平成13年の余暇市場の概況
 
 平成13年の余暇市場は83兆430億円であり、平成12年の85兆580億円から2.4%縮小した。同時期の国民総支出と民間最終消費支出の伸び率は、それぞれマイナス2.0%、マイナス1.2%であるのに対して、余暇市場はややマイナス幅が大きい。
 レジャー業界では、不況下にあって、多くの業種が売上げを減らしている。利用者の減少に加えて、低価格競争による客単価下落の影響が大きい。低価格化や割引をいくら進めても客が戻らない、いわば“デフレスパイラル”ともいうべき状況に陥っている。消費者自身が他の商品・サービスを比較し、消費を厳選する“選択消費”の傾向が強いことも影響している。
供給過剰で需要量との差“需給ギャップ”に苦しんでいる業種は多い。しかし、同じ業種でも、売上げを順調に伸ばしているところがある一方で、収益が悪化し淘汰されていくところも多く、“二極化”の様相は強くなっている。供給量の調整は徐々に進められているが、多くの業界で“新規顧客開拓”が重要な課題となっている。
平成13年の話題は、何といっても9月11日のアメリカ同時多発テロで、レジャーの分野では海外旅行が大きなダメージを被った。アメリカと同様、“巣ごもり消費”の傾向もみられた。
―方、国内で大きなトピックといえば、「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」と「東京ディズニーシー」のオープンである。21世紀の“テーマパーク元年”といえるほどの大規模施設登場で、大きな波及効果が期待されたが、余暇市場全体への影響は小さかった。
余暇市場では、これまでの勝ちパターンや既存のビジネスモデルにこだわらず、業種・業界を越えて“新業態開発”を試み、ビジネスチャンスを広げていこうとする動きが増えてきた。自ら打開策を検討するだけでなく、他との共同、協力“コラボレーション”により、新たな集客、収益確保に結びつけていこうとする取り組みは多く見られる。限界まで無駄を省き、消費者と直接商品・サービスの売買をしようとする“中抜き現象”も随所にみられる。
 
 部門別の市場動向の概要は、以下のとおりである。
 
(1)スポーツ部門
 マイナス3.6%と落ち込みが大きい。ほとんどの市場がマイナス成長であるが、一部には明るさも見える。用品市場には、市場全体の売上げを押し上げるほど目立った商品は出てきていない。ゴルフ用品、スキー・スノーボード用品の売上げは落ちており、アウトドア関連のキャンプ用品、釣具の落ち込みが目立つ。売上げは伸びていないがテニス用品販売は非常に活況である。
サービス市場は、需給ギャップの大きいゴルフ場とゴルフ練習場は市場を縮小した。スキー場、ボウリング場は、利用者の需要変化に敏感に対応することで、若干のダウンにとどまった。成長を続けてきたフィットネスクラブは、横ばいにとどまった。インドアコートが人気のテニススクールと、サッカー人気のスポーツ観戦は市場を拡大した。
 
(2)趣味・創作部門
 全体としてはマイナス1.0%であるが、ヒット商品が出て好調な業種と販売不振の業種に大きく分かれている。巣ごもり消費として、テレビとビデオソフトが大きく成長した。プラズマテレビや液晶テレビは人気があり、DVD(デジタルビデオディスク)も急成長している。映画市場も宮崎アニメの記録的ヒットで大きく伸びた。シネマコンプレックス(複合映画館)の建設ラッシュは一段落したが、地域によってはシネコンどうしの客の奪い合いが激しさを増している。パソコン周辺機器としてデジタルスチルカメラは伸びているが、従来のアナログカメラの落ち込みは大きい。需要が一巡したビデオカメラも落ち込みは大きい。CDはマイナス成長が続いており、違法コピーが無視できない問題となっている。書籍、雑誌も5年連続のマイナス成長となった。
 
(3)娯楽部門
 ほとんどの業種で売れ行きが落ち込み、マイナス2.6%縮小した。唯一好調であるのは宝くじである。ジャンボ宝くじ人気や、ロト6などの宝くじの多様化により売上げは大きく伸びている。パチンコ・パチスロ(貸玉料)は、パチスロの好調とパチンコの不振が続いており、ライトユーザーがパチンコ離れを起こし、売上げ規模ほどに経営状況が良いわけではない。ゲーム業界の売上げは伸びていないが、ゲームセンターのビデオゲームが久しぶりに人気を盛り返し、テレビゲームのハードウエアは世代交代が急速に進み、活発な動きはあった。公営ギャンブルは売上げ不振が続き、施行者の撤退があり業界を震かんさせた。高配当が人気の新投票方式・3連単は全競技に一気に広まるなど、業界は必死に対策に取り組んでいる。外食市場はマイナス成長が続いているが、カフェブームなど新業態が続々と登場している。カラオケルームも売上げが大きく落ち込んでいる。
 
(4)観光・行楽部門
 マイナス1.8%とやや落ち込んだ。アメリカ同時多発テロの影響で海外旅行者数が9月以降激減し、旅行業に大きなダメージを与えた。ただし、その反動で国内旅行は活況であった。特に「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」と「東京ディズニーシー」のオープンが話題をさらった。この関連商品も国内旅行活性化に大きく寄与した。その―方で、既存遊園地は向ヶ丘遊園地はじめ老舗の閉鎖が相次ぎ、話題は豊富な年となった。宿泊分野は単価下落もあって伸びていない。旅館、ホテルの売上げは引き続き減少しており、価格戦略の二極分化が進んでいる。ホテルや旅館の利用料金が下がっているため、低廉な価格帯を売りとしているペンション、民宿、会員制リゾートクラブの落ち込みは大きい。オートキャンプ場も利用者が大幅に減少している。その他、乗用車は、コンパクトカーの人気により単価が下がり、マイナス成長となった。
 
1.スポーツ部門
 
 平成13年のスポーツ部門の市場規模は、4兆7,100億円で、前年比3.6%のマイナス成長となった。
 
 スポーツ用品市場の低迷は続いている。「観るスポーツ」の人気は高く、分野も広がりをみせているが、「するスポーツ」の用品販売に結びついていない。パイが膨らんでいないため、好不調の企業があっても、限られたブランドのシェア争いに過ぎない。
中小スポーツ用品店の倒産・転廃業が続出しているが、テニス、サッカーなど用品分野に専門特化した店は売上げが堅調である。大手チェーン店の出店攻勢は落ち着いたが、リニューアルによる大型化の傾向はますます強まっている。
 
一方、スポーツ用品から一歩踏みだしたスポーツカジュアルウエアでは、新興勢力が大きく売上げを伸ばしている。この分野では、スポーツ用品とアパレルからの業際のない激しい競争が繰り広げられている。スポーツ用品にも、消費者ニーズに敏感に対応したファッション性の高い商品開発が求められている。
国内市場に明るさがみえず苦しむ企業が多い中、世界市場では欧米のグローバルブランドが平成13年末決算でいずれも増収増益となっている。「専門特化する」「世界市場に打って出る」「ジュニア向けなどの新市場を開拓する」「新たな業態を開発する」といった明確な経営戦略上の決断を迫られている。
 
 個別の用品では、既存のスポーツ用品需要が一巡し、軒並みマイナス成長となっており、市場全体の売上げを押し上げるほど目立った商品は出てきていない。
 
ゴルフ用品の売上げは対前年比1.3%減少した。ゴルフクラブでは、ひとりひとりのスイングにあわせて最大飛距離のでるヘッドタイプ、ロフト角、シャフト種類の組み合わせを選択できる「テーラーメイド」の「300シリーズ」が、大きく売上げを伸ばした。売上高約1兆円を誇る世界最大のスポーツ用品企業「ナイキ」が、ゴルフクラブ市場に新規参入したことは業界に大きな衝撃を与えた。全般的に外国ブランドは健闘しているが、それだけ国内企業の落ち込みは大きい。ジュニアゴルファーの育成に期待が集まる中、ジュニア用クラブを販売しているところはまだ少ない。
一方、中古クラブの市場拡大は続いている。安いだけでなく、品揃えが豊富で最新モデルもあり、逆に使わなくなったら買い取ってもらえることが消費者に受けており、シェアを伸ばしている。
 
 スキー・スノーボード用品の売上げは前年比2.5%減となった。急成長を続けてきたスノーボード用品の落ち込みは大きい。平成13年〜14年シーズンは、簡単に楽しく滑ることができる短いカービングスキーの登場などで、スノーボードからスキーへの復帰、ファミリースキーヤーの増加など、若干スキー回帰の傾向がみられた。ただし、ソルトレイク・オリンピックは、長野オリンピックと同様、用品の売れ行きにはあまり寄与しなかった。
スキー、スノーボードともに、ブランドの選別化が急速に進んでいる。板やビンディング、ブーツの技術開発は進んでいるが、スノーリゾートライフそのものにあまり変化はみられない。スキー用品、スキー場、宿泊施設などの関係者により「スキーの明日を語る会」が平成13年3月に発足するなど、業界をあげた普及活動や環境整備の取り組みがはじまっている。
 
 テニス用品の売上げは横ばいとなったが、業界は活性化している。特にラケットの技術革新は非常に顕著である。スリーピース構造、2枚重ね、マイクロチップ内蔵といった新商品投入で単価は上がっている。いずれも衝撃吸収性がよく、ボールコントロールもしやすいうえに強いボールを打つことができる。マンガとアニメの「テニスの王子様」がヒットし、小中学生のテニス熱が高まっている。長年にわたる普及活動の成果もあり、ジュニア層が増加し、この層を対象とした品揃えは拡大している。幼児向けのショートテニス、キッズテニス、ちびっ子テニスなどのキットも注目されるようになった。
 
 キャンプ用品は、新規キャンパーが減少し、ベテランキャンパーも活動回数を大きく減らしており、売上げの落ち込みは大きい。かつてのアウトドアブームでは、キャンピングライフが定着するまでには至らなかった。近年、中高年層に人気のあったトレッキング・ハイキング用品も消費が一巡し、市場を縮小している。
 
 スポーツサービス市場は、売上げを大きく落としている。全般的に利用者数や客単価は減少傾向にあるが、一部には構造改革の突破口が見えてきた。
 
 ゴルフ場はマイナス成長が続いており、平成13年も前年比6.7%売上げが減少した。延べ利用者数が減少しているのに対して、ゴルフ場数は依然として増え続けている。閉鎖するコースは若干あるが、例え倒産しても経営は何らかのかたちで継続されている。需給バランスが大幅に崩れる中、プレイ人口を増やすことが業界の大きな課題になっている。だが、ジュニアや女性、若年層のゴルファーを増やす実効性のある取り組みには至っていない。
インターネット利用が活発化し、価格情報が公開されるようになったことで、利用者のコース選択が厳しくなり、価格競争がさらに激化する傾向にある。ゴルファーはプレイ回数を減らすことなく、できるだけ安くプレイしたいという意識が強いため、セルフプレイの人気が高い。今やゴルフは高級・高額というイメージはなく、日常的に安く気軽にプレイできるコースが求められている。
 新業態として、ゴルフ場とフェアウェイフロント住宅(ゴルフ場隣接住宅)を組み合わせた開発が注目されている。スーパー銭湯の導入を検討するところもあり、ゴルフ場というレジャー空間が複合的な広がりをみせようとしている。芝の管理受託など関連ビジネスへの展開可能性も秘めている。
 
 ゴルフ練習場は前年比8.0%市場を縮小した。供給過剰で年間120カ所以上の閉鎖が10年近く続いており、平成13年は史上最多の閉鎖数を記録した。延べ利用者数、1施設あたり利用者数とも減少は続いているが、施設数の減少で需給調整は進んでいる。中年層や、若者を中心とする深夜来場者の減少が顕著であるが、練習場には高齢者、女性、ジュニアが徐々に増えてきている。
割引や打ち放題料金などにより、客単価は引き続き下がっている。打席とボールを貸すだけの商売から脱却し、付帯サービス拡充が収益確保の鍵となっている。技術の上達や健康を目的としたスクールや個人レッスンの強化、試打クラブ設置などによる用品販売やクラブの修理・管理、利用者どうしのコミュニケーションの場として休憩・飲食機能の拡充、ゴルフ関連の情報提供サービスなど、地域密着型の総合ゴルフサービス業への発展が期待されている。
 利用者の滞在時間は徐々に延びており、打席のさらなる快適性向上やレッスン機能・ゲーム性の演出は今後の重要課題となっている。異業種による新たな試みとして、電子機器メーカー「小寺電子製作所」が「CRゴルフ」をはじめた。ICチップを埋め込んだボールをホールに設けたターゲットに打ち込み、打席のモニターで4人同時に4種類の対戦ゲームを楽しむことができる。夜間はネットの支柱やグリーンのイルミネーションに、飛び交うボールがブラックライトで赤や緑に浮かび上がるといった趣向である。
 
 スキー場の索道収入は、前年比2.9%のダウンとなった。色々と集客対策を施しているが入場者数の減少に歯止めがかからない。期待されていたスノーボーダーは、今や入場者の半数近くまで増え、限界に近づいている。ボーダー用アトラクションの設置は概ね一巡し、魅力的なアトラクションだけが選択されるようになっている。ファミリースキーヤーを呼び込もうと、キッズゲレンデ、ソリ専用ゲレンデが増えている。隣接する複数のスキー場が連携し、魅力あるエリアを形成しようとする動きは顕著である。「苗場スキー場」と「かぐら・田代スキー場」を15分で結ぶ、世界最長の「苗場−田代ゴンドラ(愛称ドラゴンドラ)」が登場し注目を集めた。
ショートスキー(ファンスキー)、クロスカントリー(歩くスキー)、スノーシュー、ソリ、タイヤチューブ、スノーモービルなど、多様なスノースポーツが楽しめるようになってきた。ジャンプやトリックなどのセクションを組み合わせた種目を多数集めた「X GAMES(エックスゲーム)」が開催されるようになり、人気を呼んでいる。今後は、スノースポーツをしなくても楽しく過ごすことができるスノーリゾートとして、独自の魅力を打ち出していくことが重要になっている。
 
 ボウリング場の売上げは前年比1.7%落ちた。新規オープンを閉鎖が上回り、施設数は3年連続で減少を続けている。一部にまだ競合の激しい地域が残っているが、ライバルがいなくなって好調なところもある。各種割引で客単価は下がり続けているが、値下げに見合った集客には結びついていない。ただ、収入が伸びない中での経費削減努力が実り、ある程度の収支は見込める体質に改善されつつある。
子どもから高齢者まで、ゲーム感覚で気軽に楽しめるスポーツとして、ノンガーター(バンパーレーン)やブラックライトで光るコスミックボウルなど、新たな楽しみ方は多数提案されているが、有効な集客対策に育っていない。流行のカフェと複合したボウリングカフェも登場している。体育館に仮設レーンを設置して開催された「第3回東アジア競技大会」が契機となり、新たなビジネスとして仮設レーン・セットの貸出事業が始まった。
 
 テニスクラブ・スクールは、スポーツサービスで唯一、前年比4.2%市場を拡大した。スクール専業か、スクールに重点をおいているところは売上げが堅調である。立地環境にもよるが、土地を賃貸して事業展開しても十分な収益が見込める。スクールは依然として増加傾向にあり、そのほとんどはインドアである。
 会員制クラブは、退会者の増加に新規入会者の補充が追いつかない。開業後20年以上たっているクラブでは、会員の平均年齢が50歳を超えているところがある。クラブを一旦閉鎖し、リニューアル後再び新しい料金体系で会員募集を行って運営しているところが注目を集めている。
テニス事業の多角化として、商業・飲食施設、英会話教室などと複合するところが増えている。公共コート拡充がこの業界の売上げに大きな影響を与えているが、公共コートを活かして民間がスクール等のサービスを運営し有効活用できるようになることが期待されている。学校の部活動・クラブ活動をプロのコーチが指導するビジネス提案もある。
 
 フィットネスクラブは、近年堅調に伸びてきたが、平成13年は横ばいとなった。新規開業は大手を中心に続いており、中堅企業の中にも出店攻勢を強めるところが見られる。営業権譲渡、売却、買収、合併、提携、資本参加など、業界再編の動きも目立っている。既存店の売上げは伸び悩んでおり、一施設あたりの売上げは減少傾向にある。大手クラブから始まった、施設と料金のバランスの適正化、新しい会員制度の導入、営業時間の延長、プログラムの多様化、宣伝・営業の強化の動きはひととおり行き渡り、次の一手が見えなくなってきた。
 伸び続けていた会員数は、法人会員、子どものスイミングスクールの落ち込みにより、若干減少した。ただし、比較的時間に余裕のある高齢者や中年女性の参加が旺盛であり、延べ利用者数、利用回数ともに増加を続けている。高齢者の利用を意識した新プログラムの開発や、温浴施設を充実させるところが増えている。成人のスイミングスクールも利用者数を伸ばしている。
下落傾向にあった客単価は、プログラムの拡充で上昇した。グループエクササイズの参加者が増えており、ストレッチやヨガ、太極拳、気功などの人気が出てきた。アリーナのある施設では、フットサル、バスケット、卓球、バトミントン、バレーなどのスポーツ種目に人気がある。パーソナルトレーニングや文化講座などの有料プログラムの利用者は増えている。
インストラクターが公的施設で健康セミナー等を行ったり、一部プログラムを提供する例が増えており、公的施設の運営受託やPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ、公益事業の民間開発運営)の動きもある。サプリメント(機能性補助食品)やミネラルウォーターなど飲食物の売上げも伸びている。
長期的にみると、高齢化の進展、疾病率の上昇、医療費の自己負担増、健康意識の広まりなど、フィットネスは見通しは明るい業界である。
 
 スポーツ観戦市場は、前年比4.9%伸びた。プロ野球は、パリーグの観客動員数が1千万人を突破し、リーグ最多を記録した。福岡ダイエーホークスは、地域密着策が実り、主催ゲームは毎試合4万人以上入り、パリーグで初めて300万人動員を達成した。
Jリーグは、J1は一試合平均およそ50%増と、大幅に動員数を増やした。大きな伸びの要因は、ワールドカップ開催のため4万人を超す大きな競技場が多数新設され、新しいスタジアムを見てみたいというファン・地域住民が増えたこと、熱狂的な人気を誇る浦和レッズとコンサドーレ札幌がJ1に復帰したことの影響が大きい。スポーツ振興くじ「toto(トト)」の発売で注目度が高まり、特にJ2の試合への関心を大いに高める効果を発揮している。
市場規模はまだ大きくないが、多様な観戦スポーツが開催され、注目度は高まっており、観戦スポーツの裾野は広がりをみせている。
 
 
2.趣味・創作部門
 
 平成13年の趣味・創作部門の市場規模は、11兆7,020億円であり、前年比1.0%減少した。
 
 カメラは、デジタルスチールカメラの大きな伸びが続いているが、従来までの一眼レフカメラやオートフォーカスカメラの落ち込みは大きい。デジカメはズーム機能付きで300万画素以上の高画質タイプが人気を呼んでいるが、比較的安くなった200万画素クラスを選択する人も多い。そのため、デジカメ全体の平均単価は下がっている。
また、おもちゃデジカメと呼ばれる、機能を絞り込んだ廉価品も、初心者の入門用、既存ユーザーの2台目として、まさにおもちゃ感覚の手軽さが受けている。デジカメのユーザーは、画面でみるだけで、撮影した枚数ほど写真をプリントアウトすることはない。だが、ラボやコンビニ等でデジカメをプリントする消費行動が徐々に広がっている。ただし、フィルムの売上げは1割ほど落ち込んでいる。
 
 ビデオカメラは需要が一巡して、売上げを大きく落とした。ビデオカメラといえば、今やデジタルビデオカメラのことであり、アナログタイプはほとんど見られなくなった。小型・軽量・高画質・長時間録画・液晶モニター付きが主流である。販売台数の落ち込みより単価下落の影響が大きい。ブロードバンドの普及により、インターネットによる動画配信が容易になり、パソコンに接続して映像を取り込む、パソコン周辺機器としての利用機会は広がっている。
 
音響機器製品では、新商品登場により買い替え需要が促進され、ポータブル型のCD・MDプレーヤの売れ行きがよかった。特に、パソコンでMP3ファイルを書き込んだCD−R/RWを再生することができるCD&MP3プレーヤは、1枚に数十時間分収録できることが受けている。また、ポータブルメモリープレーヤが、ポータブルMDプレーヤを上回る勢いで需要を拡大している。記録媒体にフラッシュメモリーを使用するため、アウトドア利用に適している。
 
テレビは、壁掛けが可能な薄型で30インチ以上の大画面プラズマテレビや液晶テレビが大きく売上げを伸ばしている。高価であるため販売台数はまだ少ないが、一般消費者の手の届くところまで値段が下がったことでヒットした。平成12年12月にBSデジタル放送が開始されたことから、その対応商品も増えている。
 
 VTR市場では、DVD(デジタル多用途ディスク)ビデオレコーダーの販売台数が倍増している。パソコンの付帯・付属ドライブを含めると、DVDの普及率は急上昇している。HDD(ハードディスクドライブ)を組み合わせ、録画しながら再生できる機能や、高速ダビング機能を備えた新製品もよく売れている。従来のVHS方式は、BSデジタルハイビジョン放送に対応したデジタルハイビジョンビデオ(D−VHS)が売れ筋である。ただし、はやくも低価格化が進行しており、販売台数の伸びほど販売金額は伸びていない。
 
ビデオソフトは、レンタル中心からセル中心に移行している。DVDソフトの販売は倍増近い大きな伸びをみせている。手頃な値段に下がってきており、店頭でも売場を大幅に広げている。DVDレンタルの品揃えも徐々に充実してきたが、セルに重点が移ってきており、レンタル店は急速に減少している。映画はDVDのセルかレンタル、アニメと音楽はビデオカセットかDVDのセルという新たな構図ができつつある。
 
 CD(レンタルを含む)は、マイナス成長が続いている。曲数からすると割高感のあるシングルの落ち込みが大きい。ミリオンセラーの点数も大きく減少している。パソコンの普及でCD−R(追記型CD)への違法コピーやインターネットによる音楽ファイルの違法配信が急増し、販売に大きな影響を与えている。世界規模でみると、違法コピーされたCDは正規のCDの販売枚数と同量であるといわれている。その対策として、「エイベックス」が平成14年3月から、国内ではじめてコピーコントロール(複製制御)CDを発売して大きな話題になった。同社では、今後すべての新作にこの機能を導入する方針である。
 また、「日本レコード協会」と加盟レコード会社が協力して、デジタル音源をインターネットで共同配信する事業を検討している。著作権、課金方式、個人情報保護など課題が多いため、当面はまず試聴音源配信からはじめる。
 
 書籍・雑誌の販売額は5年連続のマイナス成長となった。若年読者の購買力が低下しており、他のメディアで紹介された人気商品に需要が偏る傾向は相変わらず強い。限られた時間と予算の中で、効率よく読書をしようとする傾向にあり、図書館や新古書店を活用し、できるだけ買わずに厳選されるようになっている。
 書籍は、一部ベストセラーを除き商品寿命が短くなっている。ベストセラーが類書販売にまで結びついていない。新刊点数の増加に対応するため、平台の入れ替えも早い。コストダウンのため社外のプロダクションが持ち込む企画に依存する傾向が強まり、企画の類似化、軽薄化をまねいている。
 雑誌は記事の内容に応じて買う傾向が強まり、定期購読性が低下している。売上げの落ち込みを企画商品でカバーしようと、創刊、増刊・別冊、ムックが増加しており、これが定期購読不振に拍車をかけている。コミック誌を買わずに、作品で選択できるコミック単行本に移行している。雑誌作成基準が緩和され、立体模型から化粧ポーチ、ネイルケアセット、バンダナなど、新しいタイプの付録を添付した雑誌が続々と登場している。1点あたりの販売効率はますます悪化している。
 インターネットによるオンライン書店は、在庫情報が確認でき、しかも早く手元に届くことから利用は広がっている。特に専門書は、書店の棚にならべられないものでも読者に提供できるためオンライン書店で売れる比率が高く、ニーズの掘り起こしにも役立っている。
 
 民間カルチャーセンターの受講者はそれほど増えていない。集客のため講座は多様化し講座数は増えたが、採算性の悪化から逆に講座を絞り込む動きもでてきた。無料または廉価であれば学びたいという欲求は強く、受講料に対してはシビアに反応する。民間センターどうしだけでなく、行政の公共講座や大学の公開講座との競合も激しい。大学や短大も、生涯学習センターや好立地のサテライト教室を設け、公開講座に力を入れている。行政は財政悪化で生涯学習離れが進行し、公設民営方式の生涯学習センターは全国に増えている。特に、NPO(特定非営利活動団体)が住民主導により生涯学習講座を提供する動きがでてきており、それぞれのNPOが力をつけてきている。いずれも受講料は無料または廉価である。
「すみだ生涯学習センター(ユートリヤ)」では、学習サポーターと呼ばれる墨田区民の会員で運営している。予算を区が負担し、運営はすべて区民のボランティア組織に任せる墨田方式と呼ばれるもの。NPOを設立してからは、新企画を次々に打ち出し、学習サービスを拡充させている。
「特定非営利活動法人 東京雑学大学」も、大学教授や社会の第一線で活躍している知識人を講師に、週1回、廉価で講座を提供している。社会人のための大学院大学をめざした講義内容を目指している。また、太極拳、音楽、朗読などの教室外講座にも力を入れ、講座の配信サービスも行っている。
 
 映画の興行収入は前年比17.0%と大きく伸びた。この市場は大ヒット作の有無で浮き沈みが大きいのが特徴であり、平成13年は宮崎アニメ「千と千尋の神隠し」の記録的な大ヒットで、興行収入が史上初の2千億円を突破した。シネマコンプレックス(複合映画館)の建設ラッシュは一段落したが、地域によってはシネコンどうしの客の奪い合いが激しさを増している。興行システムが変化し、邦画・洋画の専門館は減り、混映館が急増している。全国拡大ロードショーは広告宣伝費の負担が大きいが、単館上映は売上げの規模が小さくても、作品がよければ着実に利益を稼げるため増加傾向にある。フランス映画「アメリ」は、東京の1館で封切りされたが、クチコミで評判が広がり、数ヶ月後には全国数十館にまで急速に膨らんだ異例のケース。欧米やアジアなど洋画の封切本数は増加傾向にある。
映画の制作から流通、上映まで、すべてをデジタル化しようとする動きがあり、高解像度液晶プロジェクターによるデジタルシネマが可能になった。邦画の人気作品はアニメが中心であり、テレビ番組、ゲーム、本、グッズなどとのメディアミックスが顕著であり、世界マーケットを視野に入れたさまざまな展開がなされている。
 
 音楽、演劇、スポーツなどの興行市場(チケット販売)は、平成12年に長く続いた縮小傾向から脱したかに思われたが、平成13年は再び落ちた。人気アーチストの大規模コンサートが激減し、ミュージカルやエンターテインメントショーのロングラン興行が終了したことが影響した。
そのため、コンピュータ・チケッティングサービスの販売額もほぼ横ばいにとどまった。唯一スポーツ観戦チケットは、Jリーグの観客動員数の急増とワールドカップのプレイベント開催を中心に、幅広い種目で売上げを伸ばしている。未開拓であった地方の中小都市にもネットワークは概ね行きわたった。販売力の低下から、一部の興行主催者が、売れ残ったチケットを、当日券など安くして売りさばこうと、変動価格制を検討しているが、実現のための課題は多い。ICカードや携帯電話・PHSを活用して、チケットレスで予約から決済、入場までを全て行うシステムの開発も進められている。
チケット販売手数料の他に新たな収入源を求める動きは本格化している。インターネットや携帯電話・PHSを活用した販売サービス導入を期に、事前登録料、当選チャージ、システム使用料、宅配料、会費などの名目で、ユーザーからサービスチャージの徴収が始まった。しかし、ユーザーへの配慮が欠けたため、廃止ないしは値下げを余儀なくされたところは多く、変革の取り組みは続けられている。興行主催者やホール等へのチケッティングシステム貸出料へのシフトも期待されている。
 
 
3.娯楽部門
 
 平成13年の娯楽部門の市場規模は、55兆7,120億円であり、前年比2.6%のマイナス成長となった。
 
 パチンコ業界の市場規模(貸玉料・貸メダル料)は、前年比3.1%のマイナスとなった。売上げの落ち込み以上にホールの収支は悪化しており、経営状況は非常に厳しい。
 ギャンブル性の強いパチスロの売上げ増と、パチンコの売上げ減という構造はあいかわらず続いている。パチスロの客単価は上がり、設置台数は大幅に増えた。パチンコはヒット機が少ない。ホールはヘビーユーザーに偏重した経営になっており、ライトユーザーがパチンコ離れをおこしている。ファン拡大のためには、離れていったライトユーザーの呼び戻しと新規開拓が必要となる。そのためには、ギャンブル性を弱め、ゲーム性をより強めた遊技機と経営が求められる。平成7年6月改正以来の遊技機規則(国家公安委員会規則第4号)改正が急がれる。
 ―方、不良客による遊技機の電子基盤の不正改造はあとを絶たず、また営業者側の不正もなくならない。これを絶滅させなければファンがさらに離れていく恐れがあるため、業界は一丸となって不正遊技機対策に取り組んでいる。この一環として、(社)日遊協が検討を重ねてきた「遊技産業不正対策情報機構」が平成13年10月から始動し、その後不正排除の活動が全国規模で展開された。業界7団体からの情報提供とホームページによる業界関係者・ファンからの情報提供により、不正防止に迅速に対応するシステムも稼働している。
 平成12年から13年にかけては、横浜市、東京都、北海道などの自治体によるパチンコ関連新税構想が業界を揺るがした。もっとも、東京都税制調査会が平成11年11月に知事に答申したパチンコ台税を含む新税案は、2001年11月に石原都知事の「パチンコ税は考えてない」との発言で事実上見送りとなり、こうした経緯もあって新税構想はやや話題が遠のいた感もある。
 同じく平成12年〜13年にかけては、東京都をはじめ全国各地の自治体がカジノ構想を打ち出し、パチンコ業界を震かんさせた。パチンコの換金問題はカジノ法制化の議論が起きれば、直ちにその法的欠陥が問われることになるからである。
 
 ゲームセンターは、4年連続のマイナス成長となった。「太鼓の達人」「機動戦士ガンダム」「バーチャファイター」「鉄拳4」などの人気で、ビデオゲームの売上げが久しぶりに盛り返してきた。「ダービー・オーナーズ・クラブ」も依然人気がある。好調な大規模店と厳しい中小規模店との格差は一段と広がっている。ショッピングセンター併設店にも好調な店舗が少なくない。
 施設のマンネリ化と家庭用ゲーム機の高度化などから、ゲームセンター離れが進んでいる。集客のためには、コミュニケーション重視の人的サービスや、安価なイベント開催に加え、地域特性に応じた機種の品揃えやレイアウト等の工夫が必要となる。
新業態として、ショッピングセンター内に、さまざなな形態の子ども向けの遊び場“室内ゆうえんち”が増えている。ブロードバンドを利用したインターネットカフェが各地に登場している。「ナムコ」は、インターネットやDVDシアター、コミック等を融合した「知・好・楽」を、映画館や飲食の複合施設に開設している。同社は他にも、リハビリとエンターテイメントを融合させた“リハビリテイメント”をテーマに、高齢者向けリハビリ施設の空間演出を手がけている。また、既存の施設には、身障者・高齢者向けのゲームコーナー「ハッスル倶楽部」をスタートさせている。
 
 テレビゲーム・ゲームソフト市場は、前年比1.6%縮小した。ハードウェア戦争は、「プレステ2」が、全世界で累計出荷台数3,000万台を突破し(平成14年5月時点)、一人勝ちとなった。「Xbox」「ゲームキューブ」は、それぞれ全世界で約400万台しか売れていない。危機感からかマイクロソフトは、平成14年に「Xbox」の価格を当初価格から一挙に1万円値下げした。任天堂も負けじと「ゲームキューブ」を約2割値下げしている。もっとも「Xbox」は、ゲームの世界だけで「プレステ2」はじめ国内ゲームメーカーと張り合うつもりはないらしい。マイクロソフトのねらいは、「Xbox」のパソコン並みの性能を活かし、将来的に家庭の電化製品を一本のネットワークでつなぐことにある。
 ゲームソフトのタイトル数は増加を続けてきたが、平成13年は大きく落ち込んだ。ハードウエアが高性能化する中、ソフト開発費が高騰しており、収支はますます厳しくなっている。話題のソフトに人気が集中する傾向はさらに強くなっている。テーブルゲームなどシンプルな定番ソフトや、新作発売後半年から1年後に発売されるベスト版は、低価格で長時間楽しめることから市場に定着しつつある。
利用者の年齢層は、「プレーステーション」登場以後、上昇傾向にある。ヘビーユーザー受けする、非常にリアルな映像表現は、子ども(小中学生)のテレビゲーム離れに拍車をかけている。
 携帯電話の普及と高性能化により、ゲームのハードウエアとして携帯電話が注目されている。ソフト資産活用として、旧作ソフトを携帯電話用に移植したコンテンツが人気を呼んでいる。今後は、コンテンツの使い分けや連携が必要になっている。また、ブロードバンドの普及により、離れた場所の複数人がいっしょに楽しむネットワークゲーム(オンラインゲーム)や、ゲームソフトのビット配信などのネットワーク展開が模索されている。
大きく拡大した中古ソフト市場については、平成13年3月に合法の判決がでて、メーカーと販売店の個別交渉の段階に入った。
 
 公営競技の売上げは、長らく厳しい状況が続いており、平成13年も前年比2.4%減少した。売上げ低迷と施行者である自治体の財政悪化から、西宮・甲子園・門司競輪、中津・新潟三条競馬が廃止された。しかし、高配当が人気の新投票方式・3連単は全競技に一気に広まり、ナイトレースが各地で実施されるなど明るい話題もあった。業界は必死に対策に取り組んでいるが、売上げ回復は景気次第というところもあり、景気の回復が待たれるところである。
 
 中央競馬の売上げは前年比5.1%減少し、4年連続の不振に悩まされた。GTレースの売上げ落ち込みも目立ってきた。新潟競馬場では、日本初の直線1,000mコースが登場し、大きな話題になった。新投票方式導入は「ワイド(拡大馬番連勝馬券)」で一時先行したが、売れ行きは伸びず、逆に他競技が3連単人気で巻き返した。平成14年7月からは、「2馬単」「3連複」が全国発売され、高い人気を得ている。た。また、携帯電話を利用した電話投票「IPAT(アイパット)」が3月から、パソコン専用ソフトを使った「PAT(パット)」は8月に開始され、IT対応が進んでいる。
 
 地方競馬の売上げも落ち込みが大きい。ほぼ全主催者が赤字というほど窮地に陥っている。史上初の1日GT2レース「JBC」が大井競馬場で開催され、全国の地方競馬場の入場者数17万人、ナイトレース史上最高の売上げを記録した。大井競馬場に、日本初の競馬観戦型レストラン「ダイアモンドターン」がオープンし話題になった。南関東公営4競馬場では、平成14年4月から、9頭立て以下のレースで3連単を発売。16頭立て以下の3連複も目玉として注目されている。
 
 競輪の売上げは前年比5.4%減少した。平成13年4月から先行して、番組の連続性とストーリー性を重視したグレード制が導入された。平成14年4月からは、SA5班制への移行や、チャレンジポイント、グランプリポイント導入が行われ、新番組制度が本格的にスタートした。前橋、立川で3連単などの新投票が平成13年11月からスタートしたが、高額配当が評判を呼び、3連単は平成14年度中に全国27場にまで拡大する予定である。GVレースの記念場間場外は地区外2場までという枠が撤廃されたことにより、各場が積極的にGVレースの場外を拡大し盛況であった。施設面では、「花月園」が、指定特別席に、各種アルコールドリンクと食事を用意し、ゆっくりと飲食を楽しみながら観戦できる「サイクルベイカフェ」をオープンするなど、若者向けの快適空間づくりに意欲的である。IT対応として、平成14年4月から、インターネット投票も始まった。
 
 競艇は前年比4.9%のマイナス成長となった。しかし、先鞭をつけた3連単が次々と導入され、いずれも入場者、売上げとも大きく伸ばしている。シェアは60%を超えるまでになり、平成14年度中に全競艇場に導入される。多様なニーズに応えるべく拡大2連勝複式、3連勝複式もスタートしている。平成13年7月に公営競技初のインターネット投票が始まり、携帯電話投票も12月から開始された。平成14年4月からは3連勝式舟券の全国電話投票も始まった。芦屋競艇場では公営競技初の高さ45mの展望タワー「夢リア」がオープン、選手会によるインターネットのチャリティオークション開催、アルコール販売認可など話題は多い。業界の念願であるナイターレースでのSG競争開催が検討されている。
 
 オートレースは、前年比9.9%マイナスと他の公営競技に比べて落ち込みが大きかった。スーパースター王座決定戦を頂点とした5G制への転換や、各場独自の企画GUレースなど、競走体系が一新された。新鋭対決、ベテラン対決、全レースオープンなど、各場独自のアイデアシリーズが創出されたが、ファンの反応はさまざまで、難しさもうかがわせた。平成14年2月から山陽で3連単を発売開始した。
 
 宝くじは、前年比伸び率12.6%と大きく市場を拡大し、ついに1兆円の大台に乗った。
“億万長者倍増計画”と銘打って、グリーンジャンボから2等賞金が1億円まで一気に引き上げられ、年末ジャンボでは1億円以上の賞金本数が倍増されたことで売上げを大きく伸ばした。オータムジャンボの発売も始まり、ジャンボ宝くじは年5回となった。
また、平成12年10月から発売され高い人気を得ている「ロト6」が、年間をとおして発売されたことによる売上げ増も大きかった。平成13年6月からはインスタントくじ「スクラッチ」も発売されており、宝くじは多様な楽しみ方が提供されている。
 平成13年3月から、Jリーグの試合結果を予想する「スポーツ振興くじtoto(トト)」が全国発売された。サッカーという身近なスポーツの試合結果を予測する楽しさと、発売当初に賞金1億円が出たことで話題性は高まった。しかし、シーズン前半は売上げがよかったが、低額当せん金が何度もでたことや、発売窓口の不足もあって、後半は売上げが停滞した。
 
 外食産業は前年比1.2%のマイナス成長となった。業界全体としては厳しい状況にあるが、売上げを伸ばす大手企業は多い。コンビニエンスストアが料理品小売業として飲食機能を強化するなど、さまざまな業界が、新業態として飲食機能を強化しており、競争は激しさを増すばかりである。
 平成12年のカフェブームにより、「スターバックス」を始めとする新業態のカフェが急速に増えている。いずれも居心地のよい快適な空間づくりが特徴である。内装やメニュー等に趣向を凝らしたテーマレストランが増加しており話題となっているが、収益は必ずしもよくないようだ。一方、地方の名産や郷土料理をメニューに取り入れようとする店が出てきている。
外食店の食品小売店化(テイクアウトまたはテイクホーム)と、大型小売店の食料品売場のイートインコーナー設置による外食店化が同時に進んでいる。特に、“デパ地下”では個店がそれぞれイートインコーナーを設けるようになり人気を呼んでいる。
 
「マクドナルド」は、消費者の需要を機敏に察知し、即座にメニューや価格改定を行っており、話題に事欠かない。急激な円安や狂牛病問題の影響などから、平成13年2月、平日半額セールを打ち切り、新価格体系エブリデー・スマイル・メニューを導入した。また、昨今のカフェブームに対抗して、プレミアムコーヒーの販売拡大や、フレッシュなブレックファースト、サラダ&スープ、カフェ&ベーカリーメニューが好評のマックトーキョーメニューを全国展開する。好きなハンバーガー、サイドメニュー、ドリンクを選んでセットがつくれるマックチョイスをはじめ、地域限定商品の販売に力を入れるようになった。「ソフトバンク」と組んで店舗で無線LANのサービスや、3分間無料の公衆電話「McBBフォン」を試験的に設置するなど、さまざまな店舗のあり方が模索されている。
 
「すかいらーく」は、同業他社が手を出せない小商圏対応で低価格ブームの先陣を切った「ガスト」が、平成13年で全都道府県への立地を完了した。中華の低価格店「バーミヤン」、和食の「夢庵」といった、近年合併し本社に組み込まれた業態が、積極展開により売上げを伸ばしており、既存店でも前年比プラスを確保している。既に、平成10年からガストルームサービスという食事宅配サービスを行っており、車を持っていない、乳児や重病人がいる、高齢者世帯、などの理由で来店できなかった新規顧客を獲得し、店舗の売上げに貢献している。家事全般を代行するパーソナル・スタッフ・サービス、介護サービスなど、生活に密着した総合サービス業へシフトしていくための取り組みもみられる。
 
 カラオケルームは前年比10.2%市場を縮小した。施設数、利用者数ともに減少しており、客単価の落ち込みも目立った。料金値下げで集客しようとするケースが多く、飲食メニューも低価格化している。飲食比率は50%近くまで上昇しているが、飲食店をしのぐ飲食機能を備えることで、業態を超えた客の奪いあいに勝ち残ろうとする戦略が主流になっている。
大型店の増加と、小規模店の淘汰という二極分化が進んでおり、昨今では30室以上の規模でないと安定収入が見込めないといわれている。若年層の利用者はわずかに減少しているが、主婦層や高齢者の利用は減少してはいない。
ルーム貸出業から脱皮しようと、カラオケ教室やカルチャー教室を展開するところがあるが、その他のビジョンが出てきていない。これまで画一的であったチェーン店の中には、経営的な合理性は追求しながら、地域性や個性を強調する形で店ごとにデザインをかえるところが出てきている。
 
 
4.観光・行楽部門
 
 平成13年の観光・行楽部門の市場規模は、10兆9,190億円であり、前年比1.8%のマイナス成長であった。
 
 乗用車の総販売額は前年比5.7%のマイナスとなった。車種別には、コンパクトカーの人気が高く、単価は下がっている。特に、平成13年6月デビューの「フィット」は、広い室内空間と充実した装備、ボディカラーなどのファッション性、安全性能の向上、低燃費、低価格が受け爆発的に売れた。平成13年4月から、環境への配慮の度合いによって自動車取得税や自動車税に差を付ける「グリーン税制(低燃費・低排出ガス車優遇税制)」が導入された効果もある。
 RV(レクリエーショナルビークル)は、近年かげりがみられたステーションワゴンとオフロード4WDにニューモデルが投入されて需要が喚起され、販売台数は若干伸びている。ファミリーユースに対応した3列シートのセミキャブワゴンのシェアは相変わらず大きい。
中古市場の比率も高くなっている。販売台数は新車と同じくらい、金額で3割弱といわれている。
障害者や高齢者向けの福祉車両は毎年大きく伸びており、人気の高いニューモデルの発売と同時に福祉車両が用意されるようになった。
 「トヨタ自動車」は、自動車の製造・販売から、車向け情報ネットワークサービス、
カー用品、事故や故障時のサポートサービスなど、周辺サービスビジネスへさまざまな展開をはかっている。
 二輪車は、人気のテレビ番組で取り上げられたことで、ファッション性を求める若者のタウンユースとしてストリートモデルの人気が高い。カスタム・ドレスアップできることも魅力となっている。スクータータイプも人気がある。中高年層も昔懐かしいバイクを購入するケースが増えており、軽二輪、小型二輪の販売台数は伸びている。特に軽二輪の売上げが大きく伸びた。250ccクラスの二人乗りスクーターに新商品が投入され、比較的高い年齢層にも受けている。
 
 低迷していた遊園地・レジャーランド市場は、入場者数を大きく伸ばした。全体的に入場者数を減らす施設が多い中、リニューアルによって若干増えているところが増えている。平成13年3月、大阪にオープンした「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」と、9月に「東京ディズニーリゾート(TDR)」の第二テーマパークとしてオープンした「東京ディズニーシー(TDS)」により、年間2,000万人を超える入場者数の上積みもあった。
当初の目標入場者数850万人を大きく上回る好調で、東京ディズニーランド(TDL)のオープン時約1,000万人を超えたとみられる。東のTDRにならぶ西の一大テーマパークとして定着し、大きな波及効果が期待されているが、大規模リニューアルがしばらくないことを不安視する声は多い。パークの人気により、駅からゲート前までの全長約250のストリートに、カラフルな外壁や看板で演出された複合商業施設「ユニバーサル・シティウォーク大阪」も盛況で、テーマレストランも話題になっている。
 TDSは年間入場者1,000万人、TDLとあわせて2,500万人が見込まれており、概ね目標数値を達成している。これにより、専用モノレールでTDLや複合商業施設「イクスピアリ」、オフィシャルホテル群などを結ぶ一大リゾートが完成している。TDLは、夢と魔法のディズニー映画をテーマとするのに対して、TDSは海にまつわる物語や伝説をテーマとしており、アトラクション以外の景観や雰囲気を味わうことを重視し、アルコールも飲めるなど、TDLよりやや上の年齢層をねらい差別化をはかっている。
 大きな話題にかくれて、「小田急向ヶ丘遊園」や「横浜ドリームランド」などの老舗遊園地の閉鎖が相次いだ。「阪急電鉄」も伝統ある「宝塚ファミリーランド」や「神戸ポートピアランド」の経営から平成15年中に撤退する。
 
遊園地という旧来からの固定的な業態が姿を消す中、既存の遊園地では、商業施設や温浴施設を複合しながら、公園のようにオープンなファミリー向けの遊園地への転換を模索するところが多い。学校教育用プログラムを作成し、遠足などの団体を集客しようとする動きもある。
新たな業態開発も進んでいる。「横浜カレーミュージアム」「小樽運河食堂」「ラーメンスタジアム」のような、食べ物をテーマとしたテーマパークが続々とオープンしており、いずれも賑わっている。近年は、自然公園のようなフラワーパーク、ファームパーク、ペットパークの新設が続いている。商業施設や都市公園が、集客のために観覧車を導入するケースも増えている。
 
 旅行業の手数料収入は前年比8.0%減少した。平成13年9月のアメリカ同時多発テロ以降、海外旅行者が激減した影響は大きかった。その反動で国内旅行は伸びたが、海外旅行よりも単価が低いため、落ち込みをカバーするまでには至らなかった。USJやTDSのオープンも国内旅行活性化に好影響を与えた。
 海外旅行は、前期は中高年層の需要が好調であったが、9月以降大きく落ち込み、海外旅行者数は前年同月比で、9月20%減、10月以降40%減となった。旅行者の旅行単価は若干落ちているが、ブランド企画商品は、ヨーロッパの好調や現地施設利用料等の上昇を受け、取扱単価が増加した。逆に、国内旅行の企画商品は、取扱額、取扱人数ともに好調であるが、取扱単価は減少を続けている。
 減少傾向にあった旅行単価がさらに下落していることは、収益性の低いこの業界に大きなダメージを与えている。旅行会社の厳しい価格競争は限界に近づいている。消費者が低価格商品を選ぶ傾向に変化はみられない。旅行商品を比較検討できるようになったこともその一因である。生き残りをかけて、平成13年1月、業界2位の「近畿日本ツーリスト」と業界3位の「日本旅行」、西日本旅客鉄道の旅行部門「Tis」の合併が発表され、業界に大きな衝撃を与えた。しかしながら、翌年、考え方の相違によりこの大型合併は見送られることとなった。
 
 これまで発地が中心となって旅行商品が企画されるケースが多かったが、観光資源を掘り起こして活用する、地域に密着した旅行商品づくりも本格化している。時間的にも経済的にも余裕のある中高年層をターゲットに、積極的な商品展開が行われている。自然、教養、趣味などの知的要素を盛り込んだ目的性を高めたテーマツアーが充実してきており、ガイド付きの自然探索、登山、ハイキングツアー、史跡や文化遺産を訪ねるツアーの人気が高い。「近畿日本ツーリスト」のクラブツーリズムは、中高年層を中心とする会員の趣味や嗜好にあわせて多数のクラブをつくり、その活動をとおして旅行商品の販売を行うユニークな取り組みである。このクラブから発展して、会員相互の家事支援組織「町の便利屋さん 元気センター」の運営も開始し、生活ニーズを幅広く取り込んでいこうという新たな試みとして注目される。
 
インターネットによる旅行商品販売は拡大し、特別割引商品も数多く設定されるようになってきた。平成12年11月に「電子商取引についての書面交付利用整備法(IT一括法)」が成立し、平成13年4月から、インターネットやメール、携帯電話等による書面提供で旅行契約締結が可能になった。すでに大手4社は共同のプロモーションサイト「トラベルタウン」を稼働させている。旅行商品、航空券、鉄道指定席券の予約がひとつのサイトで可能になったサイト「えきねっと」も平成13年4月に開設された。中小旅行会社数十社が海外ツアー商品を扱う共同サイトを開設予定である。同業・異業種を問わず共同の販売チャネル拡大の動きは続いている。
 
国内航空は、平成13年5月に、国内大手航空3社が共同出資して設立・運営するサイト「国内線ドットコム」のサービスを開始した。各社の空席状況や運賃を比較し、クレジットカードによりチケットレスで航空券を購入できるようになった。
 宿泊施設に関しても、インターネットを利用した直接販売の動きは進んでいる。「旅の窓口」が平成13年5月に会員数100万人を突破するなど、低廉な経費でインターネットによる宿泊予約を扱う業者が急速に会員数、取扱宿泊施設数を拡大している。
消費者がインターネットを使って直接、宿泊施設や航空券を予約購入できるようになったことで、旅行業の中抜き現象が進行し、収益低下に影響している。
 
「高齢者・身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(交通バリアフリー法)」が平成12年11月に施行され、鉄道の駅や空港施設などの新設・大規模改修の際にはエレベーターやエスカレーター、身障者用トイレ設置などの対応が義務付けられた。それを受けて、施設整備が急速に進められている。
 
 ホテル・旅館などの宿泊施設では、ホテルの売上げは若干伸びたが、旅館が売り上を大幅に減らしている。平成13年には100件以上の倒産があり、旅館の倒産は過去最高水準にある。経営再建のため他社に運営委託するケースは多い。公共保養施設を民間に無償で運営委託、売却するところもある。
ホテルは、価格戦略の2極化が進んでいる。豪華な雰囲気づくりに力を入れるところがある一方で、自動チェックイン機や簡素化した室内設備など徹底的な合理化による低料金宿泊料と朝食サービスを組み合わせたR&B(ルーム・アンド・ブレックファースト)タイプのホテルが増えている。「スーパーホテル」は、従業員2人で運営できるよう極限までスリムにした運営で、1泊シングル4,800円で稼働率平日ほぼ100%を実現しているという。
 運営の効率化・利便性向上のための連携はあらゆる形で盛んに行われている。客室や宴会場などへのブロードバンド導入や無線LANカードの貸出・利用無料サービスなどが各所で行われている。介護サービスを充実させるだけでなく、ショートステイ事業を実施するホテルもある。
東京は平成14年から数年間にかけて10以上のホテルが開業予定である。東京都が平成14年10月から、ホテル・旅館の宿泊税を導入することは大きな話題になった。1人1泊1万円以上100円、1万5,000円以上200円を宿泊者から徴収するもので、観光客を東京都に呼び込む観光振興のための目的税として年間15億円の税収を見込んでいる。
 
 ペンションの売上げは非常に大きく落ち込んだ。経営不振による転廃業が多く、営業軒数は4年連続で減り続けている。ホテルや旅館の利用料金が下がっているため、それに負けない価格設定を打出し、宿泊単価が大きく下がっている。延べ宿泊人数は減少しているが、一軒あたりの宿泊数は逆に3年連続で増加しており、淘汰の恩恵を享受するところは増えている。ファミリーユース中心に変わりはないが、廉価で宿泊できるため、3泊以上の長期滞在が急増している。大半のペンションがホームページを設けるようになり、インターネットによる集客率は4割近くになっている。また、ペンションオーナーといっしょに自然を体験する宿泊プログラム「自然学校」が人気を呼んでいる。今後は、このような宿泊以外の新たな収益部門の拡大が期待されている。
 
 会員制リゾートクラブは前年比4.8%減少した。新設は少ないが、手頃な価格の入会金制を導入するクラブが増えており、少額会員権の販売に動きがみられた。廉価でホテル・旅館を利用できるようになっているため、不人気施設の稼働率低下は著しく、宿泊単価の下落も大きい。欧米では一般的な、1年を1週間単位にわけ、10年または20年間、予約なしで確実に利用できるタイムシェア方式の利用権システムを採用するクラブが増えている。低価格であり、他の時期・施設と交換利用でき、空室があればどの施設でも1泊単位で利用できる柔軟性もある。複数のリゾートクラブを相互利用できる「リゾネット」は、堅調に利用者数を維持している。クラブ会員が、ホテル、ゴルフ場、その他のレジャー施設を優待料金で利用できる総合提携制度「ジョイネット」も利用者に好評である。
 
 オートキャンプ場は、アウトドアブームの終焉で、新規参入キャンパーが激減し、ベテランキャンパーも利用回数を減らしている。公営の高規格施設が若干増え、国際基準に適合するキャンプ場は全国に243カ所ある。集客のための利用料金割引が急速に進んでいる。経営状況の悪化から、多くのキャンプ場が夏期だけの営業となってきている。
テントをはって自然を楽しむといったキャンプではなく、手軽にバンガローに泊まり、自炊せず弁当を買ってきて食べるといった、単なる安い宿泊施設としてキャンプ場を利用するケースが目立っている。キャンプは、自ら自然の中で楽しみを発見し、遊びをつくりだしていくものであるが、今日のキャンパーの多くは、素朴な自然だけでは満足しなくなっている。そのため、星座観察、焼き物教室、クラフト、パン・そば作り、キャンプファイヤー、ゲーム、パーティなどのイベントが求められている。欧米のキャンプ場では、高齢者の利用も多く、キャンパーの出会いの場にもなっているが、日本ではファミリーキャンパー中心で、滞在時間も短く、キャンパーどうしの交流があまり行われていない。子ども向けのキャンプ塾、アウトドア塾は人気があるため、自然の中で自ら遊びを創造する本当のキャンパーを育成していくことが期待されている。
 
 
5.デフレ不況下の新業態開発
 
 デフレ不況下のレジャー産業は、既存ビジネスの売上げ低迷から脱出するため、低価格であっても利益がでるようなビジネスモデルがさまざま形で模索されている。中でも積極的に新業態を開発しよう、消費者の新たなレジャー行動を取り込もうとする動きが目立っている。その主な視点として「境界市場」への進出、「隣接市場」の取り込み、消費者がまとまった時間を過ごせる「複合市場」化の3つが挙げられる。
 これらの3つの「市場」は、現実の業態においては、ほとんど重複しているが、視点の上では少しずつ異なるものである。
 
(1)「境界市場」における商品・サービス提供
 
 Aという業態からみると、B業態、C業態との「隙間」にあって、これまで必ずしも進出していなかった分野がある。「境界市場」とは、こうした他業態との間の、いわば「隙間市場」のことである。
従って、Aの業態からみれば、この隙間に関連性の高い商品・サービスを投入・提供することで、消費者の利便性を高め、新たな商品・サービスにも手を伸ばしてもらい、総合サービス業として売上げ向上をはかろうとする動きである。具体的には、下記のような事例である。
 
@テニス事業の多角化として、商業・飲食施設、英会話教室などとの複合が増えている。
拡充が進む公共コートを活かして民間がスクール等のサービスを運営し有効活用することが期待されている。学校の部活動・クラブ活動をプロのコーチが指導するビジネス提案もある。既存ビジネスの境界を広げようとする取り組みである。
 
Aフィットネスクラブでは、インストラクターが公的施設で健康セミナーを行ったり、一部プログラムを提供する例が増えており、公的施設の運営受託やPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ、公益事業の民間開発運営)の動きもある。経営ノウハウを活かして既存施設の外に新たな収入源を求めようとする動きである。
 
Bカラオケルーム「シダックス」は、ルーム貸出業から脱皮しようと、カラオケ教室やカルチャー教室を展開し、空間の高度利用をはかっている。ルームという経営資源を活かしたビジネス展開である。
 
Cペンションでは、オーナーといっしょに自然を体験する宿泊プログラム「自然学校」が人気を呼んでおり、宿泊以外の新たな収益部門として期待されている。
 
D遊園地・テーマパーク業界では、新たな業態開発として、食べ物をテーマとしたテーマパークが続々とオープンしており、物販・飲食に新たな収益を求めようとする動きが目立っている。
 
Eスポーツ用品からスポーツカジュアルウエアに進出した新興勢力が売上げを大きく伸ばしている。この分野では、スポーツ用品とアパレルからの業際のない激しい競争が繰り広げられている。
 
(2)「隣接市場」における商品・サービス提供
 
「境界市場」と似ているが、Aという業態の枠組みを一歩踏みだし、関連性のある隣接市場(B業態、C業態)の一部を取り込んで商品・サービスの提供を始める動きがみられる。異業種でのまったく新たなビジネス展開を模索する動きである。
 
@ゴルフ場とフェアウェイフロント住宅(ゴルフ場隣接住宅)を組み合わせた開発が注目されている。スーパー銭湯の導入を検討するところもあり、ゴルフ場というレジャー空間ビジネスが隣接市場へと広がりをみせようとしている。芝の管理の受託など関連ビジネスへの展開も模索されている。
 
Aネオンシステムや電子機器のメーカー「小寺電子製作所」が、自社技術を活かした新スタイルのゴルフ練習場「CRゴルフ」をはじめた。ICチップを埋め込んだボールをホールに設けたターゲットに打ち込み、打席のモニターで4人同時に4種類の対戦ゲームを楽しむことができるもの。夜間はネットの支柱やグリーンのイルミネーションに、飛び交うボールがブラックライトで赤や緑に浮かび上がる。
 
B「すかいらーく」は、平成10年からガストルームサービスという食事宅配サービスを行っているが、家事全般を代行するパーソナル・スタッフ・サービス、介護サービスなど、生活に密着した総合サービス業へシフトしていくための取り組みもみられる。
 
C「近畿日本ツーリスト」のクラブツーリズムは、中高年層を中心とする会員の趣味や嗜好にあわせて多数のクラブをつくり、その活動をとおして旅行商品の販売を行っている。このクラブから発展して、会員相互の家事支援組織「町の便利屋さん 元気センター」の運営が開始され、生活ニーズを幅広く取り込んでいこうとする新たな取り組みが注目される。
 
Dホテル業界では、介護サービスを充実させるだけでなく、新業態としてショートステイ事業を実施する動きがみられる。
 
E「トヨタ自動車」は、自動車の製造・販売から、車向け情報ネットワークサービス、カー用品販売、事故や故障時のサポートサービスなど、自動車周辺サービスビジネスへさまざまな展開をはかっている。
 
(3)「複合市場」化による商品・サービス提供
 
 消費者は、特定のサービスを消費するという側面のほかに、あるまとまった「時間」を同じ場所で快適に過ごしたいという欲求を持っている。例えばスキーの例で言えば、ゲレンデで滑走している時間そのものは意外と短くても、スキーの合間の時間、アフタースキーの時間に、どのような楽しみが得られるか、つまり一定の時間を如何に楽しめるかということが大切である。
このように、関連する複数のサービス領域を複合化し、いわば、まとまった「時間消費」を提供することを商売につなげようとする試みであり、近年、次のような動きがみられる。
 
@ゴルフ練習場では、打席とボールを貸すだけの商売から脱却し、技術向上や健康を目的としたスクールや個人レッスンの強化、試打クラブ設置などによる用品販売やクラブの修理・管理、利用者どうしのコミュニケーションの場として休憩・飲食機能の拡充、ゴルフ関連の情報提供サービスなど、ゴルファーのゴルフライフにかかわる総合サービス業への発展が期待されている。
 
Aスキー場では、多様なスノースポーツの楽しみ方を提供するだけでなく、スノースポーツをしなくても長時間楽しく過ごすことができるスノーリゾートとして、独自の魅力を打ち出していくことが模索されている。
 
Bフィットネスクラブやテニスクラブ・スクールでは、会員どうしのコミュニケーションスペースとして飲食機能を拡充させており、施設利用の前後にゆっくりくつろげる空間として利用され売上げに貢献している。
 
Cボウリング場では、ゲームセンターやビリヤード、卓球など、待ち時間に手軽に利用できる空間を複合することにより、複数の施設の連続的な利用を促進している。流行のカフェを複合したボウリングカフェが登場するなど、ボウリング場での楽しみを広げようとする動きは顕著にみられる。
 
D既存の遊園地では、商業施設や温浴施設を複合しながら、公園のようにオープンでゆたりとした時間を過ごすことができる空間への転換を模索するところが多い。
 
E温浴施設とエステ・マッサージ、飲食施設、商業施設などを組み合わせたスーパー銭湯が増えており、ゆっくり長時間過ごすことができることが受けている。温浴施設とパチンコ、シネコン、ボウリング場、カラオケルーム、飲食施設、商業施設などを組み合わせた、大規模複合施設も増えている。
 
 
  Back to TOP