平成15年の余暇市場の概況
 
 平成15年の余暇市場は82兆1,460億円であり、平成14年の83兆1,260億円から前年比1.2%減少した。これは、同時期の国民総支出と民間最終消費支出の伸び率、それぞれ0.1%減、0.6%減より減少幅が大きい。
 経営破綻・事業撤退・施設閉鎖が依然として多いため、市場全体の規模は拡大していない。しかし、積極的にビジネスを再構築したところ、新しい戦略をもって市場を開拓しようとするところでは、売上げを順調に伸ばしている。その結果、ますます“二極化”が顕著になっている。
 テレビ・映画・雑誌などのマスメディアと連携した“メディアミックス”の効果に市場動向が左右される傾向が強くなっている。仕掛けた人気は飽きられるのが早いため、活動の楽しさをしっかりと伝え習慣化する取り組みが求められている。
 インターネットや携帯電話の普及で、ビジネス環境は大きく変化している。今やインターネットは、販売チャネルとして必要不可欠なものになった。電子マネーや電子タグによるマーケティングや顧客管理・戦略立案などの取り組みも各所で始まった。今後は情報活用能力“情報リテラシー”が各業界や企業の明暗を分けるようになる。
 国内観光市場が低迷するなか、国をあげて“観光立国”を目指すインバウンド(外国人観光客誘致)の取り組みとして「ビジット・ジャパン・キャンペーン」が始まった。全国の観光地が、中国、台湾、韓国などアジアからの集客に力を入れはじめた。
 レジャー施設の利用者減少に対して、既存利用者の利用回数や単価の上昇をねらった対策は色々と出てきているが、なかなかよい成果をあげることができない。一方、新たな利用者を呼び込む対象として、高齢者、女性、ジュニアが注目されている。各業界でそれぞれ取り組みはみられるが、その効果はまだ一部に限られいる。各種レジャー活動への参加人口減少の対策は、レジャー業界全体の課題といえる。
 
 
(1)スポーツ部門
 前年比マイナス1.6%であるが、減少幅は縮小しており、堅調な分野もある。
 用品市場は、横ばい傾向のものが増えている。ゴルフ用品は高額商品にも動きがみられ、中古市場、インターネット販売が拡大を続けている。テニス用品は横ばい傾向が続いているが、ジュニア層が増えて、市場は活性化している。スキー・スノーボード用品、キャンプ用品も落ち込みは小さくなってきた。 サービス市場では、堅調な分野がある一方で回復の兆しがみえない分野があり、明暗が分かれている。インドアコートが人気のテニススクールと、高齢者の健康志向に応えるフィットネスクラブは売上げを伸ばした。逆に、ゴルフ場とゴルフ練習場は回復の兆しがみえていない。特にゴルフ場は、需給ギャップがなかなか埋まらない。スキー場は、スノーボーダーの増加が上限に近づき、収益増の目途が立っていない。ボウリングは、テレビ番組の人気に左右され、ファンが定着していない。スポーツ観戦は、Jリーグとプロ野球が観客動員数を増やしている。
 
(2)趣味・創作部門
 前年比1.7%のマイナスとなったが、デジタルAV機器とDVD、映画など好調な分野が目立つ。
 デジタルスチルカメラは販売台数の伸びが著しい。プリンタと直結するダイレクトプリントでさらに需要を拡大している。デジタルビデオカメラも高性能化で販売台数を伸ばしている。大画面薄型テレビは、高額にもかかわらず買い替え需要が旺盛である。DVDレコーダー/プレーヤー、DVDソフトは急成長し、ビデオカセットにとってかわる勢いがある。映画はヒット作が続出して売上げが伸びた。
 逆に、CD、書籍・雑誌のマイナス成長が続いている。学習レジャーでは、民間カルチャーセンターを取り巻く環境が非常に厳しく、NPOが学習講座に力を入れるなど、競合は激しさを増している。
 
(3)娯楽部門
 前年比0.6%のマイナスとなった。パチンコとゲームセンターを除く全分野で売上げが減少している。
 パチンコ・パチスロ(貸玉料)は、市場規模は伸びても、経営状況は良くない。射幸性が非常に高いマニア向けのパチスロ好況、パチンコ不振の構図に変化はない。ゲームセンターは、ショッピングセンターの大規模店で、トレーディングカードゲームなど人気機種が数多く登場しており、客足が戻ってきた。
 一方、テレビゲームは、ハード、ソフトとも売上げは落ちており、軒並み値下げを行った影響も大きい。昨年1兆円を突破した宝くじは、大台はキープしたが、金額は若干減少した。外食は、多店舗展開で業績を伸ばす大手や外食ベンチャーが増えているが、市場全体では売上げが減少した。公営ギャンブルは不況の影響が大きく、売上げ不振が続いている。各競技とも、IT化への対応を急速に進めており、売上げ回復の切り札として期待されている。カラオケボックスは、大手による大規模店の出店は旺盛であるが、小規模店の急速な淘汰が進み、売上げは大幅に落ちた。
 
(4)観光・行楽部門
 前年比マイナス3.4%と減少幅がやや大きかった。国内観光振興の取り組みにもかかわらず、各分野で売上げを減らしている。
 旅行業では、アメリカ同時多発テロの影響が平成15年前半まで続き、さらにイラク戦争とSARS発生が重なり、海外旅行の減少幅が大きい。その需要が国内旅行にシフトすることが期待されたが、結果としは伸び悩んだ。一方、中国、台湾、韓国からの観光客が増加している。
 宿泊施設では、ホテルの稼働率が若干上向いているが、旅館の落ち込みが大きい。ペンションや民宿は、経営努力により堅調なところがある一方で、施設閉鎖が多く、市場は大きく縮小している。
 遊園地・テーマパーク市場は、ほぼ横ばいであった。遊園地併設型の温浴施設のオープンが目立っている。全国に食べ物をテーマにしたフードテーマパークが急増している。農業公園、ペットパークのオープンも話題になった。
 乗用車はマイナス成長となった。販売台数はそれほど落ちていないが、小型車志向が強くなり平均単価が下がっている。実用性が優先され、レジャーユースがやや減少している。
 
 
1.スポーツ部門
 平成15年のスポーツ部門の市場規模は、4兆4,670億円で、前年比1.6%のマイナス成長となった。平成4年のピーク時に対し約70%ほどまで縮小しており、他の市場に比べ落ち込みが大きい。しかし、減少幅は縮小しており、底打ち感がでてきた。
 
 スポーツ市場では、テレビ・映画・雑誌などで、これまであまり注目されてこなかったスポーツ種目が脚光を浴びるようになり、スポーツの多様化が進んでいる。ワールドカップやオリンピックも、一種のショーとして大いに盛り上がる。しかし、「観るスポーツ」としての人気が「するスポーツ」としての用品販売や施設利用にあまり結びついていない。各業界・企業ごとにスポーツ人口増加に向けた対策は進められているが、成果はまだ一部に限られている。今後は、スポーツをすることの楽しさを広く伝える、業界一体となった取り組みが期待されている。
 スポーツをつうじた地域コミュニティ形成に寄与する総合型地域スポーツクラブが全国各地に誕生している。「特定非営利活動法人WASEDA CLUB:通称ワセダクラブ」は、大学の施設を有効活用し、スポーツ部員が指導員となって、地域の子ども向けにスポーツ教室を開催している。サポーター制度、スポンサー制度、関連用品販売など、大学スポーツの新たな方向性を示しており、今後の活動が注目される。
 
 スポーツ用品市場は7年連続のマイナス成長となったが、個別用品では横ばい傾向のものが増えており、底打ちの感がでてきた。
 中小スポーツ用品店の倒産・転廃業が続出するなか、大手チェーンの大型店は増加を続けている。ゴルフ、テニス、卓球、またはスポーツシューズやウエアに特化した専門店は売上げが堅調である。インターネット通販は、まだ市場全体に占めるシェアは小さいものの、年々売上げを大きく伸ばしている。特に、ゴルフ用品とスポーツシューズの売上げが大きい。
 
 ゴルフ用品の売上げは対前年比0.2%増となり、長らく続いた減少傾向に歯止めがかかった。シェア争いのための低価格化は相変わらず進んでいるが、一方で高額高品質による利益重視の意識が業界内でも浸透してきた。中古市場の拡大は一段落したが、中古専門店だけでなく、インターネット販売でも一定の需要を確保している。インターネット販売では、「ゴルフダイジェスト・オンライン」が40万人近い会員を集め、常時12万点の品揃えを売りに、トップシェア約3割といわれる突出した好業績をあげている。
 クラブでは、フェイス部分に反発力のあるチタン、側面は低価格なステンレス、ソールに比重の高いベリリウムカッパーを用いるといったように、複数の異なる金属を組み合わせたメタルコンポジットタイプが一般的になりつつある。高い弾道で飛んで止まる、ソフトな打感を売りにするクラブがゴルファーから支持されている。パターでは、重心深度が深くてテークバックしやすく、フォロースルーもスムースであるという、新形状のマレットタイプが続々と登場して人気を呼んでいる。ゴルフボールは、高い弾道と落ち際の伸び、低スピンで飛距離を伸ばす「TOURSTAGE X-01」の人気が高い。ブリヂストンスポーツ契約プロが一斉に使用を開始し、飛距離を伸ばしたことでも話題になった。
 
 スキー・スノーボード用品の売上げは前年比2.4%減少したが、マイナス幅は年々小さくなってきた。スキーの新規参入者の減少は続いており、店頭での取扱商品も減っている。期待されたスノーボーダーの増加も限界に近づいてきた。スキー板は「サロモン」、スノーボードは「バートン」に人気が集中する傾向がみられる。スノースポーツを子どものころから体験してもらおうと、「雪と子供の会」の活動が始まっている。中長期的にみたスノースポーツ人口増に寄与し、スノーリゾートライフが拡充されるものと期待されている。
 
 テニス用品の売上げは横ばい傾向が続いているが、市場は活性化している。平成13年10月から放送が始まり、平成14年に大ヒットしたテレビアニメ「テニスの王子様」により、子どもたちのテニス熱が高まり、長年にわたるジュニア、キッズ向けの普及活動の成果も現れてきた。平成16年1月〜3月には、テレビ朝日開局45周年記念として、往年の人気アニメ「エースをねらえ」がドラマ化され放映された。いずれも業界をあげてブームづくりに一役かっている。
 ショートテニス、スポンジテニス、フレッシュテニスなどと呼ばれる、スポンジボールと軽いラケットを使い、バトミントンコートでおこなう簡易テニスの用品も広がってきた。幼児から小学生、高齢者などが簡単に楽しめる生涯スポーツとして人気がある。インターネット販売も盛んになり、中古ラケットも新たな市場を形成しはじめた。
 
 登山・キャンプ用品は、近年の急激な市場縮小はやや収まり、減少幅が小さくなってきた。スーパー、ディスカウントストア、ホームセンターでの取り扱いは年々縮小していいる。新規キャンパーは増えず、ベテランキャンパーは活動回数を減らし、用具を買わなくなっている。一部ウエアやシューズは、ファッション用途として動きが見られる。輸入品が台頭するなか、国内メーカー「スノーピーク」は高品質と独自の商品力でファンに支持されている。
 
 スポーツサービス市場は、堅調なテニススクール、フィットネスクラブと、回復の兆しが見えないゴルフ場、ゴルフ練習場、スキー場に、明暗がはっきり分かれている。
 
テニスクラブ・スクールは、前年比9.3%市場を拡大した。経営難と相続による閉鎖・縮小は多いが、悪いところが淘汰され、一方でインドアスクールは年々増加し、いずれも堅調であり、二極化がより鮮明になってきた。ただ、ここにきてインドアスクール間の過当競争の様相をみせはじめ、冷暖房完備、優れた接客サービスなど、何らかの差別化が求められるようになってきた。インドアスクールをチェーン展開するところも増えている。従来のような土地の有効活用ではなく、ひとつのビジネスとして、しっかりとマーケティングを行い、場所や条件を選んで出店し好業績をあげている。
 スクールの生徒数は増加傾向が続いている。特に近年は、「テニスの王子様」の人気と、伊達君子ら名選手がコーチとなる、ジュニア向けの「カモン!キッズテニス」などのジュニア育成策が実を結び、ジュニアがスクール生の4分の1を占めるほど増えてきた。
 
 フィットネスクラブは、2年連続で伸び悩んでいたが、平成15年は前年比3.0%市場を拡大した。買収・営業譲渡・継承・運営委託などによる業界再編は落ち着きを取り戻し、不採算店の業態転換・移転・閉鎖も進み、新規開業効果がようやく上積みできるようになった。大手や中堅企業でも出店の勢いを増しつつあり、施設数の増加は続いている。
 レンタルロッカーや有料プログラム、マッサージ、エステティック、飲料、サプリメントなどの付帯収入の拡充により回避単価を上げる動きが顕著にみられる。
 比較的時間に余裕があり、健康志向の高い高齢者は引き続き増加しており、1人当たりの利用回数、延べ利用者数ともに伸びている。高齢者の利用を意識したプログラム開発、施設や接客の配慮、温浴施設の充実、病院・接骨院の併設が増えている。
 病院との連携は進んでおり、厚生労働大臣指定健康増進施設となるクラブが増えている。さらに厚生労働省指定運動療法施設になると、医師の指示に基づいた運動療法を実施する健康増進施設の利用料金に対し、所得税の医療費控除が適用されるメリットがある。
 普段着のまま気軽に運動・トレーニング・疲労回復・ダイエットなどの簡易プログラムを利用できる“コンビニフィットネス”と呼ばれる業態が出てきた。30坪程度の小スペースで、シャワーやプールはなく、会員数は200〜300人程度と少ない。同規模のスペースを使い、運動する姿を男性に見られたくない女性専用のサーキットプログラムを提供する新業態も登場した。世界最大の店舗数でギネスブックに登録されているアメリカの「カーブス(Curves)」というチェーン店をモデルにしたもので、従来型クラブを嫌う女性のニーズに合致し急成長している。
 
 ゴルフ場は10年連続のマイナス成長となった。入場者数が減少し、客単価も下がっているため、回復の兆しはまだ見えない。新規オープンはほとんどみられなくなったが、施設数は若干増加しており、需給バランスは崩れたままである。
 民事再生法の適用などで預託金債務や銀行借入金を解消したコースが、低価格化を牽引しており、往時に比べプレー料金は格段に安くなった。その結果、どのコースでも収支は非常に悪化している。
 今後も、外資系企業「ゴールドマンサックス」「ローンスター」によるコース買収、ゴルフ場再生ビジネスの進展により、業界再編はさらに進むものとみられる。
 ゴルファーの高齢化やゴルフ人口減少に対し、ゴルフ界をあげて取り組むため、「日本ジュニアゴルファー育成協議会」はJGCキッズゴルフ・プロジェクトを立ち上げた。より多くの子ども達がゴルフの最も初歩的な楽しさを体験できるよう、ルールが簡単で距離の短いコースでできる「スナッグゴルフ」を、小学校の体育や総合学習科目に採用するよう各方面に働きかけている。スナッグゴルフは、クラブ2本だけで、ボールを打つ時には常にゴム製マットを使用し、テニスボールより一回り小さいボールを、旗の根本のマジックテープで覆われた筒に付けたらカップインとなる。市町村、教育委員会、小学校をあげて、無料で体験教室を開催したり、専用コースを設けるところもでてきた。ジュニアゴルファー向けのゴルフスクールも積極的に実施されるようになった。
 
 ゴルフ練習場は前年比2.3%減と6年連続のマイナス成長となった。ゴルフ場と異なり、一時崩れた需給バランスは、年間100施設以上の閉鎖が10年以上続いたことで、急速に調整が進んでいる。生き残った施設では、競合施設が閉鎖されて売上げが伸びているところもあり、施設やサービスの水準、収益構造などはレベルアップしている。しかし、延べ利用者数、1施設あたり利用者数の減少は続いており、消費単価も減少傾向にあり、厳しい経営状況に変わりはない。
 高齢者ゴルファーが多くなり、利用者の滞在時間は徐々に延びている。主要顧客として、打席のさらなる快適性向上、レッスン機能向上から、時間併用制・時間料金制への移行など、施設側の対応が必要になっている。長期的には、ジュニア層を含む若年層や、初心者、女性の集客も課題となっている。
 今後は、打席とボールを貸すだけの商売から脱却し、地域交流の場・サロンとして、施設を最大限に有効活用し、打席外収益を向上させるトータル運営が必要とされている。
 
 スキー場の索道収入は、前年比3.0%減となり、これで8年連続のダウンとなった。
 近年は、スキーヤーの減少をスノーボーダーの増加でカバーしていたが、それも限界に近づいている。活動回数は、スキーヤーよりもスノーボーダーの方が大きく減っており、その結果スキー場の入場者数は大きく減少している。スノーボーダーは入場者の4割を占めるほど増えているが、ボーダーの嗜好にあった施設は以外と少ない。アトラクション設置は概ね一巡し、魅力的なアトラクションが選択されるようになっている。日帰り利用の増加は、宿泊部門に打撃を与えており、客単価が下がっているため、集客が必ずしも収益増に結びついていない。
 ファミリースキーヤーを呼び込もうと、キッズゲレンデ、ソリ専用ゲレンデが増えている。小学生以下を対象に、複数のスキー場でスタンプラリーを実施する例もみられる。「アライマウンテン&スパ」では、一般的な託児所だけでなく、子どもだけで遊ばせることができる屋内型テーマパークを設けている。また、各種体験教室やキャンプも充実させている。障害者対応施設として各種大会を誘致し、障害者の積極的な受け入れを行っていることでもよく知られている。
 新設はほとんどみられず、経営破綻による廃業・事業譲渡・休業は増えている。「加森観光」「星野リゾート」といった有力企業が買収・再建に乗り出すケースが目立つが、その一方で、地域振興のために地元住民が譲り受け、住民主体で運営しようとするところが多くなってきた。廃業した「みやぎ蔵王白石スキー場」をNPOが運営して単年度黒字を出したことも注目に値する。
 
 ボウリング場の売上げは、平成14年にテレビドラマ「ゴールデンボウル」の人気で、6年ぶりにプラスとなったが、平成15年は年後半にその効果が薄れ、結果的に前年比0.9%減となった。利用ゲーム数は若干伸びたが、施設数、レーン数ともに減少しており、単価も減り続けている。ゲーム料以外の飲食やゲームコーナーの売上げの方が減少幅は大きい。ただ、近年の経費削減努力が実り、ある程度利益が見込める体質に改善されている。近年、高齢者ボウラーが増加傾向にあり、熱心なファンとして定着している。
 ボウリング、ゲームセンター、カラオケを核とする大型複合店をチェーン展開する「ラウンドワン」は、唯一高収益をあげている。この2年ほど出店ペースを抑えたが、今後は24時間営業できるロードサイドを中心に、超大型店を年8〜10店ペースでの出店する。レジャースタジアムと称する、バッティング、ゴルフ、バスケット、テニスなど、従来以上に若者向けレジャー施設を複合する新業態である。
 
 スポーツ観戦は、前年比4.7%市場を拡大した。
 プロ野球は、セリーグの阪神優勝で、ファンが連日球場につめかけ、曜日、カードに関係なく甲子園は満員に膨れ上がった結果、球団史上初の入場者数300万人以上を達成した。パリーグでも、積極的な地域密着戦略により、福岡ダイエーホークスが、巨人、阪神に次いで、300万人以上の入場者数を維持している。パリーグ各チームは、子ども達に球場へ足を運んでもらおうと力を入れており、入場者数は徐々に増えてきた。
 Jリーグは、平成14年にFIFAワールドカップ日韓大会で盛り上がりった。平成15年もジーコの日本代表監督就任で話題になり、J1リーグ戦、J2リーグ戦ともに大きく入場者数を増やした。平成16年に入っても、アテネオリンピックに男女のチームがそろって出場するなど注目度は高く、入場者数は堅調に推移している。
 大相撲は、かつての人気がなかなか回復しない。総合格闘技のK−1、PRIDE、などの人気が高まり、イベント数も観客動員数も増大している。
 
 
2.趣味・創作部門
 平成15年の趣味・創作部門の市場規模は、11兆5,030億円であり、前年比1.7%マイナスとなった。市場は縮小しているが、デジタルカメラ、薄型テレビ、DVD、映画など好調な分野が目立っている。
 
 カメラは、デジタルスチルカメラ市場拡大とともに8年連続のプラス成長となった。単価は下がっているが、販売台数の伸びは著しい。今や、従来の銀塩カメラは6%程度のシェアしかない。
 デジカメは、薄型・軽量・高画質化に益々磨きがかかり、主力は400〜500万画素タイプに移行している。デジタル一眼レフでは「ニコンD70」が大ヒットした。高画質で、レンズ交換でき、起動時間が短い、高速連続撮影が可能といった、従来のデジカメの課題を克服しながら、初心者にも使いやすい操作性を備えている。価格もリーズナブルになり、ジャンルとして定着してきた。
 メーカーを問わず、デジカメとプリンタを直接結んで手軽に印刷できるダイレクトプリントが急速に広がっている。パソコンを介さずに印刷できるため、これまで印刷することのなかった写真データを、家庭で気軽に印刷するようになった。デジカメは従来のパソコン周辺機器から、一般ユーザーのコミュニケーションツールとなることで需要をさらに拡大している。
 
 ビデオカメラも売上げを伸ばした。単価は下がっているが販売台数は伸びている。小型軽量・高画質、高倍率ズーム機能・長時間バッテリー搭載など、非常に多彩な機種が登場している。SDメモリーカードに記録することでさらに小型軽量化を追求し、デジタルビデオカメラとデジカメの機能を一体化させた、MPEGムービー、SDマルチカメラ、デジタルムービーカメラなどと呼ばれるタイプが登場し、新たな需要を開拓している。
 
 音響機器製品では、ステレオセットやラジカセ、CD、MDの売れ行きがよくない。唯一、携帯型デジタルオーディオプレーヤーは、ハードディスクタイプ、フラッシュメモリタイプともによく売れた。アップルのハードディスクプレーヤー「iPod」は、パソコンに音楽ソフトをダウンロードして楽しむデジタルジュークボックスの新たな市場を開拓した。
 
 テレビでは、液晶やプラズマパネルの大画面薄型テレビがよく売れている。売れ筋は、液晶が32型前後、プラズマは42型前後である。特に、アテネオリンピック効果で、平成15年後半から買い替え需要が顕著になり、平成16年に入ってからも大きく売上げを伸ばしている。
 平成15年12月から、三大都市圏(関東、中京、関西)の一部で地上波デジタル放送が始まった。その他の地域でも平成18年末までに放送を開始し、平成23年にアナログ放送を終了するという。高画質化とともに、双方向データ通信によってテレビを使う時代に大きく変わっていく可能性がある。対応チューナー内蔵の商品は出揃っており、今後は魅力ある番組づくりが課題である。
 
 VTR市場では、DVDレコーダー/プレーヤーの伸びが著しい。ハードディスク搭載タイプで、簡単録画予約、高速ダビングに加え、2チャンネル同時録画や、VHS併設など、ますます高機能になっている。DVDソフトの普及と重なって、高級機種から廉価な専用プレーヤーまで、需要は広がっている。
 
 ビデオソフトでは、DVD市場が急成長しているが、平成16年に入ってから伸びは徐々に小さくなっている。2千円を切る低価格DVDが続々と販売され、DVDはセルが主体となっているが、レンタル店でも品揃えが充実してきた。
『マトリックス』『ハリー・ポッター』『ロード・オブ・ザ・リング』といった人気超大作の続編がセル市場を席巻した。話題の韓国ドラマ『冬のソナタ』のDVD−BOXも異例のヒットとなった。
 映像ソフトビジネスとして、有料放送の市場拡大が期待されているが、多くのチャンネルが苦戦している。インターネットのブロードバンドを用いた映像配信サービスも行われているが、成功事例はまだみられない。
 
 CD(レンタルを含む)は、6年連続のマイナス成長となった。曲数からすると割高感のある8センチ、12センチのシングルは大きく落ち込み、金額シェアはCD全体の14%まで減少した。今やCDといえば12センチのアルバムをさすようになった。音楽CDとイメージビデオDVDをセットにして販売するケースが増えている。ミリオンセラーの点数は年々減少している。ストックされている音楽コンテンツを有効活用しようと、中高年層に懐かしいヒット曲をCDで販売するケースが非常に目立っている。
 子どもを通じて、大人にも音楽を聴いてもらおうと、お菓子売場で「CD付きお菓子(お菓子付きCD)」がよく売れている。平成15年6月からタイムスリップグリコシリーズ「青春のメロディーチョコレート」という、20世紀の歌謡曲黄金時代を飾った名曲を、当時のジャケット、レーベル、歌詞カードをそのまま8センチシングルCDに再現したCD付きチョコレートが発売され、人気を呼んだ。平成16年からは第2弾も始まった。「バンダイ」も、平成15年9月から、「なつかしのヒーロー&ヒロイン・ヒット曲集」と題し、70〜80年代のアニメ・特撮TV番組の主題歌を各1曲収録した「お菓子CD」シリーズを販売している。「ブルボン」も、平成15年10月から、邦楽ポップス2曲を収録したCDとお菓子を融合した「J's ポップスの巨人たち」を発売した。
 インターネットによる音楽ソフト配信については、消費者の認知度は高いが、利用はまだ浸透しているとはいいがたい。有料音楽配信は現在数億円程度の市場だといわれており、普及にはもうしばらく時間を要する。
 音楽業界全体でみると、携帯電話の着メロ(着信メロディ)の収益が大きく伸びており、600〜800億円程度の市場規模といわれている。さらに、「着うた」が新たな音楽コンテンツサービスとして始まった。長さは15秒から30秒程度で、料金は1曲あたり80円から100円程度で、別途通信料金がかかる。レコード会社はCDのプロモーションをしながら、新たな収益につながることを期待しており、近い将来1000億円市場になると予測されている。
 
 映画の興行収入は前年比3.0%増加した。洋画は『ハリー・ポッター』『マトリックス』『ロード・オブ・ザ・リング』『ターミネーター』のシリーズ作が軒並みヒットした。また『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』の続編が『南極物語』の日本映画実写興行記録を大きく更新し、洋画を含む平成15年興行収入ランキングのトップとなった。
 シネマコンプレックス(複合映画館)は依然増加している。一時の外資の勢いは消え失せたが、現在は国内資本が意欲的に進出している。「東宝」が「ヴァージンシネマズ・ジャパン」を買収したことも大きな話題になった。これにより、東宝グループの所有するスクリーン数は、「ワーナー・マイカル」を抜いて業界トップとなった。地域によってはシネコンどうしの客の奪い合いが激しさを増している。
 日本映画の製作に携わる企業の顔ぶれは多彩になってきた。テレビ局の積極的な参加が目立っている。ひとつのコンテンツを、テレビ番組、映画、ビデオソフト、書籍・雑誌、ゲームキャラクターグッズ、テーマパークなどメディアミックスさせて活用している。綿密なマーケティングに基づいてヒットが仕掛けられており、したがって飽きられるのもはやくなっている。
 
書籍・雑誌の販売額は6年連続のマイナスとなった。売上げ確保のために発行点数を増やしており、類似企画が増えて、品質低下を招き、さらに売れなくなるという悪循環を招いている。小規模な書店が年間1000店以上の減少するなか、インターネットによるオンライン書店は急成長を続けており、前年比38%増、市場規模は330億円に拡大した。
 書籍の販売は、平成14年に上下巻2冊セットで単価の高い『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』がミリオンセラーになった反動が大きかった。計5点のミリオンセラーが平成15年は『バカの壁』と『世界の中心で、愛をさけぶ』の2点に減ったことも大きな減少につながった。テレビ番組で取り上げられたり、タイアップしたりと、評判追従型の読書傾向が続いている。
 子どもの読書活動を促進しようとする取り組みが活発化している。「朝の読書」は実施校が1万5千校を突破し、500万人以上が参加している。ブックスタート運動の拡大、書店での読み聞かせ運動など、地道な活動が読者の底辺拡大に貢献している。実際、児童書販売は健闘しており、成果が現れてきた。
 雑誌は、週刊誌などの購買習慣が年々崩れ、販売低下につながっている。ひとつのテーマにそって収集する楽しみのある分冊百科が平成14年から続々と登場しており、企画のマンネリ化と過当競争で人気は伸び悩んでいる。長期低迷が続くコミックスは、歴代の漫画コンテンツを廉価版コミックスとして続々と出版し、まずますの売上げを確保している。コンビニエンスストアでの雑誌販売は伸びているが、徐々に鈍化している。コンビニの利用者層拡大に対応した品揃えが難しくなっている。
 メンズファッション誌「LEON」は、30〜50代、年収1000万円以上の高額所得者をターゲットに、ファッション、クルマ、機械式時計、サーフィン、タンゴなどを柱にした「モテるオヤジの作り方」をテーマにして、一定のファンをつかんだ。高級な実用誌に徹した編集は、掲載商品への圧倒的な反応を生みだしている。実売は2〜3万部程度でも、広告料収入だけで十分経費を賄い大きな利益を確保できる、エポックメイキングな雑誌と評価されている。
 
 民間カルチャーセンターを取り巻く環境は非常に厳しい。開催講座は、専門のスクールや学校、スポーツクラブ、専門スポーツ教室、大学の公開講座、行政の生涯学習講座、NPOの学習講座などと重複し、競合関係にある。特長が出せないため集客に苦心し、ギリギリまで一般経費は切り詰めた。近年では、単発講座への依存度を強める、講師料を減らす又は歩合制にする、パンフレットは作成せずチラシだけで募集する、といった努力がみられる。
 行政は、財政悪化により、目玉となる県民カレッジや市民講座のみを拡充し、それ以外の生涯学習機能は民間に任せ、部門そのものを廃止しようとする傾向がみられる。行政が施設を貸して、財団やNPOに運営を丸投げし、講座はコンペや入札で選ばれた民間カルチャーセンターが実施する、いわゆる公設民営方式の生涯学習センターが全国に増えている。
 大学の公開講座実施も盛んに行われるようになり、サテライト教室設置が急速に広がった。「日本女子大学」は、インターネットによるVOD講座(ビデオ・オン・デマンド、見たいときに見たいビデオが見られるサービス)に力を入れ、非常に多彩で充実した講座を取りそろえ高い評価を得ている。NPOが力をつけ、独自に生涯学習講座を提供する動きも活発化している。
 
 音楽、演劇、スポーツなどの興行市場(チケット販売)は、前年比マイナス0.2%とほぼ横ばいであった。
 演劇系では、ミュージカルが堅調である。平成15年は「シカゴ」など海外の本格的な招聘ミュージカルが引き続き好調であった。劇団四季は引き続き全国でロングラン展開を拡大しており、東宝の「レ・ミゼラブル」も成功した。その他の商業演劇では大きな話題性はなく、市場も停滞している。
 ポップス系コンサートでは、都市部の1,000人以下のライブコンサートは開催回数が伸びている。その一方で、1,000人〜2,000人クラスの中規模の全国ツアーコンサートはやや減少した。クラシック系コンサートは大物アーチストの来日が少なく、目立った動きはなかった。
 
 コンピュータ・チケッティング・サービスの販売額は、平成14年に初めて1,000億円市場の大台に乗り、平成15年も1,246億円、対前年21.3%増と大きく拡大した。市場拡大の主な要因は、興行主催者(プロダクション)が自主販売していた会員やファンクラブ向けチケットの代行販売が拡大したためであり、手数料収入は少ないためチケット流通各社の利益増にはつながっていない。
 5月には「ぴあ」がチケット流通業界ではじめて東証一部上場を果たし、話題となった。「ぴあ」「ローソン」「イープラス」の大手3社の取扱比率が高まる一方、3社の占有率が徐々に拮抗している。「イープラス」は、インターネットや携帯電話による興行チケットの情報閲覧・予約・販売および郵送によるチケット受け渡しに特化した軽量経営が特徴で、店舗コストのカットとユーザー手数料(受益者負担)の積極的取り入れに成功し、平成15年度には事業開始4年目での単年度黒字化に成功した。インターネットや携帯電話によるチケット販売は大きな伸びを示し、総売上げの1割強を占るまでに急伸しており、これまでのチケット販売店の位置づけにも影響を及ぼしつつある。
 携帯電話等を利用した新しいシステムとしては、「ぴあ」が平成15年10月より「電子チケットぴあ」事業を開始した。インターネットを通じてデジタル化されたイベントチケット情報を携帯電話やICカードにダウンロードし、チケットレス入場することができる仕組みである。現在のところサービスに対応できる劇場等はまだ限られていることから、今後の展開が注目される。
 国外のマーケットとしては、経済成長の続く中国への業界の関心が高まっている。北京五輪、上海万博、プロ野球にサッカーと興行系の計画や話題が目白押しであること、沿海部を中心に個人消費者の成長が著しく、携帯電話・インターネットの普及率も高いことなどから、わが国の事業者もチケット販売システムの提供や販売ネット構築などの事業参画を検討している。
 
 
 
3.娯楽部門
 平成15年の娯楽部門の市場規模は、55兆7,310億円であり、前年比0.6%のプラスとなった。パチンコとゲームセンターを除く全ての分野で売上げが落ちている。
 
 パチンコ業界の市場規模(貸玉料・貸メダル料)は、前年比1.4%のプラスとなった。パチスロ人気が続いており、極めて射幸性の高い機種に注目が集まった。パチスロ機の増加は依然続いており、15年末には約166万台と、パチンコ設置台数(約323万台)の半数を超えた。特に「爆裂機」といわれる射幸性の非常に高い機種がここ数年問題となっていたが、9月には3機種の検定が各地で取消処分されるという形で結着するなど、パチスロへの風当たりは強まっている。一方パチンコ機では「海」シリーズが好調で、グッズも含めた本格的キャラクタービジネスとしての展開が話題となった。
 ファン構造は、依然としてマニアックないわゆるヘビーユーザーが中心であり、特にパチスロでこの傾向が強い。今後の利用人口拡大を考えれば、高い射幸性に依存するだけでなく、よりゲーム性を重視した遊技機に比重をかけていくことも求められる。
 ホール数の減少には歯止めがかからない。警察庁の調べによると、平成15年のホール数は総計1万6,076店で、平成14年より428店(2.6%)マイナスとなり、8年連続の減少となった。市場規模は拡大しているものの、店舗間の競争の激化などからパチンコ店経営企業の採算性は悪化しており、倒産件数は依然として高水準にある。
 店舗規模および経営面でもいわゆる「二極化」が進行している。店舗規模は大型化が加速しており、全国的に1,000台を超す超大型店の出店が相次いでいる。1店あたりの平均設置台数も増えている。経営面では、業界最大手の「マルハン」「ダイナム」の躍進が続いている。出店数を増やし、小規模店の低迷をよそに両社とも売上1兆円に迫る勢いである。パチンコ店は経営指標を売上げだけで判断せず、効率や回転率を重視する方向に向かっている。
 不良客による不正は遊技機の電子基板に対する改変や付加といったものが後を絶たず、相変わらず犯罪対策に追われる状況が続いている。平成15年10月には、警察庁から、遊技機規則の一部改正案が発表された。平成7年以来8年ぶりとなる今回の改正は、射幸性の程度の高い遊技機の排除とともに、パチンコに関しては遊技機の形態等に関する規制緩和をねらいとしている。ゲーム性の高い機械を含めて多様なパチンコ遊技機の開発が可能になると考えられる。
 ゲームセンターは、前年比4.8%売上げを伸ばした。小規模店が減少するなか、ショッピングセンター立地の大規模店では前年比2桁台の伸びを示すところがある。500坪以上の大型店が増えており、いずれも好調である。
 平成14年から、トレーディングカードやネットワーク型のゲームが数多く登場して人気を呼び、ゲームそのものから離れたユーザーが戻ってきた。
 「ワールドクラブチャンピオンフットボール セリエA」シリーズは1日当たり10万円以上の売上げを維持しており、突出した好業績をあげている。平成15年には、全国オンライン対戦クイズゲーム「クイズマジックアカデミー」、トレーディングカードゲームとボードゲームの機能を凝縮した「アヴァロンの鍵」、ネットエントリーキーにお気に入りの車を登録でき、ガレージを有料でキープできる「バトルギア3」など、新しい仕組みを取り入れた機種が増え、いずれも人気がある。こうした人気ゲームは高額・大型化しており、小型店では導入しにくいため、益々二極化が加速している。スクラップ&ビルドも急速に進み、現在は郊外型の大型複合商業施設への出店が顕著である。1店当たりの機械設置台数は年々増加している。
 子ども向けには「甲虫王者ムシキング」が人気機種となり、売上増に寄与している。プライズゲームの個性ある豊富な品揃え、シールプリント機のグレードアップ、メダルゲームコーナーの充実により、ファミリー客や女性の利用が定着している。ゲーム各社では、ショッピングセンター立地によるファミリー客を強く意識し、安心して遊べる雰囲気づくりを心掛けている。「ナムコ」と「ベネッセコーポレーション」は、未就学児童向けの人気キャラクター「しまじろう」のショーが毎日楽しめる親子のコミュニケーション・テーマパーク「しましまタウン」を全国で7店舗展開している。
 
 テレビゲーム・ゲームソフト市場は、前年比11.0%減と3年連続のマイナス成長となった。ハード、ソフトともに売上げは落ちているが、「プレイステーション2」「ゲームキューブ」「Xbox」がそろって値下げをした影響が大きい。
 据置型の覇者「プレイステーション2」は人気の頭打ち感が広がっており、売上げは落ちた。しかし、値下げ効果と人気ソフトとのパッケージ販売により年末年始商戦で売上げを伸ばし、市場シェアは若干伸びている。「ゲームキューブ」は、成人向けのソフト「ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル」「テイルズ・オブ・シンフォニア」が30万本を超えるヒットとなった。キッズ向けには「マリオカート ダブルダッシュ!!」「ポケモンコロシアム」「マリオパーティ5」「ドンキーコンガ」が立て続けにヒットし、本体の値下げ効果もあって、年末年始商戦では前年比倍近い伸びをみせた。平成15年2月発売の「ゲームボーイアドバンスSP」は「ゲームボーイアドバンス」にとってかわり、単価が上がったことで売上げは若干伸びた。ただし、ターゲット層が重複する「ゲームキューブ」の値下げで価格差が縮小し、同じパイを同社の商品で奪い合っている感があり、今後はゲーム機間の連携による相乗効果が期待されている。
 リメイクされた「ドラゴンクエストV」がミリオンセラーとなるなど、多くのリメイク作品が市場を盛り上げた。廉価版の動きも活発である。ゲームソフトのパッケージ販売は縮小しているが、携帯電話向けコンテンツやオンラインゲームの需要は拡大しており、ゲーム市場全体のパイは広がっている。
 平成16年末には、携帯ゲーム機の覇者「任天堂」が新型の「ニンテンドー・ディーエス」を、「プレイステーション2」の膨大なユーザーを抱える「ソニー・コンピュータエンタテインメント」が初めての携帯ゲーム機「プレイステーション・ポータブル(PSP)」を発売予定である。両社の目指す方向性は異なるが、その動向が注目される。
 
 地方自治体が運営する公営競技(競馬、競輪、競艇、オートレース)の売上げ低迷に歯止めがかからない。2003年度の投票券売上高は前年度に比べて8%減の2兆6,300億円に落ち込み、全体の3分の2にあたる68競技場が減収となった。地方の景気回復が遅れ、地場産業の不振で個人所得が伸び悩んでいることが背景にある。自治体の公営ギャンブルからの収入は300億円規模に減っており、地方財政に影響を与えている。
 総務省は、人員削減に伴う経費について地方債の充当を認める代わりに、経営改善が見込まれない場合には事業の廃止も視野に入れるよう求めるなど、公営ギャンブルそのものが深刻な状況に至っている。
 
 中央競馬の売上げは平成9年をピークに6年連続で減少したが、何とか3兆円台を維持した。総入場人員は減少した、GTレースの入場人員は若干増加した。競馬場のIT化が進められ、中山競馬場で無線LAN及びインターネット接続サービスを提供する「ホースレースiスポット」が開設された。パソコンを利用して各種競馬情報を提供するPCISVによるサービスが平成16年1月から開始された。
 競馬法改正案では、中央競馬と地方競馬の馬券をそれぞれで発売できるようにしたり、2つのレースの勝ち馬を同時に当てる「重勝式」馬券を導入する予定である。学生でも20歳以上なら馬券を購入できるよう制限を緩和、馬券の払戻率は、現在の一律75%から馬券の種類ごとに上限80%と変更する。
 
 地方競馬は、引き続き売上げが落ち込んでいる。平成15年3月に足利競馬、11月に上山競馬が廃止され、今後も高崎競馬、笠松競馬、高知競馬などが収支状況を踏まえて継続するかどうか決めるという方針を打ち出した。一方、南関東地区において平成14年から導入した3連勝式新種馬券によりファンを呼び戻すなど、一部に明るい兆しが見られた。高知競馬では「ハルウララ」が人気を呼んだ。12月14日、遂に100連敗した同馬は経営難の高知競馬の救世主となった。同馬が出走するレースは他のレースに比べて約1.5倍の売上げがあり、JRAのトップジョッキー武豊騎手が騎乗したレースでは約5億円を売り上げた。これは普段の1レース平均の約70倍にもなる。その結果、昨年度の高知競馬は9,000万円の黒字となった。
 ホッカイドウ競馬ではミニ場外発売所(「Aiba浦河」「Aiba小樽」「Aiba滝川」)を新設したり、大井競馬が「offt汐留」「offtひたちなか」「offt新潟」を相次いで設置し、場外売上げの拡大をはかっている。さらに、南関東4競馬場(浦和、船橋、大井、川崎)では3連単の発売を全レースに拡大したり、電話投票(SPAT4)の開始、共同ホームページを開設するなど連携が盛んであった。
 
 競輪の売上げも大きく減少し、1兆円割れが目前に迫ってきた。熊本競輪などは5割以上の減収であった。しかし、競輪場の廃止や自治体の運営撤退にひるむことなく、専用場外発売所の設置は盛んであった。平成15年も8月に「サテライト宮崎」「サテライト安田」、12月には山梨県初の競輪場外「サテライト双葉」を開設し、同月には「サテライトしおさい鹿島」も含め、4つの場外を開設している。また、4月の花月園を皮切りに、京王閣、松戸、立川、前橋で、在席投票(すわって投票)システムを、公営競技界に先駆けて導入した。在席投票とは、ロイヤルルーム等において、利用者が入場時に購入予定金額を専用カードに入金し、専用端末機のパネルを指でタッチして投票を行い、退場時に当日精算するシステムである。いわき平や前橋では、インターネットライブ中継が開始され、ジャパンネット銀行と提携した「競輪ネットバンクサービス」による即日投票が始められた。
 業界に関する話題としては、6月24日、石原慎太郎東京都知事が開会した定例議会の所信表明演説で、文京区の東京ドームで競輪再開の準備を進めることを宣言した。収益は、主に観光政策や島民の避難生活が長引いている三宅島の復興資金に充てる考えだ。
 
 競艇の売上げは前年度比9.3%減となった。入場者数の減少に歯止めがかからない。業界はイメージアップに懸命で、コミック誌ではスーパージャンプの「競艇少女」、安藤大将選手を題材とした漫画「ありがとう千夏」が競艇をとりあげており、週刊少年サンデーの競艇漫画「モンキーターン」は平成16年1月からTVアニメ化されている。
 また各競艇場でのイベント展開も積極的で、丸亀競艇場ではSGを記念して、県内有名店のうどんが日替わりで楽しめる「さぬきうどん祭」を開催するなどユニークである。
 IT化にも熱心で、公営競技界初のジャパンネット銀行との提携による「即日入金」「即日投票開始」に加えて、「即日引出し」機能を追加した。さらに、競艇オフィシャルウェブでパソコンで競艇のレースがリアルタイムに見られる新サービス、競艇ブロードバンドサイト「KYOTEI B.B」が開始された。
 6月からは、戸田・江戸川・平和島・多摩川の各競艇場とボートピア岡部において、舟券を相互に払戻すサービスが開始され、相互払戻サービスは、近畿地区(住之江・尼崎競艇場、神戸新開地・姫路のボートピア)に続き、2地区目となった。
 
 オートレースの売上げは対前年比17.9%の大幅減となった。平成11年に開設されたオート界初となる場外車券場「アレッグ越後」は3月に廃止となるなど、依然厳しい状況が続いている。2月には船橋オートレース場でオートレース初となる「4周回レース」を実施したり、山陽オートに次いで川口オート及び飯塚オートでも3連単等の新賭式が導入された。12月には、伊勢崎市が特区の第4次提案で求めた市役所内へのオートレースの場外車券発売機設置について、経産省は認める方針を回答したと明らかにするなど、明るい材料も見受けられる。
 
 宝くじの販売額は前年比2.1%の減少となった。市場の拡大は止まったものの、ジャンボやロト6に見られるように、億万長者への夢をうまくとらえて1兆円を超える規模を維持している。ジャンボ宝くじは、サマージャンボが好調であったが、ドリームジャンボおよび売上の大きい年末ジャンボが伸び悩んだ。宝くじ史上初めてキャリーオーバー制を導入した「ロト6」は、引き続き売上げを伸ばしている。15年中も、4月と10月にキャリーオーバーによる1等当せん金額4億円が出て、そのたびに売上げを大きく伸ばした。「ミニロト」も好調である。16年2月には、「グリーンジャンボ宝くじ」が2005年愛知万博への協賛くじとして発売され、話題になった。当せん金として100万円相当のエコツアー(ペア)とおこづかい(100万円)がもらえるエコツアー賞を設けたドリームジャンボ宝くじが発売されたことも注目される。
 
 サッカーくじ(toto)の売上げは203億円であり、前年に比べ大幅に減少した。新くじtotoGOALの導入により、J1リーグが行われない期間も毎週途切れることなく販売され、totoとtotoGOALの併売で26回、totoGOAL単独では12回開催された。totoGOALの売上げは約67億円で、売上げの3分の1に達した。totoGOALとは、指定されたJリーグ5試合(10チーム)についてのゴール数を「0点」「1点」「2点」「3点以上」の4通りで予想し、原則土曜日に結果がわかる速攻型のくじである。コンビニエンスストアでのtotoの販売を8月から会員限定で開始し、totoの販売店が全国で約14,400店に増え、購入者の利便性がさらに高まった。
 
 外食産業の市場規模は前年比0.5%縮小し、6年連続のマイナス成長となった。家庭での1人当たり外食支出額の減少、法人交際費の減少などが大きな要因となっている。顧客ニーズは多様化が進むとともに、「安全」「安心」「健康」への志向を強めている。マーケットの伸びが止まり、ニーズの多様化が進んでいることから、長期的に見て外食業界全体が成熟期の様相を呈している。
 (財)外食産業総合調査研究センターによると、14年の「外食率」(食料支出額に占める外食支出額の割合)は36.2%で、平成に入ってからはほぼ横ばい状態が続いている。これに対し、惣菜や半製品等の中食(なかしょく)支出の比率も加味した「食の外部化率」は43.7%で、平成以降も高水準で推移しており、中食の拡大が注目されている。
 施設面では、景況悪化や競争激化のなかで、特に中小零細の個人経営店舗の淘汰が進んだ。その一方で、大手チェーン店は首都圏を中心に新規出店傾向を強めている。マーケット縮小期における積極出店戦略は「店舗過剰感」を招き、結果として既存不採算店舗の閉鎖が進んだ。市場規模の大きな成長が望めなくなってきている現在、売上高が伸びなくても利益を確保できるよう財務体質を改善しようとする企業は多い。
 価格面では、低価格戦略の行き詰まりから、高級化路線への転換や、顧客の安全・安心・健康志向に対応した高品質食材の導入などの対応が見られた。長らく低価格路線を押し進めてきた業界のプライスリーダー「日本マクドナルド」は、4月下旬から「ニューテイストメニュー」と名付けた高品質・高級化路線に軌道修正した。モスフードサービスも「ニッポンのバーガー匠味」や一日限定10食の「匠味チーズ」など、高単価商品や数量限定商品を進めるとともに、提供は早く食材はレストラン並みという「ファーストカジュアル」のコンセプトを打ち出している。
 業態の変化もみられる。店舗の過剰感とニーズの多様化が強まるなか、単一業態で提供できる顧客満足には限界があり、外食企業の多業種化や多業態化が進んでいる。居酒屋「甘太郎」を経営する「コロワイド」はM&Aを積極展開し、実に32業態を手がけている。「すかいらーく」も、「ガスト」「バーミヤン」等のほか、回転寿司、焼肉、中食など幅広い分野の事業展開を進めている。
 パートタイマーの年金問題は議論が当面先送りされる形となったが、将来的には外食企業にとって大きな負担になると危惧されている。
 
 カラオケボックス(ルーム)の売上げは前年比9.4%減少した。6年連続のマイナス成長である。小規模店の淘汰が進み店舗数が減少を続けるなか、大手チェーン店による50ルーム以上の大規模店出店は旺盛である。130ルームという超大型店も複数誕生した。大手10社が業界全体の3割を占めるほど二極化は鮮明になっている。
 業界最大手「シダックス」は、既存店の客数も単価も伸びており、出店意欲も旺盛で、売上げは前年比2桁台の高い伸びを維持している。平成15年5月からは、ランチタイムサービスを開始し、利用者層拡大をはかっている。中堅チェーン店の株式上場、店舗倍増計画、全国展開など、積極経営が目立っている。各社とも繁華街出店の勢いを強めており、何らかの独自性を打ち出そうとしている。今後は、会員価格やポイント制だけでなく、膨大な顧客情報を顧客サービスの面で有効活用することが期待されている。
 カラオケ機器では、年間1万曲単位で増え続ける曲目リストを、紙媒体で対応することが難しくなり、電子目次本の普及が目覚ましい。「第一興商」の「BB cyber DAM」は、オプション機器「DAMステーション」と組み合わせることにより、自分の歌唱力の曲別全国ランキングがリアルタイムで分かる。「ピンク・レディー」本人による完璧な振り付け映像とガイドボーカルが楽しめる「マスター オブ ピンク・レディー」のサービスもスタートした。テレビ番組「PRO-file」と連携し、「ビッグエコー」の店頭で、歌手デビューを目指すカラオケオーディションも行っている。
 
 
 
4.観光・行楽部門
 平成15年の観光・行楽部門の市場規模は、10兆4,450億円であり、前年比3.4%のマイナス成長であった。国内観光振興の取り組みをしりめに、各分野で売上げを大きく減らしている。
 
 乗用車の総販売額は前年比6.2%のマイナスとなった。新型車投入やモデルチェンジが相次ぎ、販売台数はそれほど落ちていないが、小型車志向が強くなり平均単価が下がっている。買い物・用足しなどの実用性が優先されるようになり、レジャーユースがやや減少している。これまでどちらかというと乗せてもらう立場にあった女性が、メインユーザーとして車を購入するケースが増えている。特に、背の高いボックスワゴンタイプの人気が高い。中高年層向けには、室内デザインを重視した高級志向の車が増えている。
 低燃費や低排出ガスのクルマの自動車税が優遇される「グリーン税制」は、平成13年から2年間の特例措置として導入された。これが平成15年度から対象が限定され、軽減期間が短くなった。こうした動きとともに、ハイブリッド車や電気自動車など、対応する車が続々と登場して話題に事欠かなかった。「トヨタ」は、平成9年にハイブリッド車「プリウス」を発売して以来、平成13年にエスティマ、クラウンにも対応車をラインナップし、生産台数は13万台を超えている。平成15年はアルファードハイブリッド、そして新型プリウスが発売された。福祉車両の販売も順調に伸びており、利用が広がってきた。
 
 遊園地・レジャーランド市場は、前年比0.3%減とほぼ横ばいであった。
 「東京ディズニーランド(TDL)」と「東京ディズニーシー」をあわせた入場者数は平成15年度2547万人、前年比2.6%増加した。TDL開園20周年の記念イベントが積極的に展開され人気を呼び、施設を運営する「オリエンタルランド」の連結決算は増収増益で過去最高を更新した。
 「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」は、一連の不祥事で落ち込んだ前年から一転、平成15年の入場者数は前年比29.5%のプラスとなった。春に発売した年間何回でも入場できる「ハリウッド・フレンド・パス」は、非常に割安感があることで話題になり35万枚売れた。アトラクションは、平成15年4月に、ファミリー向けの体感シアター「セサミストリート4-Dムービーマジック」、平成16年1月には「アメージング・アドベンチャー・オブ・スパイダーマン?・ザ・ライド」を当初より前倒しで導入している。
 平成15年は東京ドームシティの「ラクーア」がオープンし大きな話題になった。年間入場者数は当初計画の2倍以上、トータル1300万人を記録した。近年、遊園地併設型の温浴施設のオープンが目立っている。平成15年は「ラグーナ蒲郡」の「テルムマラン・ラグーナ」、「としまえん」の「豊島園 庭の湯」がオープンし、いずれも集客は好調である。
 全国にラーメン、餃子、カレー、アイスクリーム、デザートなど、様々な食べ物をテーマにしたフードテーマパークが急増している。「ナムコ」のフードテーマパークプロジェクトを展開する「チームナンジャ」は、全国10数カ所ある施設のうち、10施設のプロデュースを担当している。平成15年は、「横濱カレーミュージアム」のリニューアルを皮切りに、「ナムコ・ナンジャタウン」の「アイスクリームシティ」、「浪花麺だらけ」、「自由が丘スイーツフォレスト」、「明石ラーメン波止場」、平成16年には「浪花餃子スタジアム」、「津軽ラーメン街道」を次々とオープンさせ、いずれも年間100万人を超える集客を達成している。
 「株式会社ファーム」は全国18カ所の農業公園を運営し、平成17年には24カ所まに増やそういう勢いである。平成15年は、岐阜県美濃加茂市に「日本昭和村」がオープンした。県の建設、運営は民間に委ねる日本初の公設民営テーマパークとして話題になり、初年度目標の九十万人を大幅に上回る百五十万人を集めた。
 ペットをテーマにしたペットパークも近年増えている。平成15年は国内最大級の犬のテーマパーク「伊豆高原ドッグフォレスト」のオープンが話題になった。
 
 旅行業の手数料収入は前年比8.9%減少した。国内旅行はほぼ前年並みであったが、海外旅行はマイナス20%以上の大きな落ち込みであった。
 海外旅行は、平成14年夏まで続いたアメリカ同時多発テロの影響からの反動で、平成15年当初は増加傾向にあった。しかし、3月からイラク戦争、SARS(重症急性呼吸器症候群)発生が重なり、需要が一気に低迷し、4〜6月の取扱額は前年比50%を下回った。年後半はSARS終焉宣言以降、徐々に回復し、平成16年に入ってほぼ前年並みに戻った。ようやく盛り返してきたところに、鳥インフルエンザの影響でアジア方面が足を引っ張られたが、ハワイ、ヨーロッパ、オセアニア方面の回復は早かった。
 国内旅行は、海外旅行からのシフトにより好調なところもあったが、全体的には期待したほどのシフトはみられず、横ばいにとどまった。沖縄、北海道、東京・横浜方面が好調であった。特に9月以降の4回にわたる3連休が好影響を与えた。シニア・熟年層の旅行需要は高く、テーマや目的が明確なフルパッケージ商品は、ニーズにあえば高額でも利用がある。これまでのような出発地からの旅行商品だけでなく、旅先でのツアーや観光ガイド、交通機関や観光施設の利用など、地域発着型の旅行商品の需要はある。こうした地域密着型の旅行商品を地域の旅行会社が積極的に企画・販売することが期待される。地域の観光ガイドを、単なるボランティアにとどまらず、サービス業として育成していくことも重要になっている。
 インターネットによる旅行商品販売は拡大を続けているが、同時に交通機関や宿泊施設による直接販売も進んでいる。行き先の交通体系が複雑である、複数カ所を回遊する場合などに、旅行会社を利用する比率が高くなる傾向にある。
 日本人海外旅行者数と外国人旅行者数の格差をできる限り早期に是正し、日本を観光立国にしようする、「外国人旅行者訪日促進戦略」の一環として「ビジット・ジャパン・キャンペーン」が平成15年度から始まった。特に、中国、台湾、韓国など、アジアからの集客に力を入れるところが増えており、その成果も少しずつ現れてきた。
 
 国内航空は、前年比2.5%の売上増となった。国内旅行需要が期待されたよりも伸びないなか、航空会社間の競争が激しさを増し、さらに平成15年10月のJR東海道新幹線品川駅開業と「のぞみ」大幅増発により新幹線と飛行機の競合路線が熾烈な需要獲得競争を繰り広げ、運賃値下げや各種キャンペーンが実施された。
 「全日本空輸(ANA)」は、搭乗日の約2週間前の残席状況によって特定路線の土日便が突然割引になる新型割引運賃「突然割引」を導入した。世界初となるマイレージの電子マネー交換サービス「ANAマイレージクラブEdyカード」を開始し、固定客獲得に努めている。
 民事再生法に基づき経営再建中の「北海道国際航空(エア・ドゥ)」は、平成15年度決算において、新興航空会社ではじめて経常利益を計上した。ANAとの共同運行により、地元から強い要望のあった「旭川―東京」線を開設、「札幌―東京」線を増便し座席1席当たりのコスト削減に成功した。売上高は前年比 63.2%の大幅増となり、整備費等のコストダウンも可能となり、経常利益約15億円を達成した。これにより、再生債権の弁済は、期間を1年間短縮し、平成16年3月末までに3分の2を既に返済した。
 
 宿泊施設では、ホテルが前年比0.5減とほぼ横ばいにとどまったが、旅館は前年比2.5%減少した。ここ数年、旅館・ホテルの経営破綻・事業買収・経緯譲渡などが相次いでいる。新規開業は減っているが、依然年間約100カ所、1万5000室ほどあり、集客のためのリニューアルも旺盛である。
 旅館のなかでは、小規模な高級旅館が堅調である。小さな和風旅館では、洗練された癒しのイメージが受け、売上げを伸ばすところが増えており、客単価は小規模施設の方が高い。建築デザインに工夫を凝らしたデザイナーズ旅館は人気がある。逆に、規模の比較的大きな旅館の売上げが落ちている。
 平成15年から19年にかけて、東京都心部で大型ホテルの開業ラッシュとなり、5年間で4,000室以上増加する見込みである。既存ホテルでも改装や設備・付帯サービスの拡充をはかっており、顧客争奪戦はますます過熱している。特に、平成15年は、「六本木ヒルズ」の「グランドハイアット東京」、汐留地区の「ロイヤルパーク汐留タワー」「パークホテル東京」など、大規模複合再開発プロジェクトの一環として開業したホテルが目立った。これらの高層ホテルは、東京だけでなく、札幌や新潟にも誕生している。
 「京王プラザホテル」が客室にマッサージチェア、空気清浄器、観賞植物を導入するなど、快適性を重視する設備投資が増えている。「渋谷東急イン」は、インターネットなどにより改装のアイデアを募集し、それに基づき、ベッドの上でリラックスできる部屋をコンセプトにした「コージールーム The Bed」を設けた。3方向をやわらかいクッションで囲んだベッド、眠ごこちを重視した枕、靴を脱いでくつろげる全面フローリングの床、などを導入している。また、そうしたリニューアルの内容をリニューアルインフォメーションとして公開している点も注目される。
 インターネットによる宿泊予約は急増している。なかには宿泊客の9割をインターネット予約に頼る施設もあり、今やインターネット販売は必要不可欠なツールとして定着している。また、客室サービスとしても、インターネット環境の整備が急速に進んでいる。
 山中温泉は、温泉地再生のために長期療養地をめざす「健康と温泉フォーラムやまなか」を開催し、医療、環境、施設等、温泉保養地に関わるあらゆる分野における専門家のネットワーク化をめざしている。すでに、温泉保養地療法の医学的効果を科学的に検証する活動が進められており、そうした知識を活かし、温泉療養のコンシェルジェと呼べるようなアドバイザーを地元で育てていくことが期待されている。
 
 ペンションや民宿の売上げは大きく落ち込んだ。経営不振による転廃業が多く、営業軒数は大幅に減少している。経営努力をしている施設が生き残り、客単価は上がっている。延べ宿泊人数は減少しているが、一軒当たりの宿泊延べ人数は増加を続けており、淘汰の恩恵を享受するところは増えている。
 ペットといっしょに泊まれるペンションが急増している。宿泊料金が高いだけでなく、ペット料金もとることができるため、格段に客単価が高い。既に施設間競争が始まっており、専用のドッグランを整備するなど施設づくりなどに工夫を凝らすようになってきた。
 ペンションや民宿のオーナーなどといっしょに自然を体験する宿泊プログラム「自然学校」は人気があり、全国で30カ所を超えるまで増えた。客単価の安いこの業界においては、300円、500円といった利用料が貴重な収入になることから、こうした宿泊外の新たな収益部門拡大が期待されている。
 石川県など複数カ所で、グリーン・ツーリズム特区の指定を受け、誘導灯など一部消防施設の簡素化を認めることで、農家民宿の開業を促進しようとする試みが始まった。既に新規開業したところもあり、農家の副収入として、また、農家体験できる魅力的な宿泊施設として広がっていくことが期待される。
 
 会員制リゾートクラブは前年比1.0%増加した。新規開業が若干あり、会員数はわずかに増加した。少数の大手クラブが好調に業績を伸ばしている。新規施設開業も活発で、新規会員を大幅に増やしている。しかし、多くのクラブでは会員権販売は依然厳しく、会員はここ数年横ばい傾向にある。クラブ運営だけで収支が成り立たないため、一般宿泊営業を併行して行うところが多い。会員の延べ宿泊者数はほぼ横ばいである、会員以外の利用者数は減っている。
 
 オートキャンプ場は、平成15年3月末現在、公営・民営あわせて全国に1,299カ所あり、そのうち国際基準に適合するキャンプ場は250カ所近くある。キャンプ人口は年々減少している。キャンプ需要が低迷し、ほとんどのキャンプ場は赤字経営である。かつては夏休みの利用が圧倒的に多かったが、ベテランキャンパーが増え、9月、10月まで利用が広がってきた。キャンプ場へのペット同伴を開放するところが多くなった。キャンプ場予約はインターネットが中心となってきた。
 子ども向けのキャンプ塾、アウトドア塾は人気があるため、今後は、自然の中で自ら遊びを創造できるキャンパーを育成していくことが期待される。
 全国に742カ所(平成16年7月時点)ある「道の駅」は、主要な道路沿いにあり、車の停泊が自由で、トイレ、売店があり、場所によりシャワーもある。大変便利であるために、オートキャンプ場の変わりに「道の駅」を利用するケースが多い。