、大規模小売店舗立地法(大店立地法)が平成12年6月に施行され出店規制が厳しくなった。そのため、旧法で出店可能な平成13年1月末までに、大手チェーン店の駆け込み出店が相次いだ。大型店どうしの競合は激しさを増すばかりである。
 
 アパレルを始めとする異業種からスポーツウエアやシューズへ参入し、ひとつのファッションとして消費者に受け入れられ売上げを伸ばしている。スポーツ用品専門店以外でのスポーツ用品販売も拡大している。業界全体の構造改革が求められており、一部には従来のスポーツ用品という枠にとらわれず、ファッションとしての商品販売に力を入れ、成果を上げるところが出てきた。
 
 かつてはオリンピック開催でスポーツ業界が大いに活性化したが、シドニー五輪をはじめ近年は、スポーツ用品の売れ行きにあまり影響を与えなくなっている。消費者にとってオリンピックは、身近なスポーツが発展したものではなく、あくまで観るスポーツとして受け止められているようだ。
 
 個別の用品では、ゴルフ用品、スキー・スノーボード用品、登山・キャンプ用品の市場が若干伸びているが、アウトドア志向が高まり一時ブームになった釣具はマイナスとなった。
 
 ゴルフ用品の売上げは対前年比1.1%増加した。全体的には高額商品の売れ行き不振が続いているが、人気のチタンクラブが手頃な値段まで下がってきた。メタルスパイク禁止の特需によって久しぶりに大きな動きのあったノンメタルタイプのシューズは、ほぼ需要が一巡した。
 一方、中古クラブの販売は近年好調が続いている。品揃えも豊富で最新モデルもあり、新品だと手の届かないクラブが安く手に入り、使わなくなったクラブを買い取ってもらえることが受けて、取り扱い店が続々と増えている。
 
 スキー・スノーボード用品の売上げは前年比2.3%増となった。スキー用品の売上げは低迷しているが、カービングスキーやファンスキーなどの人気が落ち込みをカバーした。ソフトスキー靴をはじめ、さまざまな技術開発が進められ、新しい用品の提案もなされているが、スキーを取りまく環境は従来からあまり変化しておらず、消費者のスキー離れは止まっていない。急成長を続けてきたスノーボード用品の売れ行きも急速に落ちている。
 
 テニス用品の売上げは前年比1.2%のマイナスとなった。売上げは伸びていないが、業界は活性化している。特にラケットは、素材や形状だけでなく、内部構造からストリングス(ガット)、グロメット(ラケットとガットの接続部)まで含めて技術開発が飛躍的に進んでいる。ICチップを内蔵して電気的に反発力をコントロールするラケットの登場など、新型ラケットの話題は多い。軽量で衝撃吸収性がよく、ボールコントロールもしやすいうえに強いボールを打つことができるという優れもので、ラケットの単価は上昇傾向にある。
 
 高年層には自然志向・健康志向の強いトレッキング・ハイキングの人気が高く、関連用品はよく売れている。しかし、アウトドア志向で一時ブームとなったキャンプ用品は売上げが大きく落ち込んでいる。釣具も売れ行きは伸びていない。
 
 その他には、地味なイメージの強かった卓球がマスコミでたびたび取り上げられ話題になり、関連用品にも活発な動きがみられた。年齢に関係なく、手軽かつ廉価で楽しめることや、非常に目を使い反射神経を必要とすることから脳を活性化するともいわれ、健康増進効果も期待されている。平成11年にブームとなったキックボードはあっという間に消費者の熱が冷めた。
 
 スポーツサービス市場は、売上げを大きく落としている。全般的に利用者数や客単価は減少傾向にあり、根本的な構造改革が急務となっている。
 
 ゴルフ場はマイナス成長が続いており、平成12年も前年比8.0%売上げが減少した。新規オープンは減っているが、依然としてコースは増えており、供給過剰で需給ギャップは広がる一方である。利用者数は増えていないため、限られたゴルファーの奪い合いは低価格競争という形で顕著にあらわれているが、低価格化も限界に近づいてきている。収益確保のために必死のコストダウンが進められているが、赤字体質はすぐには改善しない。しかし、厳しい競合のなかで、利用者を増やしたり、または前年並みを維持しているコースもあり、集客力の差は明確になってきた。
 ゴルファーはプレイ回数を減らしたくはなく、できるだけ安くプレイしたいという意識が強いため、セルフプレイの人気が高い。今やゴルフは高級・高額というイメージはなく、日常的に安く気軽にプレイできるコースが求められている。料金を安くするからサービスも省くと安易に発想するのではなく、利用者のニーズにあったゴルフ場のサービスを抜本的に見直す時期にきており、地元客の呼び込みも重要になっている。ツーサムプレイ(2人プレイ)の人気が高く、乗用カートの導入も急増している。クラブハウス、練習場等の有効利用や、プレイ料金以外の収入源の確保も模索されるようになってきた。
 
 ゴルフ練習場は前年比7.8%市場を縮小した。利用者数の減少は続いているが、落ち込みはやや小さくなっている。競合激化で低価格競争が展開されてきたが、これも限界に近づいている。個別の施設でみると勝ち組と負け組にはっきり分かれている。新設は年々減っており、閉鎖がそれを大きく上回る状況が続いている。一時は遊休地利用として持てはやされたが、より高い収益性をもとめ閉鎖するケースがあとをたたない。大型施設が開業すると、周囲の小規模施設、旧態依然とした施設が数軒淘汰されるといった状況であったが、利益が出ている大型施設でさえ、より高い収益を模索して転売・転用されるケースが目立ってきた。
 新設は、閉鎖施設の跡地を買収し、個性的な施設とサービスを打ち出し、積極的に店舗展開をはかろうとする勝ち組によるものが多い。大半の施設は打席とボールを貸すだけの経営であるが、サービス業としての認識を高め、技術の上達や健康を目的としたスクールや個人レッスンの強化、試打クラブ設置などによる用品販売や修理の充実、イベントの開催、行政とのタイアップ、サークル活動の展開、交流・休憩スペースとしての飲食機能強化が必要とされている。顧客管理の徹底によって個別のニーズを把握した上で、顧客の囲い込みをはかることも重要になっている。
 
 スキー場の索道収入は、前年比9.7%のダウンとなった。参加人口も活動回数も落ちており、入場者数の減少に歯止めがかからない。赤字経営が続いて、経営権の譲渡、休業、廃業も出始めた。リフト券や食事などの消費は、パック商品として低価格で販売される傾向がますます強くなっている。若者の消費形態にあわせて冬季限定のコンビニエンスストアをオープンさせたところもある。入場者に占めるスノーボーダーの比率は年々増加し、半数近くになっている。それに対応して、スノーボードのアトラクションも積極的に整備されるようになった。
 顧客獲得のために、ショートスキー(ファンスキー)、クロスカントリー(歩くスキー)、スノーシュー、ソリ、タイヤチューブ、スノーモービルなど、多様なスノースポーツが楽しめるようになってきた。今後は、スノースポーツをしなくても楽しく過ごすことができるスノーリゾートとして、自然や景観、地域の文化を打ち出すなど、独自の魅力を打ち出していくことが重要になっている。
 
 ボウリング場の売上げは前年比2.5%落ちたが、近年続いた落ち込みはようやく底入れとなっている。新規オープンはまだあるが、経営不振による閉鎖がそれを上回っており、施設数は2年連続で減少した。収入が伸びない中での経費削減努力が実り、ある程度の収支が見込める体質に改善されつつある。だが、有効な集客対策が見あたらないことが業界の悩みとなっている。
 「ラウンドワン」は積極的な多店舗展開により近年急成長を続けており、厳しい業界でひとり勝ちの様相を呈している。他のレジャー施設や買物・飲食などに利用できる共通ポイントカード「クラブネッツ」の全国展開も開始している。加盟店のポイントシステムとメールなどでの情報配信、ボウリングのスコアランキングなどのサービスを組み合わせており、顧客情報を詳細に把握することができるメリットは大きい。
 ボウリングは、ゲーム感覚で気軽に運動しながら、子どもから高齢者まで楽しめるスポーツである。そのため、清潔なプレイ環境の整備はもちろんのこと、バリアフリーへの対応やゆっくりくつろげる飲食施設の併設など、誰にでも利用しやすい快適な施設づくりが求められている。
 
 テニスクラブ・スクール市場は、前年比2.0%縮小した。会員制クラブの売上げは年々減少しており経営は苦しいが、スクールは収益性が高い。クラブでも収益確保のためにスクールを併設するようになり、その比重は高くなっている。スクール専業も増加を続けており、そのほとんどはインドアコートである。平日は高齢者や中年女性の固定客が多く、利用は比較的安定している。高齢者向けのスクールは、健康重視の軽いメニューで、のんびりゆったり、短い時間のレッスンが特徴である。スクールの仲間が親睦をはかるれるよう、クラブハウスに囲碁・将棋等を設置したり、休憩スペースを充実させるところもある。
 今後は、地域の総合スポーツクラブ化も視野に入れ、テニス関連事業へ多角化していくとともに、顧客管理の徹底による個別ニーズへの対応が期待される。また、公共テニスコートの拡充がこの業界の売上げに大きな影響を与えていることから、こうしたコートを活かして民間がスクール等のサービスを運営する、公設民営方式での有効活用が期待されている。
 
 フィットネスクラブの市場規模は、前年比1.3%増と若干ではあるが着実な成長を続けている。既存店は伸び悩んでいるが、新規開業が増加しており、会員数、延べ利用者数ともに伸びている。大手クラブから始まった、施設と料金のバランスの適正化、新しい会員制度の導入、営業時間の延長、プログラムの多様化、宣伝・営業の強化などが、中小のクラブにも広がった。営業権譲渡、売却、買収、合併、提携、資本参加など、業界再編の動きも目立っている。利用者は会費が安いだけで入会することは少なく、自分に本当に必要な空間とサービスを求めるようになってきた。グループエクササイズの人気にともなうマシンジムの大型化や、スタジオの大型化・複数化、癒し機能としての温浴施設の設置、会員交流を促進するリラクゼーション空間の拡充などがみられる。
 やや複雑になってきた会員制度を整理統合してシンプルにする動きがみられるが、一方で1回当たりの利用料を採用したフレックス会員を導入する施設もあらわれ、利用者を幅広く集めるとともに退会を防ぐ効果も発揮している。ここでも、比較的時間に余裕のある高齢者や中年女性の参加が旺盛である。この層を意識したプログラムが多数、開発・導入されており、丁寧な接客、清掃の徹底、施設の改善など、きめ細かい配慮がなされるようになった。会費収入の低下を付帯収入でカバーしようという動きが顕著になっており、個人トレーナー、ダイエットプログラム、ストレッチ・マッサージなどの有料プログラム販売は伸びている。サプリメント(機能性補助食品)やミネラルウォーターの販売や飲食の売上げも伸びている。
 公共のフィットネス施設による民業圧迫に対し、今後の新設増設の禁止、現在ある施設の独立採算による低水準施設の早期廃止または民営化が、平成12年5月に閣議決定され話題になった。公設民営方式による運営も注目されている。
 
 スポーツ観戦市場では、プロ野球が、巨人戦のテレビ視聴率低迷で話題になっており、セリーグの入場者数は若干落ちたが、逆にパリーグの入場者数は伸びており、総じて横ばいとなった。Jリーグは、J1の試合が入場者を減らしているのに対して、マスコミの注目度が高まったJ2が大きく入場者を増やしており、トータルの入場者数は増えている。市場規模はまだ大きくないが、多様な観戦スポーツのメニューが供給されるようになっており、観戦スポーツファンの裾野は広がりをみせている。
 
 
2.趣味・創作部門
 
 平成12年の趣味・創作部門の市場規模は、11兆8,270億円であり、前年比0.1%の微増となった。
 
 カメラは大きく市場を拡大した。デジタルスチルカメラが大きく伸びて、これまでのスチルカメラの市場規模を上回った。ズーム機能付きで300万画素以上の高画質タイプが人気を呼んでいる。また、おもちゃデジカメと呼ばれる機能を絞り込んだ廉価品も、初心者の入門用、既存ユーザーの2台目として、まさにおもちゃ感覚の手軽さが受けている。
 一眼レフカメラは全体的にはふるわないが、中級クラスで人気商品が出たことや、往年の名器の復刻版が人気を呼び話題になった。中高年層のカメラファンの需要は根強く、中古市場も活性化しているという。
 
 デジタルビデオカメラも大きく売上げを伸ばした。小型・軽量で、液晶モニター付きのデジタルタイプが売れ筋で、単価は下がっているが販売台数の伸びがそれを大きく上回った。子育て記録だけでなく、パソコンに画像を取り込んで楽しむパソコンユーザーに受けている。機能的にデジタルスチルカメラとの境界が薄れてきており、現在は両方ともユーザーに受け入れられているが、今後はある程度のすみ分け、または統合が必要になってくるであろう。
 
 音響機器製品では、MD(ミニディスク)関連商品の販売台数が大きく伸びている。MDは、据え置き型からラジカセ、ポータブルオーディオ(ヘッドホンステレオ等)まで、録音再生のできる記録媒体のスタンダードになった。特に、ステレオセットは、MD内蔵タイプの人気で販売台数が過去最高を記録した。
 
 テレビは、シドニー五輪効果やBSデジタル放送開始で販売台数を伸ばした。平成13年4月の家電リサイクル法施行に対する駆け込み需要もあって市場は活性化した。特にVTR内蔵型、フラット画面タイプの人気が高い。
 
 VTR市場では、VHS方式の据え置き型の需要がテレビ内蔵型にかなり流れているが、それを大きく上回る勢いでDVD(デジタルビデオディスク)プレーヤの販売が伸びている。パソコン用のDVDドライブも大きく伸びているが、はやくも低価格化が進行している。
 
 DVDソフトも急速に販売を伸ばしている。価格が下がっており、特に音楽ソフトの動きがよかった。家庭用ゲーム機でも視聴できることが普及に拍車をかけており、パソコン販売との相乗効果も発揮している。
 ビデオソフトは、これまでレンタルの市場規模の方が大きかったが、年々セルが拡大してついにレンタルを上回った。レンタル料金の低下は続いており、貸出本数も伸び悩んでいる。映画はレンタル、アニメと音楽はセルの構図ができあがりつつある。
 
 近年販売が低迷しているCDは、引き続きマイナス成長となった。取り扱いがやや不便であった8センチシングルがマキシシングルといわれる12センチ盤に急速に移行した。ミリオンセラーは相変わらず多く、それ以外の売上げが伸びない傾向は変わっていない。 
 インターネットによる音楽コンテンツ配信が始まったが、まだ目に見えた成果は上がっていない。コンテンツが少なく、ダウンロードに時間がかかるなど課題は多い。無料配信サービスのホームページが登場し大きな話題になったが、著作権法上の問題は多い。日本のミュージシャンがアジア各国に進出し、人気が高まっており、音楽ビジネスのグローバル化は著しい。
 平成13年3月、長らく議論になってきたCD、書籍、雑誌、新聞などの著作物の再販売価格維持制度(再販制度)が当面存置ということで決着したことは業界の大きな話題となった。
 
書籍・雑誌の販売額はマイナス成長が続いている。読者の読書量が減っているわけではないが、安く読みたいという欲求は強まっており、新古書店と図書館利用の拡大は業界でも無視できなくなっている。買った本への思い入れや、個人の蔵書という感覚は薄れてきているようだ。また、本に対する読者の目はますますシビアになり、どうしても読みたいもの、すぐに役立つものでないとなかなか購入しなくなっている。世間の話題に乗り遅れないようにと、一部の話題本に売れ行きが集中する傾向が強い。
テレビやインターネットで情報が簡単に手に入るため、情報性の高いもの、特に週刊誌の売れ行きに大きな影響を与えている。雑誌の定期購読性は落ちており、話題の特集記事があればスポットで買われるため、売れ行きの振幅が激しいのが最近の特徴である。雑誌は創刊ラッシュがあり、なりふり構わない出版活動が展開されているが、いずれも売れ行きはよくない。
 インターネットによるオンライン書店は開店ラッシュとなった。在庫情報が確認でき、しかも早く手元に届くことから利用は広がっている。特に専門書は、書店の棚にならべられないものでも読者に提供できるため、オンライン書店で売れる比率が高く、ニーズの掘り起こしにも役立っている。オンライン書店は増えているが、一般書店との機能的なすみ分けが定着するのはこれからといえる。
 
 民間カルチャーセンターは、施設数が微増であるのに対して、講座は多様化し講座数は大きく増加している。民間センターどうしだけでなく、行政の公共講座や大学の公開講座との競合も激しい。「株式会社カルチャー」は堅実経営で着実に店舗を増やしている、数少ない元気な企業である。財政悪化で行政の生涯学習離れが進行し、公設民営方式の講座提供が徐々に増えている。NPO(特定非営利活動団体)や市民団体により、住民主導の生涯学習講座を提供する動きがでてきた。運営はボランティアが担い、受講料、講師料、会場費は無料だという。
 昨今の受講者は、受講する講座の数を減らし、少しでも受講料の安い講座を選び、短期の講座を好み、よく選んで締切りギリギリまで申込みをしないという特徴がみられる。高齢の受講者も増えているが、多くの民間センターでは受講者の欲求に対応できず、センターの特長も乏しい。一部には、地元顧客の需要にあわせたきめ細かな講座を敏速に取りそろえることで、商圏内の顧客をつかみ、毎年大幅に売上げを伸ばしているセンターもある。歴史・文学散歩、スケッチ、写真、登山、自然教室、食べ歩き、海外ツアーなどの教室外講座にも力を入れるようになった。
 
 映画の興行収入は前年比6.6%のマイナスとなった。この市場は大ヒット作の有無で浮き沈みが大きいのが特徴であり、平成12年は大ヒット作がなかったため、入場者数は2年連続で減少した。シネマコンプレックス(複合映画館)は建設ラッシュが続いており、今後もさらに増え続けて3000スクリーンも間近となっている。シネコンどうしの客の奪い合いは激しさを増しており、収支は厳しくなっている。
 洋画の単館ロードショーやアジア作品の増加などにより、封切本数は急増している。家庭用のデジタルビデオカメラで撮影した映画が大ヒットしたことも話題になった。映像ソフトのデジタル化が進むなか、映画の撮影システムが大きく変わる可能性を秘めている。邦画の人気作品はアニメが中心となっており、邦画の健闘が期待されるところである。アニメ映画のヒットにみられるように、テレビ番組、ゲーム、本、グッズなどとのメディアミックスが顕著であり、世界マーケットを視野に入れた展開がなされている。
 
 音楽、演劇、スポーツなどの興行市場(チケット販売)は、5年ぶりに増加に転じた。市況は回復基調にあり、特に演劇が着実に伸びている。
コンピュータ・チケッティング流通では従来とは異なったビジネス展開による新興勢力の台頭が目立っており、業界は久しぶりに活性化している。大都市型のビジネスとしては限界に近づいているが、地方の中小都市においては鑑賞ニーズはあるにもかかわらず、興行の採算性への懸念から供給量が少ないのが実状であった。これを有望マーケットとみて、新興勢力はいち早く中小都市での販売を急速に拡大している。また、無店舗販売、チケット販売価格変動制、顧客へのサービスチャージ導入など、これまでのサービスシステムを刷新した展開が始まり、今後の動向が注目されている。
 インターネットや携帯電話によるチケット予約販売は伸びている。しかし、興行主催者も独自のチケット販売を強化しており、インターネットでの販売も行っている。既存販売店の売上げを減らすことができないため、取り扱っているチケットは一部でしかなく、操作性やセキュリティの問題もあって急速に普及するまでには至っていない。
 携帯電話やICカードを活用して、チケットレスで予約から決済、入場までを全て行うシステムの開発が進められているが、コストと運営などの課題は多い。当日券の需要もあるが、その流通基盤の整備はなかなか進まない。これまでチケット購入者の顧客データはあまり活用されてこなかったが、それをもとにした個人の嗜好にあった情報サービスを提供する動きがでてきた。
 
 
3.娯楽部門
 平成12年の娯楽部門の市場規模は、57兆1,040億円であり、前年比1.0%のマイナス成長となった。
 
 パチンコ(貸玉料)は前年比0.8%増となった。パチンコ店の倒産は依然として多いが、最悪期は脱したといわれている。昨今はパチンコの売上げ不振をパチスロの活況でカバーしている状況が続いている。パチスロはそこそこの射幸性が維持されており、マニアックなファンに支えられている。厳しい状況のなかでも、業界大手「ダイナム」「マルハン」などは、効率経営により着実に収益を確保しており、ひとり勝ちの傾向がでてきた。
 今後は、平成7年6月改正以来の遊技機規則(国家公安委員会規則第四号)改正が予定されている。画一化した遊技機のバリエーションを増やすことが可能になり、離れていったファンの呼び戻しが期待されている。
 この規則改正には不正遊技機対策も盛り込まれるといわれている。不良客による遊技機の電子基盤の不正改造はあとを絶たず、また営業者側の不正もなくならない。これを絶滅させなければファンがさらに離れていく恐れがあるため、業界一丸となって不正遊技機対策に取り組んでいる。不正遊技機を買わない、売らない、作らないの3ない運動に加えて、疑わしきは即排除を加えた3プラス1運動が提唱されている。「パチンコ・パチスロ産業フェア2000」でも、不正行為の撲滅を強く訴えかけ、来場者の関心を引いた。
 一方、パチンコの消費税は本来遊技料金に課税されるべきあるところを、貸玉料金4円、100円25個貸しで内税処理されてきた。業界では、税負担の明確化のために外税処理の採用を働きかけ、本体価格プラス消費税で100円24個貸しとすることが認められたことが話題になった。
 プリペイドカードシステムには近年新規参入が相次ぎ、競争は激化している。新規参入企業のカードは、ランニングコストが安い上に、着席したままで使用可能、高額カードを発行可能、貯玉再プレイ機能を導入、ポイントカード機能を付加、顧客データ管理機能など多彩なメリットを備えており、順調に導入店を増やしている。
 
 ゲームセンターの市場規模は、前年比8.3%の大きなマイナスとなった。「ダービー・オーナーズ・クラブ」が久しぶりに大ヒットとなったが、家庭用ゲーム機の高度化もあってゲームセンター離れが加速している。平成12年6月に施行された大店立地法の猶予期間である平成13年1月までの駆け込み出店により、大型ショッピングセンター併設店が空前の開店ラッシュとなったが、これまで比較的安定していたこのタイプの店の売上げも落ちている。集客のために、ゲーム大会等のイベント開催、キッズルームの併設、飲食施設の拡充、他の集客施設との複合など、さまざまな対策が行われている。ゲームセンター業界から、インターネットカフェやネットワークゲーム・カフェに参入するケースがみられる。
 ゲームセンターは、手軽で身近なレジャーとして定着しているが、マニア受けする高度なゲームに走りすぎ、地域に根ざしたコミュニケーションの場としての機能が薄らいでいる。今後は、人と人が触れ合い楽しむ機能をさらに高め、発展させていくことが期待されている。ゲームセンター間を光ファイバーで結び家庭用ゲーム機を端末として利用し、ゲームやアニメを配信しようとする取り組みもでてきた。
 
 テレビゲーム・ゲームソフト市場は、前年比8.9%縮小した。平成12年3月から発売された「プレイステーション2」の話題性が高く、ハードウエアの売れ行きは非常によかったが、ソフトは低調であった。平成13年3月に発売された携帯ゲーム機「ゲームボーイアドバンス」も売れ行きは好調だが、ソフトには大ヒットが出てきていない。トータルの発売タイトル数は増えているが、ミリオンセラーのタイトル数が減っており、ソフト販売の落ち込みは大きい。急成長を遂げてきたゲーム業界は曲がり角にきているといわれている。
 よりリアルな映像表現が追求され、コンピュータグラフィックを駆使した作品が増えているが、その多くはコスト増で収支は決してよくない。平成13年3月に「セガ」が「ドリームキャスト」の製造を打ち切ったことは大きな話題となった。テレビゲームのハード事業から撤退することで、他社を含めたゲームソフトを多角的に供給していく方針である。
中古ソフトの販売が著作権法に違反しているかが問われた訴訟で、平成13年3月に合法の判決がでた。ソフトメーカーには無視できないほど中古市場は拡大しており、今後は許諾料等のルールづくりが待たれるところである。
 平成13年1月からは携帯電話にダウンロードしてプレイできるゲームコンテンツサービスが始まり、ソフト開発費の高騰とそれに伴うリスク拡大に対して、携帯ゲーム機や携帯電話を含めたマルチプラットホーム化の動きは顕著になっている。強者「プレイステーション」に対抗して、新型ゲーム機「ゲームキューブ」と「Xボックス」が平成13年中に相次いで発売される予定であり、今後の動向が注目される。
 かつて子どもであったゲームユーザーが大人になり、ユーザーの年齢層は上昇している。その一方で子ども達のテレビゲーム離れが進んでおり、カードゲームを超える人気を獲得できていない。今後は、細切れの時間の中で、コミュニケーション性を重視しながら楽しめるソフトをいかに提供できるかがポイントといわれている。
 
 公営ギャンブルの売上げは、長らく厳しい状況が続いており、平成12年も前年比6.2%減少した。売上げ低迷と施行者である自治体の財政悪化から、7月に西宮・甲子園競輪の撤退問題が浮上し、業界を揺るがす大きな話題になった。経費削減など経営の見直しにより何とか平成13年度は継続開催となったが、公営競技の撤退・存廃論議は各地で起きており、深刻な問題となっている。また、横浜市は、平成12年12月に「勝馬投票券発売税」に関する条例案を可決し、場外馬券売場の売上げに対する5%課税を希望しており、反対する国側と折衝が続いている。
 
 中央競馬の売上げは前年比6.1%減少し、3年連続の不振に悩まされた。テイエムオペラオーの快進撃で史上初の12億円馬が誕生したが、レースの売上げを増やすことには貢献しなかった。平成11年秋の発売開始以降、期待された「ワイド(拡大馬番連勝馬券)」の売れ行きも伸びなかった。
 だが、国際化に力を入れてきた業界としては大きく飛躍した年でもあった。国際招待競技のGTレース「ジャパンカップダート」の新設、「アグネスワールド」が日本調教馬として初めてイギリスGTで勝利、武豊騎手、蛯名騎手が海外に長期遠征し着実に勝ち星をあげるなど、競馬は世界との壁がなくなりつつある。
 施設面では、山陰地方で初の専用場外施設「ウインズ米子」や、有料の定員制場外「エクセル伊勢佐木」のオープンが話題になった。平成13年7月にリニューアルオープンする「新潟競馬場」には、日本初の直線だけの1000mコースが登場する。
 情報化への対応が積極的に進められており、インターネットの「JRA−VAN」では、競馬データをダウンロードしてレースの分析、予想を楽しめ、ファンどうしの交流に役立つ競馬フォーラムも設けている。携帯電話による「PAT方式馬券投票」も始まっているが、ファンや売上げを増やす効果まであげてはいないようだ。
 
 一方、地方競馬の売上げの落ち込みは大きい。日本競馬史上最高記録となる高配当の馬券がでたり、競走馬や騎手の記録ラッシュなどもあったが、売上増には結びついていない。ダートグレード競走の充実と、広域場間場外発売の拡大が進んでいる。佐賀・荒尾・中津の3競馬場が交流して、1本場2場外での発売体制「九州競馬」を開始し、売上げ上々の好スタートを切ったことが話題になったが、中津競馬は平成13年度には閉鎖された。
 
 競輪の売上げも前年比7.6%減少した。9年連続で売上げが落ち込む停滞ムードのなか、12年9月のシドニー五輪から「ケイリン」が平成正式種目となり、スポーツとしての魅力がアピールされた。また、4月に京王閣のメインスタンドがオープン、10月には小倉で競輪界3番目、西日本初のナイターが始まったことも明るい話題となった。ナイター競輪はこのほか、函館、平塚競輪場などでも実施されている。
 長らく懸案となってきた新番組基本構想が引き続き検討され、平成13年4月からは、番組の連続性とストーリー性を重視したグレード制が導入された。レースを、グランプリを頂点にGT、GU、GV及びFT、FUにグレード分けし、よりわかりやすく楽しい番組体系を目指したものである。迫力あるレースを提供しようと、競技規則・判定基準の改正も行われた。
 ファンサービスとしては、スピードチャンネルのチャンネル数が5チャンネルに増え、ビッグレース以外にも数多くのレースが放送されるようになり好評を得ている。平成12年5月には「KEIRIN−DataPlaza」が開設され、レースや選手、競輪場などのさまざまな情報が提供されるようになり、平成14年にはインターネット投票も開始される予定である。
 
 競艇も前年比9.0%のマイナス成長となった。10月から、住之江競艇場を皮切りに、公営競技初の3連勝式投票(3連勝単式・複式、拡大2連勝複式)が導入され、従来の4投票方式から7投票式に拡大された。特に高配当が期待できる3連勝単式(3連単)の人気が高く、入場者も売上げも大幅に増やした。先行して導入された4競艇場では今や占有率が50%を超えており、平成13年中にほとんどの競艇場で導入される予定である。
 施設面では、競艇場のスタンドが次々とリニューアルオープンし、ボートピアも競艇未開拓地に増えている。ナイターレースは半数近くの競艇場で行われ、ボートピアでもナイター場間場外が実施されている。公営競技界でいち早くインターネット投票システムを開始しており、「いつでも・どこでも・おもしろい競艇」の実現に向け、ファンサービスを向上させている。本場への集客イベントとして競艇プロレスが開催されるようになったことも注目される。
 
 オートレースは、誕生50周年の大きな節目となり、記念レースの拡充もあって、前年比5.0%マイナスと他の公営競技と比べて落ち込みが小さかった。スーパースター王座決定戦を頂点とした5G制への転換や、各場独自の企画GUレースなど、競走体系の大改革が実施された。全レースでの連単発売のスタートや、インターネットでのリアルタイムオッズの配信も始まった。
 
 宝くじの販売額は、前年比伸び率4.2%と3年連続で拡大し、1兆円の大台に近づいた。ジャンボ宝くじの売上げは軒並み落ちているが、それに代わって、平成11年10月から全国販売が始まった「ミニロト」、平成12年10月発売開始の「ロト6(ロトシックス)」が手軽さと高い配当で人気を呼んでいる。Jリーグの試合結果を予想するスポーツ振興くじ「toto(トト)」も、平成12年10月から静岡県で試験販売され、平成13年3月から全国発売が始まった。サッカーという身近なスポーツとくじの組み合わせに加え、発売当初に賞金1億円が出たことで話題性が高まり、売上げは好調である。
 
 外食産業の市場規模はほぼ横ばいとなった。既存店の売上げは伸びておらず、中小規模店の閉鎖は多いが、大手の積極的な出店が続いている。
売上げ不振に悩む店が多いなか、「マクドナルド」は平日半額商品の大ヒット、小商圏戦略による積極出店によって、ファーストフードチェーンの中でひとり勝ちの様相を強めている。今後も、駅、ホテル、銀行など集客効果の高いロケーションへの出店により全国1万店体制を目指している。
 業界売上げ2位の「すかいらーく」も、業態展開の確立と小商圏への積極出店により、売上げを大きく伸ばしている。また、外食周辺ビジネスへの展開にも熱心であり、調理品、半調理品、食材から調理人まで宅配するサービスを早くから始めており、子会社では家事代行や介護食品サービスまで行っている。
 調理済み食品販売の中食市場拡大により、外食店の食品小売店化(テイクアウトまたはテイクホーム)と、大型小売店の食品売場のイートインコーナー設置による外食店化が同時に進んでいる。
 平成12年はカフェがブームになった。それぞれの店は特色を持ちながら多様化しており、喫茶店でもレストランでもバーでもない新業態を開発した。このように、外食店は画一的な店舗展開から脱却し、地域性や文化性を取り入れた総合的な飲食サービス産業として発展していくことが期待される。
 
 カラオケルームは、年々市場規模が縮小しており、平成12年も前年比11.5%と大きなマイナス成長となった。利用者数減、客単価減、そして施設数減が続いているが、中高年層のカラオケ離れが顕著であるのに対して、若年層にはそろそろ回復傾向がみられるようになった。
 ただし、業界全体の低迷に反して、大手チェーン店「シダックス」は積極出店やカルチャーセンターなどの複合展開、飲食の拡充などにより大きく売上げを伸ばしている。居酒屋チェーンがカラオケルームを併設した新業態を展開するなど、業態どうしの競合も激しくなっている。業界最大手「第一興商」は、カラオケ機器とソフトの販売と同時にカラオケルーム「ビッグエコー」をチェーン展開しており、カラオケに関連するトータルなビジネス構築によって良好な収益を確保している。
 これまで画一的であったチェーン店の中には、「時遊館」のように、経営的な合理性は追求しながら、地域性や個性を強調する形で店ごとにデザインや運営スタイルをかえるところが出てきている。今後は、カラオケルームというコミュニケーション空間を、いかにレジャー関連ビジネスに広げていけるかが業界発展のキーとなる。
 
 
4.観光・行楽部門
 平成12年の観光・行楽部門の市場規模は、11兆670億円であり、近年の落ち込みから前年比1.1%の増加に転じた。
 
 乗用車の販売額は前年比5.5%増加した。単価は若干下がったが、販売台数は盛り返している。特にRV(レクリエーショナルビークル)の販売台数はモデルチェンジ効果で需要を喚起し、二桁台の伸びとなった。3列シートのセミキャブワゴンと、空間の広い背高タイプの小型コンパクトカーの人気が高い。
 中高齢者が、憧れの輸入車や2人乗りスポーツカーを購入するシーンもよくみられる。障害者や高齢者向けの福祉車両も年々大きく伸びており、今やニューモデルの発売と同時に福祉車両が用意されるようになった。
 高級車には通信機能が備えられ、非常時に通報できる機能や、カーナビを活かした多様な情報提供など、車の製造販売にとどまらない関連サービスビジネスが広がりをみせている。かつて主力であった家庭訪問販売から大規模販売拠点による販売に比重が移行しており、レジャー施設のように楽しい演出をした販売店づくりが行われるようになった。
 
 二輪車も市場を拡大した。高視聴率のテレビ番組で取り上げられたことで、ファッション性を求める若者のタウンユースとして見直され、特に軽二輪の売上げが大きく伸びた。250ccクラスの二人乗りスクーターに新商品が投入され、比較的高い年齢層にも受けている。
 
 遊園地・レジャーランドの市場は低迷が続き、前年比4.7%のマイナス成長となった。入場者数は、リニューアルによって若干増えているところもあるが、大半の施設では落ち込んでいる。
 バブル期の意欲的な新規参入で注目された「レオマワールド」が業績不振で閉鎖されたことが話題になり、多くの施設の経営母体である第三セクターの経営状況も非常に厳しい状況にある。平成6年にオープンした、リゾート法適用第一号の「シーガイア」も、入場者の伸び悩みと巨額の借入金で苦しんだ。九州・沖縄サミットの開催や、さまざまな経営努力もむなしく、平成13年2月に会社更正法の適応を申請したが、5月には米国の投資会社リップルウッド社による買収が発表され、外資の手で再建に向け第一歩を踏み出した。
 新設は自然公園のようなファームパーク、ペットパークが多い。既存施設では、温浴施設の併設によって中高年層に客層を拡大しようとする動きがみられる。大規模な追加投資で集客を確保するビジネスモデルに変化はみられないが、投資効果の短命化が顕著であることから、ライブショーをはじめとする低コストなソフトウエア、対人接客サービスのヒューマンウエア重視に移行しようとするところもある。
 また、近年は、商業施設の集客装置として観覧車を併設するケースが増えている。周辺のテーマパークと連動しながら、買物をひとつのレジャーとして演出しようと、大型複合商業施設「イクスピアリ」や「メディアージュ」などが続々オープンした。アウトレットモールも「御殿場プレミアム・アウトレット」をはじめ、各地に続々と登場しており、アウトレットどうしの競合も始まっている。平成13年1月にオープンした「横浜カレーミュージアム」は、飲食施設とテーマパークのスパイスを巧みにブレンドした施設が人気を呼んでいる。
 平成13年はこの業界に大きな話題が続く年となる。3月に「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」がオープンしており、9月には「東京ディズニーリゾート」の第2テーマパーク「東京ディズニーシー」がオープン予定である。「東京ディズニーランド」の平成12年の入場者数は、9月の新アトラクション「くまのプーさんハニーハント」の導入効果もあって増加している。こうした収益体質をみると“一強百弱”傾向はこの業界でも顕著である。園内では、長い待ち時間の対策として、8月からビッグアトラクションの入場時間を予約し、列に並ばずに入場できる「ファストパス」制度を導入し、利用者に好評を得ている。また、「イクスピアリ」と日本初のディズニーブランドホテル「ディズニーアンバサダーホテル」の開業などにより売上げは大きく増加している。
 
 旅行業の手数料収入は、前年比1.8%増加した。国内旅行は若干旅行者数が戻ってきたが、単価の下落が大きく、総消費額は減少している。子供連れの家族旅行と中高年層のグループ旅行が人気を呼んでいる。熟年旅行者の急速な増加にともない、目的性を高めたテーマツアーが充実してきた。長期滞在でゆとりのある旅を提供しており、高齢者や障害者向けの旅行商品づくりが本格化している。これまで発地が中心となって旅行商品が企画されるケースが多かったが、観光資源を掘り起こして活用する、地域に密着した旅行商品づくが始まった。インターネットによる販売は好調で、新規参入が多く、ネット専門の旅行会社も相次いで設立されている。
 海外旅行は、消費低迷がいわれるなかで数少ない好調な市場となっており、平成12年の海外旅行者数は過去最高を記録した。旅行単価は下がっているが、総消費額は大きく伸びている。2000年問題の影響で、年末年始に海外旅行を取りやめる人が多かったが、逆にその反動で大きく盛り返している。だが、好調な市況に反して、旅行会社は厳しい価格競争にさらされており、収支は必ずしもよくない。大手はそれぞれの特徴が出せないため、消費者ニーズとのギャップが埋まっていない。
インターネットによる旅行商品販売は拡大し、特別割引商品も数多く設定されるようになってきた。しかし、消費者がインターネットを使って直接、宿泊施設や航空券を予約購入できるようになったことで、旅行業の中抜き現象が進行し、収益低下に影響している。
 
 国内航空は、平成12年2月の改正航空法施行で国内航空運賃が自由化され、新運賃体系が4月搭乗分から続々と導入された。期間限定バーゲン型運賃(1万円運賃)、特定便割引、往復割引、事前購入割引、インターネット割引など、航空各社が独自の商品開発を行うようになってきた。これにより、今まで2倍以内に抑えられてきた運賃格差が、最大で約4倍へと広がっている。利用者には、幅広い選択肢の中から、条件にあった運賃を選ぶ力が一段と必要になっている。
 
 旅館の売上げは引き続き減少したが、ホテルは若干伸びた。競争激化で、サービスの内容やレベルの見直しが始まり、個人客に対応する、お仕着せでないきめ細やかなサービスの再構築が進みつつある。割引制度はいろいろな形で出尽くした感はあるが、泊食分離の動きが進み、文化・健康・美容などユニークな宿泊プランが続々登場している。ビジネスユースを含めて、ホテルの日常的な利用を促進しようとする動きが目立ちはじめた。
これまでの顧客囲い込みから、周辺地域を巻き込んだ飲食サービスが広がっており、さらに各種体験メニューの提供など、単なる宿泊にとどまらない幅広いレジャーサービスの提供が始まっている。
 民業圧迫が指摘されてきた公営宿泊施設(共済組合や第三セクターをのぞく)の新増改築禁止が決定されたことが話題になった。交通バリアフリー法施行を受け、バリアフリー対応が急速に進むことも期待されている。
 
 ペンションの売上げは、近年落ち込みが大きかったが、前年比2.9%の増加に転じた。営業軒数は3年連続で激減しており、単価も下がっているが、利用者数が急速に回復し、1軒当たりの宿泊人数も急増している。近年、福利厚生代行会社が急成長しており、企業の福利厚生として廉価でペンションを利用できるところが受けている。ペンション村が中心となり団体向けの体験教室を開催するところが増えており、学校の修学旅行や教育研修でペンションが利用されることが多くなっている。ペンションオーナーといっしょに自然を体験するプログラム「自然学校」が人気を呼んでいる。今後は、このような宿泊以外の新たな収益部門の拡大が期待されている。
 
 会員制リゾートクラブは前年比2.9%増加した。客単価の減少は続いているが、廉価な利用料金が受けて利用者数は伸びている。会員権の新規募集は厳しい状況が続いており、新設は若干あるが閉鎖も同程度あり、施設数は横ばい傾向にある。これまでの預託金制・共有制が顧客心理にあわなくなり、維持経費だけを数年分前納する形の比較的低価格な会員権を販売するところが増えている。収益はクラブによって明暗がはっきり分かれている。
 複数のリゾートクラブを相互利用できる「リゾネット」は、平成7年の開始以来、好調な利用者数を維持している。さらに会員権の価値を高めようと、平成12年9月から、シティホテルやビジネスホテル、ゴルフ場、その他のレジャー施設と提携した割引利用制度「ジョイネット」がスタートした。
 
オートキャンプ場は、一時のブームが沈滞しており、新規参入キャンパーが激減し、ベテランキャンパーも利用回数を減らしている。施設は、公営キャンプ場が20カ所オープンし、高規格キャンプ場は計238カ所とほぼ全国に行き渡った。初心者はテントよりバンガローを好む傾向にあるため、バンガローの増設が進んでおり、サイトに電源があることもキャンプ場選びのポイントとされている。
 集客のために、顧客との人間関係を重視しつつ、手軽なホビー教室、キャンプの楽しみ方講座などを実施しているところが業績を伸ばしている。欧米のキャンプ場では、高齢者の利用も多く、キャンパーの出会いの場にもなっているが、日本ではファミリーキャンパー中心で、滞在時間も短く、キャンパーどうしの交流があまり行われていないのが現状である。キャンプは、自然の中で自ら遊びを創造するところに本来の楽しさがある。今後は、本当のキャンパーをいかに育てていくかが課題となっている。
 
自由時間市場における消費者の時間取りあい競争
 〜 時間価値を高める8つの視点 〜
 
 消費不況のなか既存の余暇市場は非常に厳しい経営状況にある。だが、市場が拡大しないからといって落胆する必要はない。余暇活動の多様化とともに、新しい市場が多数形成されつつある。消費者に楽しい時間を提供する“自由時間市場”はむしろ広がっているといえる。
 ただし、自由時間市場においては、同業他社だけではなく、異業種・異分野まで含むさまざまな産業が消費者の限られた時間を取りあう激しい競合をしている。消費者はより価値の高いことに時間を使いたいと考えており、供給する商品・サービスには“単位時間当たりの価値(時間価値)”を高める努力が求められている。
 
(1)自由時間のやわらかさ
 24時間いつでも、時間にしばられることなく自由にレジャーを享受できる環境づくりとして、時間の柔軟化に対応する動きが顕著にみられる。


    ⇒  ⇒

  
  自由時間の柔軟化





 
 
(2)自由時間のゆとり
 好きなことにじっくり時間をかけて取り組みたい、のんびりゆったりと時間を過ごしたいといった需要に応え、自由時間の延長に寄与する動きがみられる。一定の時間における精神的な時間感覚の延長も含んでいる。
複合化、関連商品・サービスの提供という形で


   ⇒


時間・時間感覚の延長





 
 






 
 
(3)自由時間のとりもどし
 過去に喪失した時間をとりもどしたいという欲求に応える商品・サービスを提供する動きがみられる。


       ▽


 過去の喪失時間の回収





 
 
(4)自由時間のつながり
 時間を計画的に利用できるようにすることで、自由時間の比重を高めようとする動きがみられる。


      ⇒

   
  計画的な時間利用





 
 
(5)自由時間のふれあい
 同じ時間を他の人と共有することにより、時間価値をより高めようとする動きがみられる。

 





 

 
   ⇒
 

 

  自由時間の共有
 






 
(6)自由時間のすきま
 自由時間行動を含む生活行動の隙間にできた、ちょっとした空き時間を楽しむことができる商品・サービスの需要と供給が拡大している。


  
   ⇒    ⇒
  
 隙間時間のレジャー化





 

 
 
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